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2020.06.29

最近読んだ医療関係の本、4冊

 比較的最近読んだ医療関係の本、4冊について。どれも比較的新しい本。

『世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療』勝俣範之、大須賀覚、津川友介

 

 物々しいタイトルで、それだけ見ると、いかがわしい本じゃないかという印象もあるが、内容はそのまったく正反対で、ようするに、標準医療がもっともすばらしいことである。その含みでいうなら、がん治療を求めているなら、定評のある病院の標準治療を受ければよく、民間療法や代替医療はやめたほうがいい(なぜなら最高ではないから)ということである。おかしな医療に騙されないようにという趣旨でもあり、賛同する人も多い。
 がんの患者さんで周りからへんてこな治療法や健康法を勧められて辟易となっている人が、そういう人に「これ読んでね」と手渡せる本でもある。
 内容について特に批判はないが、現実問題として、勝俣範之先生のような腫瘍内科の専門医を配備している病院がすべてというわけでもないので、そのあたりの実態との乖離とかはどうしたものかなあというのと、津川友介先生の担当部分は別書で尽くされている感もあるので、本書とのコンセプトがずれている印象はあった。むしろ、緩和ケアのプラクティカルな話題と検診についてを具体的な指針を充実させてほしいと思った。次作も期待したい。


『〈いのち〉とがん 患者となって考えたこと』坂井律子

 

 昨年の2月の刊行なので、それほど新しい本ではないが、『世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療』とは異なり、徹底した患者目線で書かれた本。
 私の率直な思いでいうなら、『世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療』は読まなくても、『〈いのち〉とがん 患者となって考えたこと』は読んだほうがいい。こういうとやや言い過ぎの感もあるが、従来にない、がん闘病記である。というか、ここまで徹底した闘病記というのは、読んだことがなかった。圧倒的だった。


『やってはいけない がん治療 医者は絶対書けないがん医療の真実』岩澤倫彦

 

  基調は、『世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療』と同じで、標準治療を推進させたいという趣旨の内容。専門家ではなく、医療ジャーナリストの視点で書かれている。特徴的なのは2点。①近藤誠医師批判、②がん検診批判である。
 内容的には、医学・医療的に正確に書かれていると思った。書籍として興味深いのは、近藤誠医師批判である。著者自身が検診でがんの疑念があるということで、近藤医師のセカンドオピニオンを求めたルポが興味深い。読むに、なるほど、近藤医師も問題だなということがよくわかる。ただ、近藤医師を弁護したいわけではないが、著者のような事例では、近藤医師のいうように5年生存率は高いと見てよいのではないだろうか。もう2、3の事例を見たいとは思った。

 

『「健康」から生活をまもる 最新医学と12の迷信』大脇幸志郎

 

 こう説明されていて、まあ、そのとおり。

「健康」から生活をまもる』というタイトルからも想像がつくとおり、この本は「医学の本」ではない。とはいえ、「アンチ医学の本」でもない。サブタイトルに「最新医学と12の迷信」とあるように最新の医学 情報をふんだんに取り込んでいる。

 しいていえば、健康とは何かということの再考を促す書籍である。つまり、健康であることが最高の価値でもないだろう。不健康だと理解したうえで不健康を選ぶ人生もあるだろうと受け取ってもよいだろう。
 というわけで、医療と健康の論点を、医学知識を個人の判断に帰着させている。が、医学知識は、医療のもつ公共性にも依存しているのだが、そうした側面は本書には含まれていない。

 

 以上、4冊。『〈いのち〉とがん 患者となって考えたこと』(坂井律子)は強くお勧めしたい。

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