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2020.05.06

スタンフォード大学の秋のキャンパスはどうなるか的な話

 昨日の記事で言及した、2013年のノーベル化学賞受賞・生物物理学者マイケル・レビット(Michael Levitt)だが、1987年以降、スタンフォード大学で構造生物学の教授を務めている。その関係から、同大学の学内紙と見てもよいだろう(会社組織になっているが)The Stanford Dalyに5月4日付でインタビュー記事が掲載されていた。読みようによってはではあるが、興味深い言及があり、これもブログにメモ代わりに記しておきたい。
 見出しとリードは次のとおり。試訳を付したが間違っているかもしれないので、ご参考までに。

Q&A: Nobel laureate says COVID-19 curve could be naturally self-flattening
“I’m pretty sure we will be on campus for fall quarter,” Michael Levitt predicts
Q&A: ノーベル賞受賞者は、COVID-19の曲線は自然に自己平坦化しうると述べた
「秋の四半期には私たちはキャンパスにいると確信している」とマイケル・レビットは予測している

 気になったのは、以下。MLはマイケル・レビット。TSDはThe Stanford Daly紙記者。

ML: Well, after China, it was then South Korea, and then Italy. And to my surprise, other countries actually looked a lot like China, even though China had very, very strict social distancing. I sort of said, well, social distancing might be very important. But the fact is, even without this, the virus seems to be working to flatten the curve. The virus seems to have this intrinsic property of not growing exponentially but actually growing slower and slower each day.
ML:中国の次は韓国、そしてイタリアでしたね。私は驚いたのですが、中国は社会的距離が非常に厳しかったに、他の国は中国によく似ていました。私はそうですね、社会的距離は非常に重要なのかもしれないと思いました。しかし事実としては、これがなくても、ウイルスは増加曲線を平坦化させているようです。このウイルスは、指数関数的に増加するのではなく、実際には日々ゆっくり成長するという本質的な特性を持っているようなのです。

TSD: Why do you think coronavirus has this tendency?
TSD: なぜコロナウイルスにこの傾向があるのだと思うのです?

ML: Imagine I had a confirmed case of COVID. Unbeknownst to me, a declared case, I’ve also infected my friends, my kids, people near me. And this means on the first day, I can infect people, but then the next day, I can’t find people so easily to infect. In some ways, what’s happening is that visible cases are having a hard time finding people to infect, because the invisible cases have already infected them. Since then, there’s been a lot of extra findings about maybe we have some natural immunity to the virus as well.
ML: こう想像してみてください。私にCOVIDの症例が確定しているとします。私は確定者として知らないうちに、私の友人や子ども、身近な人を感染させてきています。これが意味することは、初日には感染ができても、翌日には簡単に感染させる人を見つけられないということです。ある意味、見てわかる感染者は感染させる他の人を見つけるのに苦労しています。というのも、見てもわからない感染者がすでに人々を感染させてしまっているからです。それ以来、同様に、私たちにはこのウイルスに対するなんらかの自然免疫があるかもしれない、というような追加的な発見がたくさんありました。

TSD: Would you describe this mechanism as populations achieving herd immunity?
TSD: その仕組みは、集団免疫を達成した人々の集団だと言えますか?

ML: You don’t actually have to infect everybody, depending on how fast the virus grows. Some people say 80% [of the population needs to develop antibodies], some people say 60%. I personally think it’s less than 30%. And some people are saying we’re never going to get herd immunity. I don’t think so.
ML: ウイルスの増加速度によりますが、実際に全員を感染させる必要はないのです。80%もの人が抗体を作る必要があると言う人もいれば、60%だと言う人もいます。私は個人的には30%以下だと思っています。そして、集団免疫はけっして得られないと言う人もいますが、私はそうは思いません。

TSD: Why not?
TSD: なぜそう思わないのですか?

ML: There have been maybe five or six situations where there was massive infection, including on the Diamond Princess cruise ship or provinces in Italy. You will find that the final death count is something like a tenth of a percent of the population. You could say that each of these places stopped because they had wonderful social distancing, or we can simply say they stopped because there was no one left to infect. We will know in a few weeks the answer to this question because of what happens in Sweden.
ML: クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号やイタリアの地方など、大規模感染が発生した状況がすでに5、6件あります。最終的な死者数は、その人口の1/10パーセントに相当していることがわかります。これらの場所で感染が停止したのは、素晴らしい社会的距離があったためだと言えるでしょう。あるいは単純に、それ以上感染する人がいなくなったから停止したとも言えます。私たちは、スウェーデンでの事例から、あと数週間でこの問題の解答がわかります。

TSD: Sweden?
TSD: スウェーデン?

ML: If Sweden stops at about 5,000 or 6,000 deaths, we will know that they’ve reached herd immunity, and we didn’t need to do any kind of lockdown. My own feeling is that it will probably stop because of herd immunity. COVID is serious, it’s at least a serious flu. But it’s not going to destroy humanity as people thought.
ML: スウェーデンで5,000人か6,000人くらいの死亡数で停止すれば、群集免疫に達したことがわかるでしょう。そして、ロックダウンのようなことをする必要はなかったということです。私の感覚でしかありませんが、たぶん群集免疫があるから止まるのでしょう。COVIDは深刻です。少なくともインフルエンザほどには深刻です。しかし、人々が想定したように、人類を滅ぼすことはないでしょう。

 この話につづけて、レビットは、世界中の感染も、8週間から14週間で停止するのではないかと予想しているが、すでに停止したかに見える韓国でも死者は出ているので、最終的な死者数はわからないと述べている。
 それからスタンフォード大学の学内誌らしく、大学は今後どうなりますかねという問いには、記事タイトルのように、いろいろ問題はあるにせよ、秋の新学期には再開できるでしょうと楽観的に述べている。
 話はそれだけで、私の印象としては、レビットの予想は随分と楽観論のようにも聞こえるが、具体的に、約1000万人程度のスウェーデンで死者6000人というのは、それなりにかなりすごい数値で、日本ならその10倍の規模の人口の国家なので、6万人の死者が出るでしょうということになる。おっと。厚生労働省クラスター対策班のメンバーの北海道大の西浦博教授(理論疫学)は、何ら対策がなければ日本で42万人の死亡を予測していたのだった。単純に等倍したら7倍になる。それに比べるとレビットの予想はかなり控えめと言えるかもしれない。ちなみに、5月6日の最新のNHKによれば、現状の日本での死者数は、566人。
 気になるのは、レビットがロックダウンの必要性はなかったかもしれない指摘だ。現状ではわからないものの、現状の各国のトラジェクトリー(動向)を見ると、ロックダウンした英国、フランス、米国、イタリアと、スウェーデンに大きな差は見られない(参照)。

Trajectry

 ついでに比較的ではあるが被害の少ない中国、韓国、日本のトラジェクトリーを比べてもあまり差はない。このまま推移するなら、韓国での対応も日本の対応も結果的には対して差はなかったということになりそうだ。

 

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