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2019.11.03

犬とすれ違う

 それは正しいことでも悪いことでもないのだろう。早朝、まだ人が多くないころ、私は散歩がてら朝食を買いに細めの歩道を歩きながらコンビニに向かうときだった。
 向かいに犬を連れて散歩している、40代くらいだろうか男の人がいた。こちらに向かって歩いている。細めの歩道なので、犬を連れてゆったりという幅である。このまま進むと、そう、物理的にこのまま進むと、私はその人と犬の中間にあたり、引き綱に絡まることになる。いや、物理的にそうなることはないだろう。対人行為である。向こうの出方というのもあるだろう。いやいや単純に、これは、誰かが道を譲るということになるのだろうな、と思った。
 で、思ったのだった。この状況で、誰がどう道を譲るのだろう?
 瞬時にいくつか解答パターンが思い浮かんだが、この状況でどうなるのかということの知的関心に私はとらわれた。どうなるんだろう? 例えば、私がこのまま物理的的に直進したとしたら?
 当然、相手が私も直進歩行に気がつく。よしよしと思うが私はそうした思いが気取られないようにぼんやりとしているかのように歩き、頃合いで相手をさっと見ると、彼は道を譲った。礼儀正しい人なのだろう。ただ、その譲り方が少し奇妙だった。彼は犬のほうに体を寄せたが、犬は物理的に闊歩しているのである。この状況は、彼が犬に礼儀正しく行動したと解釈もできないではない。いや、もちろん、そんなことはない。考えすぎだ。犬には人間の礼儀が通じないから、人間が動いたというだけなのだろう?
 ここで、私は、ふと、あれ?と思ったのだ。
 私はその犬に配慮すべきなのだろうか?
 市民のあり方としては、彼は犬を寄せるべきなのではないか? 
 いや、寄せた犬のほうに他者が通ると犬が向かいの人に接する可能性がある。だから、ここは人が身を寄せるというのは正しい行動だろう。
 だが? 原理はそうだとして、この状況では、彼の身の寄せ方は私への配慮とういより、犬への配慮のように見える。この場合は、犬とともに彼が身を寄せる。そして、そのことを犬に教えるようにするべきなのではないか? まあ、それが正しいとか正義とかは思わないのが、そういう可能性を彼は考えるべきというくらいはいえるのではないか?
 それと、彼が寄せた方向は車道側ではなかった。私が視覚障害者なら危険なことになりうるなあ。
 で、私はどうする?
 ぼんやりげなふりの私は、相手が身を寄せたことに対応して、少し反対側の歩道側に寄せる。少し。つまり、このままいくと、肩くらいはぶつかるくらい。まあ、直前になったら、私は車道に気をつけてもう少し肩をそらそうと思う。
 歴史はどう動いたか?
 彼はもう少し犬側に体を寄せた。犬も闊歩の方向を変えて主人と同じように寄せた。犬だって賢いからな。
 という状況を見て、私は軽い会釈をして肩に触れることもなく、すれ違った。

 

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