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2020.05.02

ケネディ大統領暗殺事件の謎は解かれたか?

 先日、NHKスペシャルで『未解決事件File .08 JFK暗殺』を前編・後編に分けて放送していたのを見た。「大型シリーズ」としてNHKも、話題作とすべくけっこうお金を投じて作ったらしく(しかも4K)、いくどか再放送されてもいるようだ。
 どうだったか。端的に、ケネディ大統領暗殺事件の謎は解かれたか?
 最初からわかりきったことではあるが、この謎が解かれるわけもない。まだ前提として資料が出尽くしてもいないからだ。(以下、いわゆる「スポイラー」的な内容を含みます。)
 この資料の公開は、事実上、ドナルド・トランプ米大統領にとっては選挙戦時の公約とも言えるはずだったが、2017年10月26日では全公開は見送られた。複数の情報機関が一部の非公開を求めたとされている。まあ、さすがにトランプさんにしても、これを公開しちゃまずいだろうという文書がある、ということには間違いない。代わりというわけでもないが、この機にジョン・F・ケネディ大統領の暗殺に関する2800件の機密資料公開が承認された。現状では、2021年10月までにもう少し公開されるか、という話になっているかと思う。
 それでも、現状公開の資料と最近の研究をもとに、書籍やドキュメンタリーが組まれるだろうことは予想された。潤沢な資金力と調査力を持っているNHKあたりもぱくつくだろうとも予想していたし、先行して、クロ現でも取り上げてもいた。
 で、ようやくそれができたわけだが、昔のNHK風に地味なドキュメンタリーというわけでもなく、最近の動向のように(役者さんが天皇に扮するとか)、「たぶんこうだったんじゃないか劇場 」的に出してきた。これがなかなかの出来で、ジェイムス・ワトキンス演じるオズワルドとか、すげーそれっぽく、映画としてもけっこう見応えがあったりもした。が、これって、一種邪道といえば邪道だよなとも昭和な私は思ったりもした。
 疑惑についての基本的な筋立てとしては、このNHK番組はどうだったか。
 基本は、四半世紀も事件を追求してきた元ワシントンポスト記者のジェファーソン・モーリー(Jefferson Morley)に拠っていた。また、今回の番組の目玉は、元CIA高官のロルフ・ラーセン(Rolf Mowatt-Larssen)の証言と推測に焦点を置いたことだ。
 それは何かというと、いわゆるCIA関与説である。シンプルな推測であった。番組は傍証とドラマ風の映像でさも真実げに取り上げてしまったが、普通に見ていて、私などはこれは、話としては面白いが、読みとしてはだめだろうなと思った。
 ラーセンのCIA関与説は、当時のCIA内部の内部の様子についてはなかかに真実味があるが、実際の暗殺計画という際に、狙撃の腕が不確かなオズワルドに十分に依拠するわけは、ありえない。普通に考えて、オズワルドに狙撃をまかせたら失敗するだろう。
 このあたりを番組ではどうするのかと、率直に言って、そこだけ真面目に注視していたのだが、モーリーが出てきて、おなじみの「もう一人の狙撃犯説」を語っていた。図解なども出てきたが、その裏はというと、番組にはなかった。
 まあ、端的に言えば、この番組では、暗殺の真相の推理としてはであるが、従来知られている以上のものはなかった。
 もちろん、オズワルドの生涯のドラマなどは面白かったので、番組としてのクオリティはある。
 現状、トランプ大統領の判断から類推して、ケネディ大統領暗殺には政府にとってやばい情報がまだ隠蔽されていることは事実だろうし、CIAのなんらかの関与というかCIAが無知であったとことはありえないだろう。
 そうした点からすると、今回のNHK番組は、ケネディ大統領暗殺事件についての、最近のコンセンサスっぽい印象はある。

 

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