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2020.03.27

東京都と隣接4県での不要不急の外出の自粛の、この時点の感想

 昨日26日、小池東京都知事は、隣接する4県、神奈川、埼玉、千葉、山梨の知事とともに市民社会に向け、人混みへの不要不急の外出自粛を要請した。
 私はどう思ったか。まあ、週末は気温も下がり雨模様なので最後の桜を楽しむといった天候でもないから、おうちにいるのも無難だろうかとは思った。
 もちろん、買い物や散歩(ランニングとかも)まで自粛せよというものではない。一人静かに雨の花見もよいものだろう。俳句の季語でいうなら、「花の雨」「雨の花」といったところだ。
 日本国政府に目を向けると、安倍首相は、今日27日の参院予算委員会で東京都内の新型コロナウイルス感染者急増を問われ、「仮にロックダウンのような事態を招けば、わが国の経済にもさらに甚大な影響を及ぼす」と答えたようだ。つまり、彼にはロックダウン(都市封鎖)は避けたいという思いはあるらしい。なにより、日本は緊急事態宣言にも至っていない。
 さて、「東京都内の新型コロナウイルス感染者急増」なのだが、いろいろと報道されている。昨日は、NHK7時のニュースも時間枠を拡大し、こってりこの話題をやっていた。
 なぜ、「東京都内の新型コロナウイルス感染者急増」となったか?だが、個人的には、PCR検査を増やしたからではないかと思い、厚労省のデータ(参照PDF)にあたってみたが、18日までのデータしかなく、現状ではよくわからない。
 ただ、報告された感染者数が急増していても、死者が急増している印象は受けないので、そのデータを探したが、一見するとよくわからない。という過程で、札幌医大のデータを見かけた。これはあとで示す。
 基本的に、死者数が急増しなければ、感染者が多くても致死率は低いことになる。ドイツを例にした報道がテレ朝にあったので借りる。《ドイツ 新型コロナ致死率低い理由「大量検査で…」[2020/03/27 08:05]》より。

 ドイツで新型コロナウイルス感染者の致死率が低い理由について、現地の専門家は「大量の検査で感染者を早期に発見しているため」との見方を示しました。
 ドイツでは約4万人の感染者に対し、死者は229人にとどまっています。致死率は0.6%程度で、イタリアの10%、スペインの7%などに比べて低くなっています。この理由について、ドイツの専門家は「週50万件の検査による感染者の早期発見がある」と指摘しました。

 概ね、COVID-19については検査数が多ければ感染者数が増大するだろうと見てよさそうだ。
 この問題は、COVID-19への対応の基本にも関わる。ざっくり書けば、日本の対応は、医療崩壊を起こさないように重症患者をよりわける、ということで、その前提となる爆発的な感染を引き起こしうるクラスター感染に着目することになっている。クラスターの管理をしていると言っていい。
 修辞に隠れている点を言えば、それ以外の対人感染については重視されてはいないし、そもそも軽微な症状は実質自宅療養に任せている。さらにその背後にあるのは、一定の感染者数を容認し、集団免疫を獲得させることだろう。
 その意味で、現状、クラスター管理が難しくなってきているため、人混みに集まることを自粛させ、今後は検査体制を強化するという移行になるのだろう。
 現状は、おそらく危機とはいえないまでも、危機になりうるという状況なのではと思うが、そのあたり、報道を雑見するとすでに危機というふうな雰囲気が感じられもする。
 さて、この過程で見つけた、人口100万人あたりで見た、札幌医大のデータ(参照)が興味深いものだった。そもそも「人口当たりの推移のグラフがなかなか見つからなかったので作成してみました」とあるが、なぜかほかにこのデータがまとまっているところがなかったみたいだ。
 まず、感染者数の推移だが。

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 感染者数の推移を見ると、中国が先行し、世界全体の平均値はあまり意味がないが、他、まず韓国が先行して、一種爆発し、日本以外の先進国でもまるで時限爆弾のように急速に増加している。他方、日本は世界とまったく異なる推移を示している。
 これをどう見るかだが、個人的には先にも述べたように、主要因としては検査数および検査体制に比例しているからではないかと思う。
 私が重視したのは死亡率で、これはこうなっている。

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 日本ではCOVID-19による死者数まで隠蔽されているという意見もネットでは見かけるようだが、まあ、それはありえないだろう(ということで、その手の前提で罵倒コメント寄せないでね)。
 いずれにせよ、日本は圧倒的に死亡率を抑制していることは見て取れるし、他先進国のような爆発的な急増はまだ見られない。
 死亡率については、中国と韓国が、爆発的な増加を抑制しているようにも見えるので、日本はさらにそれを上回って抑制しているか、これらのアジアの国に別の要因があるか(いくつかあたりはあるが現状では判明しない)だが、いずれにせよ、抑制は可能のように思える。
 気になるのは、現状、イタリアとフランスのように天井突き破りでなければ、2.5のあたりに、ピーク地点があるかもしれない。というか、それがピークなのか、というのが、今後、興味深いことだ。仮に、そのあたりにピークがあるなら、日本での死者はまだまだ増えそうだということにもなる。そしてそうなら、それが爆発的な増加になるかだが、イタリアやフランスでの急増に医療体制崩壊という要因が強いのであれば、日本の体制はまだ強固であるようにも思える。
 さて、何が言いたいのか? いや、特にない。お前は危機感がないのかというと、経済的な危機感はあるし、外出自粛についても欧米を見ているとそれもありかなと同意はする。ただ、危機を、緊急事態宣言やロックダウンの文脈で語るなら、もう少し先になりそうだなという印象を持っている。
 というわけで、経済的な影響面からすると、米大統領や仏大統領が「戦争」のレトリックで語っているように、戦時経済的な様相にはなりそうだ。そうであれば、戦争の歴史を省みると……まあ、これもいろいろ思うことはある。このまま日本の感染状況が推移すれば、第二次世界大戦というより第一次世界大戦に近い状況下かなあ、など。ただ、それについても、現状まだ言えることはなさそうだ。

 

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