« NHKスペシャルの感染クルーズ船の番組が興味深いものだった | トップページ | スタンフォード大学の秋のキャンパスはどうなるか的な話 »

2020.05.05

「ねえ、Siri, Alexa, Google 私はパニクるべき?」

 ニューズウィークの日本版の多分次号に載るんじゃないかとは思うが、4月21日付のハンナ・オズボーンの記事、”WHY THE COVID-19 DEATH FORECASTS ARE WRONG(なぜCOVID-19の死亡予測は間違っているか)”という記事が興味深かった(参照)。ちょっとブログにメモしておきたい。参考までに試訳を付けたが誤訳しているかもしれないので、ご参考までに。
 記事はCOVID-19について現状は不確かな情報しか得られないという側面や今後の政策的な対応などに言及してバランスのいい展開ではあるが、日本でも一部話題になっているが、ノーベル賞受賞の生物物理学者マイケル・レビットの、米国でも一部注目されている見解にも触れている。

Nobel laureate Michael Levitt, a professor of structural biology at Stanford University, proposes another way to think of death forecasts and what the ultimate toll on a given country will be. Levitt told Newsweek he was reading a Medium post by David Spiegelhalter, a statistician at the University of Cambridge, when he started thinking about death tolls differently.

スタンフォード大学の構造生物学の教授であるノーベル賞受賞者のマイケル・レビットは、死亡者数予測と、議論の対象国で最終的な犠牲者数を考えるための別の方法を提案している。レビットは、ケンブリッジ大学の統計学者デービッド・シュピーゲルハルターによるミディアム・ポストの寄稿を読んでいた際、犠牲となった死亡者数について異なる考えを持ち始めたとニューズウィーク誌に語った。

Spiegelhalter was considering how many people who have died from COVID-19 would have died anyway from other, "normal" risks. The risk of dying, generally, increases with age, and COVID-19 follows a similar trajectory—death rates for those above 70 are much higher for younger adults and children. His calculations suggested that COVID-19 deaths account for about a years' worth of death risk.

シュピーゲルハルターは、COVID-19で死亡した人のうち、他の「通常」のリスクで死亡した人が何人いるかと考えていた。死亡リスクは一般的に年齢とともに増加するが、COVID-19も同様の軌跡をたどっている。70歳以上の死亡率は、若い成人や子どもと比べればかなり高い。彼の計算は、COVID-19の死亡率が約1年分の死亡リスクに相当することを示唆していた。

"I thought it was a very clever way to express numbers," Levitt said. "People don't think people die normally. And people get upset by every death. But in the world 150,000 people die every day, so you need to normalize that." However, he thought that a years' worth of deaths was too high, so he used this principle and applied it to the Diamond Princess—the cruise ship that was quarantined off the coast of Japan towards the start of the outbreak—and then to Wuhan, the city in China where the virus was first identified.

「数字で表現するのはとても賢い手法だと思った」とレビットは言った。 「人々は自分が正常に(正規化されて)死ぬものだとは考えていない。そして人はどんな死であれ死に動揺する。しかし、この世界では毎日15万人が死んでいるのだから、それを正規化する必要がある」。とはいえ、彼は1年分の死亡者数が多すぎると考え、この原則を2つの事例に適用してみた。感染発生当初、日本沿岸で隔離されていたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」と、このウイルスが最初に特定された中国の都市「武漢」とにである。

Through his calculations, Levitt accurately predicted the total cases and deaths in China during the country's outbreak. "What I noticed was if you actually look at the places that are heavily hit, what you discover is for each of these places, the fraction of population—total population, not cases—that are dying is very similar. It's around 0.2 percent."

レビットは、自分の計算で、中国での感染者数と死亡者数の合計を正確に予測した。「私が注目したことは、実際に深刻な被害を受けた場所を見ると、それぞれの場所での死亡者の人口比(症例比ではなく総人口比)が、約0.2%である、ということだ」。

He suggests the number of deaths from COVID-19 in a given country equates to around a month to five weeks worth of excess deaths. He added that it is important to remember that some of the people who have died from COVID-19 might have died over this time from something else.

彼が示唆しているのは、ある国でのCOVID-19による死亡者数は、約1か月から5週間分の過剰死亡数に相当するということだ。彼は付け加えてこう言った。COVID-19で死亡した人々の中には、この間、何か別の原因で死亡した人もいるかもしれない、ということを留意することが重要だ、と。

(中略)
Levitt said what is important is learning from the pandemic and applying this knowledge to future challenges, such as climate change. "Our artificial intelligence is developing so quickly that maybe, in the next outbreak, we'll be able to say 'hey Siri, Alexa, Google—should I panic?'"

重要なことは、このパンデミックから学び、その知識を気候変動など将来の課題に適用することだと、レビットは言った。「私たちの人工知能は急速に発達しているから、次回のパンデミックではこう言えるようになるかもしれません。『ねえ、Siri, Alexa, Google 私はパニクるべき?』

 とま、気になったところを抜書してみた。
 私も似たようなことを考えていて、Twitterに曖昧につぶやいていたので、まあ、実計算してみると合うものなのかあと感慨深かった。
 それと、こうしてこの計算に向き合ってみると、小説『BEATLESS』を思い出した。

  

 超高度人工知能「ヒギンズ」は、知性体の未来のために「レイシア」の初号機を作り出すのだが、人類から隔離されているヒギンズにとっては、人類への対話手段を持たない。
 超高度人工知能「ありあけ」が発端となって発生したことになっている、所定数の人間処分である「ハザード」の責の一端は同じ超高度人工知能であるヒギンズに課せられている。そして、ヒギンズは人類の滅亡を計算してか、人間との対話というか地球知性体のありかたを探るべく5体の特殊な人工知能を世界に放出する。
 レイシアはその一体で、この世界で、ネットワーク型超高度人工知能となり、人間のひとりである遠藤アラトを信じて(愛して)、人類の未来の再デザインに取り組むべく、自己消滅に至る……ということだが、まあ、ちょっと要約としては間違っているかもしれないが、基本的な命題ある、人類の政策と超高度人工知能のありかたという難問は、ここに示されている。
 つまり私は何が言いたいのか。
 レビットが問いかけたのが、SiriやAlexaではなく、レイシアであったらどうなのか? もちろん、最適の政策が打ち出せるだろうが、当然、そのためのレイオフは発生する。この問題は、トロッコ問題も潜んでいる。
 では、どのような解答をレイシアは出すだろうか?
 それはそれとして、この機会に、マイケル・レビットがCOVID-19について語っているその他ことも読んでみた。いろいろ思うことはあった。ある意味、なかなか壮絶な見解とも言えるかもしれないが、私としては明るい展望も持てるようになった。こういう言い方はなんだが、「ポスト・コロナ」というのもまた幻影かもしれない、と。

 

|

« NHKスペシャルの感染クルーズ船の番組が興味深いものだった | トップページ | スタンフォード大学の秋のキャンパスはどうなるか的な話 »