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2019.12.03

[アニメ] 俺の妹がこんなに可愛いわけがない

 アニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を見た。実は、以前も2話くらい見て、関心ねーと放置していたのだった。まずもって、妹ものに私は関心ないし、2010年のアニメということもあって、絵が古い感じがして苦手だった。それに最初は、花澤香菜さんも早見沙織さんもそれほど活躍してないし。
 で、とくに理由もないのだが、見始めた。あれ? これは、そーとーに面白い作品なのではないかと思っているうちに、するすると4話くらい見て、うーん、これだとコンプリートしそうだなと思い、その先の様子をざっと見るに、2期ある。ラノベ原作で2期だと、完結部分はラノベで読むしかないだだろうなと思いつつ、全体構成を見ると、奇妙なことに気がつく。
 1期のエンドが、Good End で、アニメのオリジナルっぽい。で、これには別途、True Endがある。じゃあ、その後者のほうでと見ていく。面白い。
 まあ、あれだ、ゲームのように分岐になっているのだろう。実際そうだったが。
 2期はというと、これも、これもテレビ未放映、3話がある。もちろん、そっちも続けて見た。
 やったなあ。やっちまった。これはすごいと思った。
 それから戻って、Good End を見た。つまらん。

 以下、ネタバレ含む。

 放映後回でインセスト・タブーにがんがん打ち込んできたのは、想定外だった。いや、ぶっちぎれよ、と思っていたので、満足だった。
 自分には、インセスト・タブーに魅了される心性はまったくわからない。まず、自分に異性兄弟がなかった。実妹がなくてもロリ傾向とかある人もいるが、それも自分にはない。末子に娘がいるが、子どもたちの関係にもそれっぽいものはない。とはいえ、ニーベルングの指環やゲースロ、吉本隆明の共同幻想論を持ち出すまでもなく、ここが人類にとって急所であることはわかる。
 個人的にインセストには魅了されないが、そうした幻想を描く、妹エロゲーがあることも知っている。で、このアニメもそういう作品なのかというと、明確に違う。インセストに魅了されることが目的ではない。うえに、タブーは一般常識的に織り込まれている。
 にもかかわらず、義妹エンドとかに逃げずに、兄妹婚へぶっちぎったのは、なんだろう、作品的にすげー快感だった。もちろん、さすがに完全に振り切るわけもいかず、兄妹婚はモラトリアム化されるとして逃げてはいる。だが、成人してインセスト関係を持つことにはなるだろう。
 そもそも、なぜ同性愛婚はOKの世の中になったのに、兄妹婚はいけないのだろうか。原理的に考えるなら、それの禁忌も外されるべきだろう。兄妹婚で生まれた子供も社会的に受け入れていくべきだろう。では、さらなるインセストはというと、それも原理的には許容されるべきものなのではないか。
 そうしたインセストへの抵抗は、幼馴染の田村麻奈実との決裂でよく描いていた。あれは本当によかった。
 では、普通に恋人関係との対応ではどうか。ここは、黒猫がよく描いていた。花澤さんの演技が最高だった。個人的には、いわゆる頃猫エンドを期待したいし、分岐として、『俺の後輩がこんなに可愛いわけがない』も読んだ。読者ニーズとしてあっていいが、このエンドは、率直にいって、つまらなかった。恋愛の情感がインセストの情愛に負けていくという心性には、インセスト自体の怪しい魅力以上のものがあることを再確認した。
 他に、後輩ラブ的な話もあったが、作品の本質からすれば、それらの恋愛的な情感は雑音に近いのではないか。
 それにしても、これだけインセストにぶっちぎった作品であり、エロ要素もあるにも関わらず、実際の性愛を引き寄せる力はなかったことも考えさせられた。
 現実の世界で、人の心性をインセストから引き離すには、具体的なエロスの関係なのではないだろうか。親愛とか愛情とか、そういう情感はつまるところインセストに落下するだろうし、しかたがないことだ。もっと強烈なエロスが、インセスト・タブーを再構成できるだろう。
 結局のところ、黒猫の敗北というか、予想された敗北も、黒猫が桐乃に寄せる同性愛的な愛情だったのだろう。
 むしろ、桐乃自身のなかに、インセストを超えたエロスの方向があり、それがこの時点の心性では、エロゲーに暗示されていたのだろう。
 だいぶ、はしょって書いたが、やってくれたなあこの作品と思った。
 アニメは原作をカバーしているが、原作にはまた違った魅力もあるだろうとは思うが。声優の演技は逆にそこにはない。

 

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