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2020.05.04

NHKスペシャルの感染クルーズ船の番組が興味深いものだった

 あまり期待しないで見たのだが、NHKスペシャル『調査報告 クルーズ船~未知のウイルス 闘いのカギ~』が興味深いものだった。最初から、配偶者を亡くしたかたの話があり、同情はするが、そうしたパセティックな番組は期待していないので、これは流し見かなと思ったが、見ていると、いろいろ勉強になった。
 まず当たり前のことなのだが、あまりヴィジュアルに想像していなかったのだが、豪華クルーズ船のお客さんはお金持ちで、引退生活者が多そうで、つまりは、高齢者が多いのだった。COVID-19は高齢層が重症化しやすいので、不運にも結果的にそこが狙われたような状況でもあったのだなと再認識した。
 いろいろびっくりしたのだが、巨大な豪華クルーズ船の客室で感染者が空間的にどう分布しているのかだった。図解的に示されたのだが、これがまるで均質だった。まるで空気で感染でもしたかのように。もちろん、空気感染ではなく、エアロゾル感染も多かっただろう。
 もちろん、とさらに言うが、感染経路としては接触感染が主流ではあっただろう。これは番組中に蛍光剤を使ったわかりやすい実験があった(よく見るやつ)。まあ、いろいろ接触しちゃうものだよなと改めて思った。ここで驚いたのは、乗客を降ろしたあとの残留ウイルスの検査でトイレにけっこうこのウイルスがあるらしいことだった。コンビニでトイレを封鎖しているところが増えてきたが、ノロウイルスでもないのに人手の問題かな、こういうかこつけた過剰規制は困るな、と思っていたが、コンビニのトイレというは意外に感染源になりそうだなと認識を改めた。
 一番びっくりしたのは、明示的に示されたわけではないが、SARS-CoV-2の無症状の肺炎の関連で、これを、上気道炎と事実上分けていたことだった。COVID-19の感染にはいろいろ不思議なことがあるが、このように分けて考えると納得しやすい面がありそうに思っていた。例えば、PCR検査だと上気道を調べるが、これだけだとわかりにくいことがありそうだ。しかも、そうではない無症状・軽症の肺炎のほうが急速に重篤化しやすい。
 もちろん、完全に分けて考えられるわけでもないが、上気道炎症は従来からあるコロナウイルスの風邪に近いが(そしておそらく軽症)、他方、エアロゾル化したSARS-CoV-2が直接肺で炎症を起こす可能性もあるかもしれない。
 いずれにせよ、COVID-19で重要なのは、無症状・軽症の肺炎の急激な重篤化なので、日本が事実上、PCR検査の充実よりも、医師の検診からCT検査という手順にしたのは、重篤化から死亡者を減らすという点では、他国にないよい戦略だったのかもしれない。もちろん、断定はできない。
 他方、昨日、専門家会議の尾身茂氏も本来ならPCR検査をしたかった旨を語り、その留保理由に、体制の不備をあげたが、不備を押して初期の時点でPCR検査を行うと、ニューヨークであったように、症状がない人までも不安にかられ、検査を求めて殺到し、院内感染のような状況になりえただろう。というか、日本のその後の院内感染の状況を見るにその懸念はかなりありえただろう。北海道が一度は封じ込めに成功したかに見えて、再び感染が広まったが、もちろん院内感染だけではないが要因としては大きい。
 総じて、日本の現状では、一番大きなクラスターは院内感染と言ってよさそうだ。むしろ、まだ総括する時期ではないが、日本のCOVI-19対策で、最大の問題だったのは、そこだろう。病院を責められるものではないが、政策的な失敗ではあっただろう。

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