なぜ、"How do you do?" と言うのか? (あるいは言わないのか?)
なぜ、"How do you do?" と言うのか? あるいは言わないのか?
「言わない」ほうについては、ネットを引くといろいろ情報が出てくるようだ。「ようだ」というのは、この件について、どの情報が情報と言いうるかよくわからないからである。とはいえ、概ね、現代英語では、"How do you do?"とは言わないと言っていいだろう。それはなぜか? というと、古めかしい英語表現だから、というのがとりあえずの答えになる。日本語なら、「お目にかかり幸甚でござる」とまではいかないか(ちなみに、こんな古語はないだろうけど)。
いずれにせよ、古臭い印象は与えるだろう。上流階級の挨拶を模したジョークになってしまうかもしれない。
普通なら、”Nice to meet you.”、”I’m happy to meet you.”、少し固くても、"Pleased to meet you."あたりだろうか。
とはいえ、である。
"How do you do?"と言っちゃいけないというわけではないし、上流階級的な響きがあるにせよ、この表現は正しい英語であることは間違いない。しかも、"How do you do ma'am? Camilla greets Queen with curtsy."というのは、「自然」な表現だろう。
では、なぜ、"How do you do?" と言うのか? これにきちんとした答えは、なかなか得られないのではないだろうか。ネットをざっと見てもなさそうに思えた。ありますかね?
で、私のような昭和の人間は、英会話で、"How do you do?" を習った。一応と言うべきかも知れないが。で、なぜそう言うのか説明はなかった。挨拶言葉で、慣用表現だから、なぜとか考えるんじゃねー、ということなのだろう。
それでも、日本語の「はじめまして」なら、「初めまして」ということで、古臭いにせよ、初めてお目にかかりますという意味は連想される。
そうして、"How do you do?"を考えると、これ、普通に正しい文法で、普通の英単語で、しかも、普通の文法で書かれているのだから、慣用表現としてではなく、普通に訳せるわけである。むしろ、普通に訳してみて、そこから慣用表現へ橋渡して考えるべきだろう。日本語の「さよなら」も、「左様ならば」で、「そのようであるならば、またの機会に」といったふうに考察できる。
では、"How do you do?"を普通に訳してみよう。
"How do you do?"
どのようにあなたはするのか?
How do you do?
Well, just other people do.
これは、どう考えても、変?
というわけで、私は半世紀疑問に思っていたのだが、『ロマン語』(W.D.エルコック)を読んでいたら、理由が書いてあった。
英語は中身においてゲルマン語であるが、古フランス語を非常に強く暗示する言い回しを多く持っている。最も普通の挨拶、How do you do? はアングロサクソン語の立場から判断すれば、聊か奇妙であり、How do you fare? の上に重ねられた古フランス語 Comment le faites vous ? の翻訳らしい。動詞 fare の”行く”はフランス語の faire ”する”と混同されたため do に置き代えられたのである。
John Orr, The impact of French upon English
A. A. Phins, French influence in English phrasing
なお、引用部のfareの動詞のところだが、ドイツ語勉強した人なら自明だが、ドイツ語の動詞 fahren に関連する言葉である。
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