「天安門」を中国語でどう発音するか?
「天安門(天安门)」を中国語でどう発音するか? ピンイン(拼音)で Tian An Men だから、日本語的には、「ティエン・アン・メン」に近い、というのはそうなのだが、このピンインは間違いで、実際には、Tiān'ānmén 。「安」の音の前に隔音符号がついているので、「ティエンナン・メン」にはならない。
なのだが、この、隔音符号とはなにかだが、音声学上は、声門閉鎖音(ʔ : glottal stop)である。母音が語頭にくるとき、声門が一瞬閉じる。ちなみに、日本語の母音にもこれが暗黙でついていることがある。あと、最近、朝鮮語の音韻を見直しているが、激音もこれかもしれない。それと、現代米語の t もけっこうこれに変わってきている。一般的にも、"at last"は [əʔt‿'lɑːst]、日本の英語教育では教えられてないと思うけど。
で、このピンインの Tiān'ānmén を見ていて、ふと気がついたというか、あれと思うことがあった。 Tiān と 'ān は、ピンイン上は似ているので、'ān が「アン」なら、なぜ、Tiān は「ティアン」ではないのか?
答えは、そういうものだから、なのだが、あれ?と思ったのは、なぜ、そうなのか。直感的には、Tiān では、an の前の i の影響で、口蓋化(palatalization)したか、口蓋化が歴史的に固定化したか、まあ、私もそういうものだくらいに思っていてたが、考えてみると、変である。
というか、朝鮮語のマッキューン=ライシャワー式を見ながら、中国語(北京語)でウェード式を見ていたのだが、ウェード式だと、t'ien an men になる。つまり、見てすぐわかるように、ien と an の違いがわかる。あれれ? 気になって、ボポモフォで違いが出るか調べたが、なかった。つまり、台湾の注音符号でも同じ。なぜなのか?
このなぜをざっと調べたが、よくわからなかった。北京でも台北でも同じ考えということでウェードが違うとなると、恐らく、このピンインは中国の伝統的な音韻論、つまり、声母(shēngmŭ)と韻母(”yùnmŭ)の考えに根ざしているのではないか、つまり、こっそり歴史主義が含まれているんじゃないかと想像した。
このあたり、ピンインの父、周有光の思索を探ればなんかヒントがあるかと思ったが、どうも専門的過ぎてよくわからない。ちなみに、彼は日本にも留学していた経済学者だったので、言語学的な訓練は受けてなかっただろうな。
この調べる過程で、台北の通用拼音を知った。が、これは注音符号に変わるものではなく、あくまでローマ字化のためのものようだ。なのでか、ian についても、注音符号をなぞっている印象だった。とはいえ、同じ理由で、北京ピンインのfengは、fong になっていた。
まあ、まとめると、というか、改めて思ったのだが、ピンインというのは、ローマ字化であって、発音を意味しているわけではなく、背景にはやはり歴史主義(中国音韻論伝統)が潜んでいそうだ。
そもそも、Xí JìnpíngのXですら、欧米人にはどう読んでもわからず、Who is Xi?というダジャレになったものだ。
そういえば、私が受験生のとき、通学電車でいつもJapan Timesを読んでいたが、あのころ、PekingをBeijingとするというアナウンスがあって、奇妙に記憶に残っている。その後、英語では、「ベイジング」みたいに発音されていたが、これはピンインなので、発音的には、どっちかというと「ペキン」に近い。
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