サウジ石油施設攻撃について
14日、サウジアラビア東部にあるサウジアラビア国営石油会社サウジアラムコの石油施設の2カ所がされた。この事態は日本でもすぐに報道されたが、その後の経過や意味、解説について、週末と連休を挟んでいるせいか、国内の報道は薄い。NHKでも断片的であり、何より報道ソースをCNNやロイターに頼っている。他、大手新聞社の報道も薄い。共同もロイターを孫引きでしか伝えていない。この状態はすでに日本の報道の危機とも言えるだろう。現状、日本国内での実質的な報道は、海外報道社の日本語版によるものか、あるいはヤフーブログで識者とされるブロガーのコメントが目立つくらいだ。が、ブログという建前からは通常のブログ同様、恣意的なものにならざるを得ない。私の記事もそうした恣意的なものではあるが、今後さらに懸念される事態にもなりうるので言及しておきたい。
一番の懸念は、端的に、戦争である。米国とサウジアラビアが組んでイランと戦争を起こす懸念である(イラクも微妙に関連している)。トランプ米大統領のツイッターを追っている人なら知っていると思うが、"we know the culprit, are locked and loaded depending on verification(私たちは、検証に基づいて、犯人を知っているし、銃には弾が充填されている)"として、犯人としてイラクをほのめかし、"locked and loaded"として武力行使をほのめかしている。もっとも現状はまだほのめかしによる牽制であるが、イラン側でも戦争の用意はできているという声明も出ている。
二番目の懸念は、原油市場の動向である。高騰も懸念されはする。ただし、今回の攻撃の規模は小さく、完全な回復までには数週間を要するとしても、世界の石油市場に大きな影響は与えない。それでも石油施設の脆弱性が顕になったことから、リスクのプレミアムで原油価格が上昇してくる。ただし、その結果は必ずしも世界経済への悪影響ばかりとも言い切れない面もあるだろう。
現状では、戦争が迫っているというほどでもなく、原油市場が大きく荒れるという予想も弱いので、日本の報道社のように、それなりに安閑としていてもいいのかもしれない。
さて、これはどのような事件だったのか。詳細はどうなっているか?
残念ながら、攻撃実態については、国際的にも明らかにされていない。米国とサウジアラビアが情報を十分に開示していないせいだ。ゆえに、その理由はなぜなのかが問われてくる。なお、これに若干イラクも関連している。
まず、前提として疑問を呈しておくべきことは、今回の攻撃の背景にイランがいるかについだ。意外にも、ポンペオ米国務長官ですら、イエメンからの攻撃だという証拠はない言明している。が、イランの仕業だともしている。余談だが、これもツイッターでの発言がもとになっている。ツイッターが報道を出し抜く構造は定着している。いずれにせよ、米国としては、今回の事件の背後にイランがいると断定しないことに含みを持たせている。また、このため、日本の報道社ではNHKも含めて親イラン的な論者を抱えていることから、この部分での解説が弱い(米国非難の基調が日本人受けするせいもある)。だが、特にNHKは、今後の事態の推移の可能性を踏まえ、イラン側に親和的な傾向の自覚をもち、それ以外の論者とのバランスをとっていったほうがよいように思われる。
次の疑問は、なぜサウジアラムコの石油施設がそんなに脆弱だったのか?である。攻撃は予想されていなかったのか? そもそもサウジアラビアの防空警戒態勢は発動しなかったのだろうか? これには関連する疑問が続く。攻撃はドローンと言われているが、実際の兵器はなんだったのか。すでに、攻撃に失敗した兵器はサウジアラビアに回収されているので、研究はされている。ここで余談だが、サウジアラビアは近年、対イラン政策でイスラエルと実質に同盟にも近い連携をしていていて、こうした技術解明には米国に加えイスラエルも噛んでいる。さらに余談になるが、サウジアラビアは国内の弾圧のための情報システムをイスラエルにアウトソーシングしているようでもある。それ自体が深刻な問題でもある。
3番目の疑問は、攻撃のタイミングの意味合いは何か?だ。フーシ派が攻撃の新能力を急いで誇示したかったという考えは稚拙すぎるだろう。普通に考えれば、イランから米国へのメッセージだと見てよく、タイミング的にはボルトン補佐官の解任に関連しそうだ。が、そこからどういうメッセージを読んでよいかは、いまひとつ、よくわからない。加えて、もう一つのメッセージの対象は、EUと日本だろう。EUと日本が、戦争を回避するために米国から距離を取ればイランにメリットとなる。特に戦争を嫌う日本の国民性はイランが上手に活用できる。
陰謀論めくがもう一つ気になっていることがある。この脆弱性はサウジアラビアと米国の罠なのではないだろうか? 米国が本格的に戦争に突入するためには、真珠湾攻撃のような事態を演出する必要がある。ただし、それならまさに青天の霹靂ではいと効果は薄いだろう。とはいえ、今回の事態で、この間、実現が取り沙汰されている米国とイランの直接首脳会談をトランプ大統領側から体よく否定することはできた。
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