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2020.05.24

[アニメ] パパのいうことを聞きなさい!

 アニメ『パパのいうことを聞きなさい!』を見た。アニメは1シーズンで、OVAが2話あった。見た理由は特にない。偶然である。以前なら、このタイプの絵は見られなかったが、流石にアニメ絵にも慣れてきた。面白かったかというと、つまらなくはなかったというのがまずあるがその先はなんとも微妙な感じがした。最初に、その微妙のコアの部分を言うと、私はまず最初に、「あ、これ、『池中玄太80キロ』だ」と思い、誰が見てもそう思うだろうと思ったのだが、ググってみると、私の勘違いなのか、ヒットがなかった。なぜなんだろうか? 異世界に来たような、え、ここどこ?感があったのだ。
 アニメ『パパのいうことを聞きなさい!』の概要はこう。主人公・瀬川祐太は、中央大学を模した八王子の大学に入学し、下宿生活を始めた初夏、姉夫妻が飛行機事故で死亡し、その子どもたち、空(中2)、美羽(小5)、ひな(3歳)が親戚に離れ離れになるのをかわいそうに思い、狭い下宿に引き取る。物語はそのひと夏の出来事である。
 祐太が子どもたちを引き取ったのは、彼自身、幼い頃から姉に育てられたという思いがある。女の子たちだが、アニメだからというのか、実は血縁はない。空は姉の夫の前妻の娘(祐太に惹かれている)、美羽は彼の二番目の前妻の連れ子のロシアン・ハーフ、ひなは二人の実子。
 祐太をめぐる大学生のサークル仲間も重要で、変人美女の織田莱香、女たらしの美青年の仁村浩一、あと、幼女好きの佐古俊太郎が出てくる。アニメ全体はいわゆる妹萌えものでもあり、佐古がその気持ち悪さを表現している。莱香も天使が降りてきた系である。仁村は意外といいキャラクターで、話中、美羽との関係が心情迫る。
 連れ娘との同棲という点で、昭和のみんなが知っているのが、『池中玄太80キロ』であり、祐太のキャラや女の子の心情の作りがよく似ていると思った。
 さて、以下、ネタバレ。
 普通に考えてもわかるが、大学生の下宿先で三人の娘が共同生活などできるわけもなく、その生活は破綻するのだが、いい意味で破綻し、娘たちの実家に祐太も暮らすということになる。まあ、最初からその設定でもいいようにも思うのだが。
 そして、空と祐太の恋情がエンドとなるのだろうなという雰囲気で終わる。ラノベ原作では未読だが、他エンドの可能性も散りばめられてはいたようだ。
 さて、本編を見終えて、なにか、残尿感というか、残る感じがして、OVAを見ると、案の定、姉夫妻の幽霊が出てくる。これが、思いつきで取って付けたというより、そもそも、祐太と三人の娘の家族愛のような関係は、死者の目線にあったのだと気がかされるものだった。それだったのかと、落とし穴に落ちるかのように納得した。
 物語は、お兄ちゃん萌えでもあるのだが、祐太と空の関係は、『エロマンガ先生』のような単相の親密の関係性ではない。死者の視線が、エロスを常に遮るように進む。

 

 と、ここで、気がつくのだが、そもそも家族的な親愛の情感というのは、こうした死者の視線を前提にしているのではないだろうか。
 ジャン=リュック・ナンシー『無為の共同体』が示すように、私たちの共同性というのは、その構成員の心情に帰着するものだけではない。むしろ、共同性はそのなかで死んでいた死者を共有する関係にある。さらに彼がほのめかすように歓喜もエロスも。
 ところで、原作とアニメではかなりとまで言えるかわからないが、ズレがある。それが基本テーマの物語的な遅延に関わるのか、本質的なズレにあるのかわからない。そうしたなか、作者が早世したという話題も知って、なんだろ、特段暗喩的な意味はないのに、重たい感覚が残った。

 

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