[書評] 妻のトリセツ(黒川伊保子)
そういえば、『妻のトリセツ』という本を読んだ。特にブログに記すような内容でもないが、逆に言えば、まさにブログのネタになるような話題でもあるかもしれない。
どういう本かというと、釣りはこう。
いつも不機嫌、理由もなく怒り出す、突然10年前のことを蒸し返す、など、耐え難い妻の言動…。(中略)
脳科学をベースに男女脳の違いからくる夫婦のすれ違いを紐解き、奥様の考えていることや行動の理由をズバリと解析。それに対してどのような言動をとれば、奥様にとって最愛の夫でい続けることができるのかという具体的な作戦を提示する、夫のための奥様攻略本。世の中の「奥様が怖い」と思っているすべての夫が、家庭におだやかな愛を取り戻すための実用書である。
私も妻帯者であるが、幸いにして、そういうニーズはない。ではなぜこんな本を読んだのか? こんな本というのは、率直に言って、「脳科学をベースに男女脳の違いからくる夫婦のすれ違い」という時点でニセ科学と言っていい内容であるし、読後、まあ、それを再確認したのだが。
読んだのは、売れているみたいだし、なんとなく関心があったからだ。もうちょっと言うと、自分も老年期と言えそうな年齢になり、子供も次第に成人になり、家族ってどういうものなんだろうか普通は、と思うのだが、その「普通」という感覚がよくわからないのだ。
でも、それなりに世間を見渡すに、本書が売れそうなニーズが見えないでもない。
あと、もう一つ、アニメのパラレルワールドではないが、別の人生だったら、自分はどうだろうか? ありそうなのは、独身で子供もなく老人化している自分であるが、他に若い日の恋愛の延長で結婚とかしていたら、それはそれなりに不幸であっただろうし、まさに、「いつも不機嫌、理由もなく怒り出す」女性と人生を過ごしていたかもしれない。
読んだ。どうだったか?
書き下ろしというより、出版社の規格で実質ライターさんが書いたものらしく、構成がよくできているし、読みやすい。そしてなにより、面白かった。科学的な根拠とやらや疑わしいが、「取説」というだけのことはあるなと思った。
私は「恋愛工学」とかまったく知らないが、既婚者の妻の取り扱いもだが、未婚者の男性にとって女性の実践的な対応のヒントはいろいろあるなと思った。というか、それなりに、反省するところはあった。どこがと書くのは避けたいものがあるが。
それと、あーなるほどなあと思ったことがあった。「名もなき家事」という概念である。
世の中、30代以下だろうか、若い世代の日本人はけっこう男女平等意識が行き届いていて、家事なんかもそれなりに夫婦で分け持っているようだが、それでも、そういう目に見える家事のほかに、本書は「目に見えない家事」があるというのだが、ああ、これはまさにそうだろう。ごく簡単な例でいえば、備品管理だろうか。洗剤がもうすぐ切れそうだなとか。子供が散らかした衣服を定位置に戻すとか。昭和の言葉で言えば、「気働き」にも近いかもしれないが、家事というのは、けっこう見えない部分で成り立っている。ところが、いわゆる夫婦で分担する家事というのは、見える部分の負担になる。この負担はけっこう大きいし、率直なところ、夫は気が付かないだろう。洗剤が切れて困っているならコンビニで買えばいいじゃないか、くらいしか思ってない男性は多いだろう。これは、妻が切れて当然だろうなと。
著者の主張としては、夫婦関係で改善できる部分は改善して仲良く夫婦老年期を迎えるといいというコンセプトなんだが、大局的に見て、そうとも言えるし、そうでもないかもしれないというのはある。
まあ、そういう生き方に関わる部分とかとは実際には関係ない書籍ではあるが、人生の大事というのは些事から成り立っているとも言えるので、まあ、なんとも。
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