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2019.10.21

血液クレンジングとリスク・コミュニケーション

 ネットで、「血液クレンジング」が話題になっていた。血液を一旦抜き、処理し、再び体内へ戻すという治療法である。血液を濾過するという医療はあるが、話題になっているのは、オゾンを加えて戻すというもので、アンチエイジングを狙っている。老化防止や疲労回復、がんやHIVなどの病気にも効果があるとうたっているのだが、話題になったのは芸能人や、インフルエンサー(影響力のある人)が体験して、広めようとしていることだ。端的に偽医学と言ってよく、こんなものを社会に広めるというのは間違っているので、ネットでも反論から攻撃が頻繁に見られた。
 健康にまつわる偽医学は多いのだが、この「血液クレンジング」は高額だし、効果もないどころか、身体を害する可能性もある。しかも、医療機関がそれを行っているということで、いろいろ問題が多い。批判も当然だろう。
 ただ、ネットでは批判から、これも当然というべきか、攻撃に転化する。
 「血液クレンジング」は効果はなく高額なのでいずれ消えていくだろうと思うが、偽医学や間違った医学知識のようなものはネットに多い。正しい情報で対抗すべきだろうとは思うが、これをコミュニケーションとして見たとき、効率的なのだろうかと疑問に思えた。特に、リスク・コミュニケーションと見たとき、どうなのか?
 リスク・コミュニケーションについては、経産省に専用のホームページがある。そこで、リスク・コミュニケーションとは、という項目を見ると、こうある。

 安全など事業活動にかかわるリスクは、少ないことが望ましいのですが、リスクをゼロにすることはできません。このため、上手にリスクとつきあっていくことが重要になります。特に、多種多様な化学物質を扱っている事業者は、そうした化学物質の環境リスクを踏まえて適正な管理を行うことが重要です。
 そのためには事業者が地域の行政や住民と情報を共有し、リスクに関するコミュニケーションを行うことが必要になってきます。これがリスクコミュニケーションです。

 ここでは、「血液クレンジング」といった偽医学・医療は含まれていないと見ていいだろう。そもそも経産省なので、厚労省に関わる部分は出てこない。というか、そもそもリスク・コミュニケーションで、こうした偽医学・偽医療を扱うべきではないのか?
 リスク・コミュニケーションを包括的に扱うことで定評のある”Risk Governance: Coping with Uncertainty in a Complex World”では、リスク・コミュニケーションの第一歩を正しい知識の伝達として捉えていた。

 

 正しい知識を伝達することで、社会のリスクを減らすというものである。「血液クレンジング」などの偽医療への批判はこれに含まれるだろう。だが、同書では、そうした手法が効果的ではないどころか、反発を受けるとしている。
 次は啓蒙の一貫ではあるが、説得という手法が取られた。ただ知識を伝えるのではなく、伝えるべき相手を考慮して、受け入れやすい知識にするというものである。これも、概ね失敗した。そもそも受け入れ側に、受け入れがたい利害の背景などがあった。
 そこで第3の展開として、信頼関係が問われるということになった。いかに信頼関係を構築するかということだ。
 そこで、もういちど「血液クレンジング」に振り返ると、著名人やインフルエンサーのほうが、これに騙される人と信頼関係を築いていることがわかる。効果的なリスク・コミュニケーションは彼らのほうが取っていたという矛盾したことになっている。
 とはいえ、リスクを招きかねない状態に対するリスク・コミュニケーションとしては信頼を基本としていくしかないのだが、SNSでどのようにそれが促進できるのだろうか? 
 できないから、今日の事態になっているとも言えるのだろう。というか、SNSではない、情報と信頼の関係をどう築いたらいいのかという問題なのだろう。

 

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