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2020.06.06

横田めぐみさんは、なぜ北朝鮮に拉致されたのか?

 横田めぐみさんのお父さん、横田滋さんが亡くなり、世の中の話題が少し拉致問題に焦点を当てるようになり、ふと、以前、若い人に、横田めぐみさんは、なぜ北朝鮮に拉致されたのか?と問われたことを思い出した。
 横田めぐみさんは、なぜ北朝鮮に拉致されたのか?
 どう答えたらよいのだろうかと戸惑った。戸惑った一番の理由は、私が、その問いの解答を知らないからだ。だから、私は、「知らない」と答えるべきかと思った。それも誠実ではあるだろう。ただ、昭和という時代に生きた私は、知っているとは言えないが、思い当たることはいろいろある。それを語るべきだろうかと、戸惑いが広がった。
 こう答えたと思う。「本当の理由はわからない。ただ、私が思う理由を話していいかな」それに肯定的だったので、こう答えた。「日本語教師にするためだと思う。」
 もちろん、この答えでは疑問が続く。「なぜ北朝鮮は日本語教師を必要としたのか。なぜ拉致なんてしたのか?」
 私はその答えは間違っていたかもしれないと思う。というのは、それに「スパイを養成するためだろうと思う」と答えた。
 「なぜ、スパイ?」という問いは起きる。その答えは自動的なものだ、「日本と北朝鮮は敵対していたから」。
 そうした話のなかで、私はこうも述べたと思う。「結果的には拉致という犯罪だが、北朝鮮としては、招聘、つまり、お招き、という思いもあったかと思う。拉致被害者は、すべてではないが、それなりに丁重に扱われていたらしい。小泉政権のとき、5人が帰国したが、その5人については、北朝鮮としては、再度、北朝鮮を新しい故国として認めて、北朝鮮に戻ってくると思っていたようでもある」
 さて、話はそこで終えた。
 喉に詰まったような言葉が残った。「大韓航空機爆破事件って知っている?」
 それを説明するなら、話はさらに複雑になるだろう。
 平成生まれの人たちは、基本的にあの事件を知らないのではないだろうか。昭和の終わりのころの事件だ。ちなみに、どういう事件か、Wikipediaをひくと、こう書いてある。「1987年11月29日に大韓航空の旅客機が、偽造された日本国旅券を使い日本人に成り済ました北朝鮮の工作員によって、飛行中に爆破されたテロ事件である。」まあ、そう言ってもいいだろうし、そう語るなら、先の拉致事件との繋がりも語ろうとすれば語れるだろう。
 だが、その時代を生きた自分にはもう少しズレた歴史の感覚を持っている。それは、本当に滑稽なくらいズレているのだが、むしろ、そのズレの微妙な感覚について触れてみたい。
 大韓航空機爆破事件、1987年11月29日。
 私が三十歳の歳だ。
 民放放送は見ないとか言っている私だが、1985年から1987年にかけて3期でフジテレビで放映された『スケバン刑事』はコンプリートしている。なかでも、『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』はけっこう好きだった。そして、このシリーズが終わったあと、その路線で、『少女コマンドーIZUMI』が放映された。どういう話だったか。Wikipediaに項目があり、簡素にまとまっているから、引用しよう。

身に覚えのない殺人の罪を着せられた女子高生・五条いづみは警官から逃走中、海に転落し行方不明となる。しかし、謎の集団がいづみを救出し、その肉体を改造して殺人兵器となるための訓練を彼女に受けさせる。3年後、いづみは脱走を図り、組織の機密事項であったいづみを抹殺する指令が下る。組織の刺客に追い詰められ極限に達したその時、頭の中に謎の声が響く……「バイオフィードバック! 戦う意思が、お前の身体を最終兵器に変える!」それとともにいづみの身体は常人を遥かに超えたパワーとスピードで刺客を倒してしまった。自分の身体の秘密に戸惑いながらも、その能力と訓練中に身に着けた技能で組織に立ち向かっていくのだった。

 このストーリーを聞いて、どう思うだろうか。知らない人は、なんとリアクションしていいかもにょるんじゃないだろうか。いずれにせよ、これが放映されたのは、1987年11月5日だった。そして、1か月分の話を進めないうちに、大韓航空機爆破事件が起きたのである。後代の現在から見れば、なにそれという思うだろうが、この時代の只中にいた30歳のオタクみたいな私は、当然なら、そこに関連した意味づけはしなかった。制作陣にそんな意図があるわけもない。そしてそもそも大韓航空機爆破事件はなぞとされ、日本の左派はこれは北朝鮮とは関係ないという論陣すら張っていた。
 『少女コマンドーIZUMI』は打ち切りになった。理由は、これは同時代人にしてみると、大韓航空機爆破事件と似すぎているからだが、Wikipediaには、このことは書かれていない。

フジテレビの超人気ドラマだった『スケバン刑事』シリーズの後番組としてスタートしたが、前作ほどの人気は得られず[1]、放送開始から4か月で打ち切りとなった(物語は完結させている)。
番組終了の2ヶ月後、本ドラマを制作した東映とフジテレビは『花のあすか組』で女学生主人公の特撮ドラマを復活させたが、編成方針の変更で月曜日のローカルセールス枠に放送時間が変更された。

 Wikipediaがそのことを書かないのは、典拠がないからだ。むしろ、私が書いているこれは、お前さんの思惑にすぎない、といえば、そうだ。ああ、歴史というのは、こういうものなんだろうなと思う。同時代の私は、なぜ、『少女コマンドーIZUMI』なんていうドラマが生まれ、そして、奇妙な事件と意味づけられたある歴史の感覚を持っている。それは明瞭な感覚だが、史料的に裏付けられはしない。
 ちなみに、『少女コマンドーIZUMI』は、物語としては完結、というか、なんだか取ってつけたようなハッピーエンドだった。この物語の、初回は、当時としては印象的だった。後代に影響もあっただろう。
 ところで、主人公は、五十嵐いづみが演じた。歌手として、1987年12月に『IZUMI』というアルバムを出している。LPレコードである。買ったよ。今はもっていない。LPの束のなかに埋もれているかもしれないが、もう30年くらい見ていない。(CDはいつ頃できたのだろうか知らない)

Izumi

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