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2020.04.01

この夏、東京オリンピック2020eの実施に向けて

 来年に延期が決定された東京オリンピック2020だが、国際オリンピック委員会(IOC)は、これとは別に東京オリンピック2020eとしてこの夏、eスポーツの大会を実施する検討に入ったようだ。これには、世界保健機関(WHO)の#PlayApartTogether (みんなおうちでヴィデオ・ゲームしましょう)イニシアティブも、最後のひと押しとして影響したらしい。
 「東京オリンピック2020e」のeは、eスポーツのeである。すべての競技をコンピューター・ゲームで再現し、しかも、パラリンピックの壁もなくして、多様な障害者の参加を可能にするという。
 eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」の略称で、コンピューター・ゲーム(モバイル・ゲームなど含む)を複数の参加者で競技することだ。そもそも「スポーツ(sport)」という言葉は身体スポーツに限定されない。チェスなどボード競技も含まれる。
 スポーツという言葉は語源的には、運搬することを意味するラテン語のdeportareに由来する。なお、ラテン語の継承言語の一つである現在のスペイン語でスポーツがdeporteとなっているのはこのためだ。また、語頭のsが脱落したのは、英語のschoolが同じくラテン語系のフランス語でécoleとなっているのと同じ変遷過程による。
 スポーツという言葉は、16世紀には精神的な意味合いを強めた。結果、気分転換・気晴らしを意図した各種ゲームがスポーツと呼ばれるようになった。こうして見るとわかるが、eスポーツはむしろ、スポーツという言葉の歴史的な意味を継承している。日本でこの意味合いが十分に継承されていないのは、富国強兵の明治時代に、教育が知育・徳育・体育とされ、スポーツがこの体育に統括されたことによる。
 東京オリンピックが新たにeスポーツとして実現されることに、古い世代の人は違和感を覚えるかもしれない。しかし、オリンピック競技としてeスポーツを含めることは、IOCでも3年前から検討に入っていたようだ。2018年の平昌冬季オリンピックで、その開幕に合わせ現地でeスポーツの世界大会である『インテル・エクストリーム・マスターズ』が開催されたが、これが原点になっている。この時のeスポーツ大会の成功から、eスポーツをオリンピックに統合する検討が進められ、今回のオリンピック延期決定直前には、インテルが主導して、eスポーツの国別対抗戦である「インテル・ワールド・オープン」の開催も決定された。この時点ですでに、オリンピックに含まれるゲームとして、対戦格闘ゲームの『ストリートファイターV AE(ストV)』と、クルマでサッカーを行う『ロケットリーグ(ロケリ)』の2つも検討されていた。
 eスポーツとしてさらなる発展もある。東京オリンピック2020e開催を契機に、3Dモデリング技術である「3Dアスリート・トラッキング(3DAT)」を5Gのインフラストラクチャー・プラットフォームで拡張し、従来からある身体的スポーツをヴァーチュアルに再現することになったのである。これらの実装では、すでに実績のあるコナミ・デジタル・エンタテインメントの『ウイニングイレブン PRO EVOLUTION SOCCER』やライアットゲームズの『リーグ・オブ・レジェンド』なども参考にされたらしい。またパラリンピックとの統合では、各種の障害に合わせた専用ギアの開発も着手されている。
 東京オリンピック2020eの実現には大きな期待がもたれるが、思わぬ障害もある。それは、ウイルス、つまりインターネット・ウイルスだろうか。そうではない。セキュリティ対策は十分に行われているし、この過程で、中国政府から5G技術に潜むバックドア公開も取り付けている。
 最大の問題は、身体的スポーツにおいてドーピングが問題となっているように、eスポーツにおけるドーピング問題ともいえるAI偽装である。eスポーツの参加者が本当に、人間なのかAIなのか、これをどう判定したらよいのだろうか。
 IOCおよびインテルからの公式アナウンスはないが、組織委員会の古宮カリナ氏の記者会見によれば、AIと人間との判定の基本技術であるチューリング・テストを拡張したものになるらしい。AI技術も投入される。例えば、ピアノ演奏を聞いて到底人間の10本指で演奏できないと思われる際、AIなら瞬時にそれは人間の手を使った演奏ではないと判別できる。つまり、AIによる演奏か、あるいはエルトン・ジョンや結城真吾のように足まで使った演奏であることも判別可能なのである。加えてこの判定には人間の技能も応用される。IOCの対策特設チームでは、すでに極秘プレーヤーが専用の高度eスポーツAIと対戦を繰り返し、その対戦パターンをディープ・ラーニングで解析中とのことだ。ただし、これでは結局のところ、AIをAIで判定するということでもあり、AI間のイカサマを防ぐという点では、根本的な矛盾解決には至っていないとも言える。

 

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