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2020.03.10

「ちゅうちゅうたこかいな」

 今年、2月ごろだったか、弥生時代の硯の話題をよく見かけた。紀元前2世紀末から前1世紀ころに日本ですでに国産の硯があったらしい。昨年の吉野ケ里遺跡展示室「むかしむかしの文房具」展でも展示されたと聞いた。硯があれば、文字もあったと考えるのは自然なことで、すると、弥生時代に日本で文字が使われていたか?
 当然、その文字は、当時の漢字であるには違いない(どう音価を与えていたかはわからない)。そしてもし弥生時代に文字があれば、以降の歴史を探るための文書・文献も出てくるのではないかと期待が膨らむが、その後続報も聞かない。古代史と文字の関連で言えば、稲荷山古墳出土鉄剣銘が5、6世紀。それ以前の、現状最古の日本の文字というと、4世紀ごろの短甲に書かれた「田」とされるらしいが、これは定説には至っているともいえないだろう。
 とはいえ、概ね、従来説でも5世紀の日本には文字があっただろう。これが弥生時代の硯から推測すると3世紀には普及していても不思議ではないが、文字が書かれた遺物が出てきているわけではない。そもそも出てこないかもしれない。
 考古学的な、事実に基づく推測はその程度で行き止まるが、視点を変えると、そもそもなぜ文字を書くのか?という問題は考えるに値する。稲荷山古墳出土鉄剣銘は史実を残すという史的な意味もあるが、名前を残すという意味もある。れいの短甲も、使用者特定の名前ではあっただろう。つまり、名前を書きたいというのは、文字の使用の第一の必要性ではあるだろう。ほかに?
 数を記す、さらには交易の記帳というのも、文字を必要とする大きな要因だろう、と考えて、そもそも日本古代、どう数を数えていたのかと考えた。
 数のやまと言葉は、「ひーふーみーよーいつむーななーやー」というあれである。そして、これは、「ひー」に対して「ふー」、「みー」に対して「むー」というように、fi-fu、mi-muという、数学的な構造がある(徂徠が指摘したとされている)。随分以前にこの話はこのブログに書いたことがあるが、日本語の数詞というのは、概念的な計算機となっているのだろう。
 では、どのような計算機? もしそうなら、その使い方がよくわからないのだが、今朝がた、「ちゅうちゅうたこかいな」が降りてきたのである。
 「ちゅうちゅうたこかいな」知ってる? その辺の平成人に聞いてみると、知らないとのこと。まあ、知らないだろう。
 Wikipediaに載っている。説も2つある。どっちの説でも、「ちゅう」は「重」であり、「たこ」は「蛸」のようだ。「重」は、重水素のdeuteriumであり、つまり話を端折るが、「2」だ。すると、「ちゅうちゅうたこかいな」は、「2ー2−8」であり、2の3乗のようでもあるが、2プラス2は4でその2倍が8というふうな理解のほうが自然であるだろう、実際には、2つ置きに数えるので、8に当たるのは「蛸」ではなく「かいな」にあたる。とすると、「蛸腕(たこかいな)」で一語と見てよさそうだが、そうなると最終が8なのだが、この数え言葉の最終は10である。うーむ。
 それはさておき、このように2つ置きで数えるというのは、昭和時代にはよくやっていた。ふと思い出したのだが、私は高校生のとき新聞部にいて、印刷屋さんとの上がりの確認で、業者や先輩が「ひーふーみーよーいつむーななーやー」とやっていたのを思い出す。「ちゅうちゅうたこかいな」と同じだ。
 古代において、この2置きの数え言葉があったかはわからないが、日本語の古代語を想定するに、通常に数えても、「やー」のところで、「4の2倍」という意識は生じるだろう。分配の便宜に役立ったのだろうか、と考えて、そういえば、以前も思ったが、そもそもこの「ひーふーみーよーいつむーななーやー」は、素朴な数詞というより、当時ですら交易など数値を扱う際に必要とされた特殊な語の体系だったかもしれない。当然だが、いわゆる上古にはこの意識は消えてしまっていただろう。現存の日本国家の起源は言語のあり方も変えたには違いないだろう。
 弥生時代に日本語が漢字という文字を使って書かれていたかは別としてだが、音声言語としての数詞の起源はそれより古いだろうから、巨大建造物の設計構築にこの数詞は使われてはいたのだろう。

 

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