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2020.03.07

アニメ『TARI TARI』

 NHKの7時のニュースの終わりの、アナウンサーたちの締めの言葉だったと思う。外出を避けて家で何をしましょうかという話題で、海外ドラマの一気見と言ってた。一瞬、私は、え?と思ったので記憶に残っている。NHKのアナウンサーがそれ言っていいのかと瞬時に疑問に思ったからだ。もちろん、NHKでも海外ドラマはやっているが、一気見となると録画であり、NHKとしては録画を奨励してないのではないか、という以前に、海外ドラマの一気見となれば、オンラインのストリーミングであり、端的にNetflixが連想されるのが自然だろう。まあ、そういうことなのだが……
 かく言う私も見ようと思っていた洋ドラはないわけではないが、あまり重たいのもなんだし、軽いアニメはないかという思いと、合唱関係のドラマかアニメはと思っていたら、自動的なお勧めに、『TARI TARI』が出てきた。以前、第一話の途中くらいまでは見ただろうか、絵が受け付けなかった。ストリーもゆっくり過ぎた。けっこう古いアニメだなと年代を見ると、2012年でそう古いわけでもないのだが、そういえば、この時期の『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』も最初、絵が受け付けなかった。京アニの『氷菓』あたりから絵が受け入れられるので、そのあたりか、と思い、シャフトの『物語シリーズ』は2008年でもokなので単に様式の差だろうか。と、『TARI TARI』を再確認すると、P.A.WORKSで、そういえば、あとから『色づく世界の明日から』に似ている感じもした。
 さて、『TARI TARI』だが、面白かった。普通にアニメ作品の傑作といっていいのではないだろうか。いわゆる「日常系」の作品とも言えるが、同じ、P.A.WORKSでも『色づく世界の明日から』のような微妙な非日常性というか、『天気の子』でもそうだが、アニメでなければ表現しづらい表現性のようなものはなかった。『TARI TARI』は普通に実写化のドラマにしてもいいんじゃないかと思ったが、が、と連想したのは、同じく合唱系のドラマ『表参道高校合唱部!』である。似ているといえば似ているが、連想してみて、『TARI TARI』の実写化のイメージがわかないことに気がつく。
 『TARI TARI』の良さは多面的でそれぞれきちんと語ることができるだろう。湘南・鎌倉の風土をその地域の内面性を含めて違和感なく描いていたこと、脚本がじっくりとしたペースで進んで人の内面を繊細に描くこと、映像のカットが美しいことなどだが、特筆されるのは、歌の美しさだった。主役の5人とも上手でしかも、個性的なのによく声が合っている。他、「声楽部」や吹奏楽などの音楽も美しかった。
 作品全体の印象だが、高校生と未来という点では、『orange』を連想するように、その後が気になる作品だった。続編はノベライズで出ているようだが、続編としてまとまるほどでもなそうなので、いずれ読みたいと思う。

  

 

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