ハングルと陰陽思想
ハングルというのは、한글で、異説はあるが、よく言われる「偉大なる文字」ではなく、「漢写」であろう。글の対応漢字がよくわからないが、「글을」は中国語では「写字」とされていて、意味的な対応はありそうだ。また、そう考えるのは、한글は한자の対応で、つまり、漢字(한자)に対応する訓読み、朝鮮語の「写し」ではないかと思われるからだ。
ハングルという文字自体の起源については、私が直接学んだ岡田英弘教授は、元朝のパスパ文字を元にしたと説かれていた。余談だが、李成桂は女真人であるとしていた。高麗国王恭愍王が双城を攻めたおり、その降伏者の李子春の息子である。
それはそれとして、ハングルの構成には陰陽五行が関わっている。このあたり、そもそも漢字の訓という性質からできた体系を陰陽五行で整理しなおしているのだが、ニーモニックというより世界観の要請ではあっただろう。当然、漢字訓の構成としては、中国語を写すために三十六字母に対応している。
陰陽五行との対応だが、母音で見ると、次のようになっている。
陰 ㅡ
陽 ・
逆にしたほうが直感的だろう。
陽 ・
陰 ㅡ
大地(陰)の上の天に太陽(陽)があるという象徴である。
人間はその中間にある(檀君思想)。発音記号とローマ字を添える。
陽 ・ 無音
人 ㅣ /i/ i
陰 ㅡ /ɯ/ eu
次に4つの基本母音が現れる
陽 ㅗ ㅏ /o/ - /a/ a - o
陰 ㅜ ㅓ /u/ - /ɔ/ eo - u
方形になる。
ㅗ /o/ o
ㅓ ㅏ /ɔ/ /a/ eo a
ㅜ /u/ u
さて、わからない。何がわからないかというと、母音の調音点との関連が見られないことだ。日本の母音は、調音点にほとんどきれいに対応している。基本ラテン語もそうだ。
い i う u
え e お o
あ a
仕組みがわからないが、漢字を写す中声の母音には次のものがある
ㅐ ㅔ ㅘ ㅙ ㅚ ㅝ ㅞ ㅟ ㅢ ㅒ ㅖ
/ɛ/ /e/ /wa/ /wae/ /ø/ /wɔ/ /we/ /y/ /ɯi/ /jε/ /je/
ae e wa wae oe wo we wi ui yae ye
法則性がいまひとつわからない。なにより、ㅚが変則すぎる。発音からローマ字が導けない。
当然、この混乱は韓国にもあるようだ。「ㅐㅓㅕ ㅚ」は「ai u yu oi」となりかねない。金日成は北朝鮮式でもない。
김일성(金日成) Kim Il-sung (Kim Il-song)
現代自動車の「現代」だが、マッキューン=ライシャワー式に近いものになっている。ただ、文化観光部2000年式ではかなり音価が想像しにくい。
현대(現代) Hyundai (Hyeondae)
ちなみに、次のようにまとめているサイトもあった(参照)
次は子音だが、これも中国語に対応し、五声であり、陰陽五行の五行に対応する。
木 牙音 ㄱ 舌根が喉を閉じる
火 舌音 ㄴ 舌が上あごに付く
土 唇音 ㅁ 唇の形
金 歯音 ㅅ 歯の形
水 喉音 ㅇ 喉の形
子音体系は、この五声の字形を修飾して作られる。
以上、陰陽五行とローマ字化の対応を見ても、規則性は見られないし、そもそも陰陽五行の対応が基本母音をうまく捉えていない。ただ、この点については、私がハングルと陰陽五行の関連をよく理解してないせいもある。たとえば、ㅐとㅔはどのような合成の原理によっているのだろうか?
あと、書いていて思ったが、ㅚとㅟはウムラウトの記号を使ったほうがよいのではないか。あと、/ɛ/と/e/の対立は実際にはないようなので、整理してもよいのではないか。
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