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2020.04.15

"screw the pooch" は自動詞か?

 昨日の話の続きのようでもあるが、"screw the pooch" は自動詞か?というのが気になった。もちろん、自動詞であるはずはない。Wiktionaryにもidiomaticとあり、熟語ではある。が、同時にVerbでもあり、一般書ではあるが、"Power Verbs: The Complete Collection" でもverbの扱いになっている。つまり、動詞として扱えはする。
 Your dictionaryというサイトには、次のような説明もある。このサイトが言語的とは言えないだろうが。

screws-the-pooch
Verb
third-person singular simple present indicative form of screw the pooch

 いずれにせよ、動詞として扱われているのであれば、自動詞か他動詞かというのは問えるのだから、先の疑問も成立しないこともないだろう。
 これはどういう文法現象なのだろうか?
 Wiktionaryには、意味の説明として次のようにあるが……

(idiomatic) To screw up; to fail in dramatic and ignominious fashion.

 これは、意味説明と同時に、文法的な対応も結果的に示しているのではないだろうか。つまり、"screw the pooch"は、screw up やfail inと意味的に言い換えられるし、文法機能的にも同一機能なのではないか?
 そこでこのscrew upだが、Merriam Websterだと、自動詞と他動詞の用例が説明されている。

We all screw up from time to time, so don't sweat it.
You've totally screwed up the spreadsheet.

 これを構文的に借りて、次のようには言えるだろう。

We all screw the pooch from time to time, so don't sweat it.

 しかしそれでも、他動詞的には言えないはずだ。
 そこで、fail inから連想するのだが、まずこの動詞句は次のように使える。

He will not fail in the examination.

 おそらく、構文を借りて次のようにも言えるだろう。

He will not screw the pooch in the examination.

 用例を探すと、"He screwed the pooch in couple of important areas."というのが見つかるには見つかる。ただし、こうして他動詞的に使う用例は一般的ではないかもしれない。
 話が散漫になるが、fail という動詞自体に、自動詞と他動詞があり、一般に違いは、固定化され、かつ意味の差として説明されやすい。

He failed the exam.
He failed in the exam.

 他動詞は「試験に落ちた」、自動詞は「試験で失敗した」ということだ。
 ここで興味深いのだが、failの他動詞には、次の用法もある。

He won't fail you.

「君を失望させないだろう」という意味ではるが、この他動詞用法の目的語のyouは、目的格ではなく、与格だろう。ドイツ語と比較してみる。
 例えば、

Words fail me.(言葉もない)

 は、ドイツ語では、

Mir fehlen die Worte.

 fehlenは自動詞である。
 とすると、おそらく、英語のfailの人称代名詞を目的語として取る動詞も、実は、というか、歴史的には、自動詞なのではないか?

 何を言いたい記事なのか曖昧になってきたので、とりあえず、まとめ。
 英語動詞における自動詞と他動詞は、形態に固定した特性ではなく、なんらかの上位の意味が要請する文法構造から投影されているのではないか?という疑念である。そうなら、こうした現象は英語が、ピジン語的な性質(屈折がなく意味が優先される)に寄っているからなのではないか?

 

 

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