香港はどうなるか? 2019年夏
香港の民主化デモの勢いが止まらず、8月12日には香港国際空港が閉鎖された。この事態はどうなるのだろうか? 少し考えてみた。
最悪の事態は天安門事件の再来
まず、最初に考えるべきことは、最悪の事態である。これは、意外なほど明確だ。天安門事件の再来である。つまり、軍が動いて民衆を虐殺することである。
日本を含め、世界の側としては、なによりも、この最悪事態を避けるために、尽力しなければならない。
ということは、民主化デモを支援することと、最悪事態の回避は、状況によっては分離して考えなくてはならない局面がありうる。
レッドラインはどこにあるか?
最悪事態である中国の軍による民衆虐殺が発動する限界としてのレッドラインはどこにあるか?
これも意外に明確である。香港の独立である。
問題は、「香港の独立」がこの状況で何を意味するか?ということだ。
これは、香港特別行政区政府が市民側に立って独立を宣言することだ。
だが、香港特別行政区政府の独立が可能か? シンガポールのように主権国家たりうるか?といえば、無理だろう。
少なくとも、香港特別行政区政府の行政府長官が民主化デモ側につくことは、レッドラインに近づくことだ。
香港行政長官が民主化デモ側に折れるとどうなるか?
中国軍が天安門事件のように民衆虐殺を即座に開始するのではなく、おそらく中国側の軍によるクーデターが発生するだろう。そして、新しい行政長官の下に組織的な武力による市民弾圧が始まるだろう。
これは、今回の事態の収束シナリオとしては、けっこうオッズが高い。
しかし、香港行政長官が民主化デモ側に折れないオッズのほうが高いだろう。その場合でも、より見えにくいかたちでクーデターが実質されるだろう。こちらがさらにオッズが高い。あるいは、ほとんど見えない形のクーデターとなるかもしれない。
その線でいえば、香港民主化デモは、それ自体の世界史的な意味あるとしても、デモとしては今回は失墜に終わるだろう。残念ながら、いちばんありそうな予測はここになる。
その対極の勝利ラインだが、元来の一国二制度の確認だろう。もともとここが国際的な基準なので、ここに落ち着けばよい。が、オッズはあまり高くない。
香港民主化デモへの対処を決定している中国権力の中枢は何?
中国共産党の最高決定機関は当然、党大会である。だが、開催は5年に1度なので、その間は、党大会で選出された各年の中央委員会の全体会議である全会が実質の最高決定機関になる。
ここに今異変がある。3回目にあたる昨年3月の三中全会以来、4回目の四中全会が開催されていない。
おそらく、香港民主化デモは四中全会の空白に対応している。
では、全会空白の背景で中国中枢権力はどうなっているのか?
ここを埋めるのが、北戴河会議である。習近平主席など現役中枢と長老とされる人たちが河北省、渤海湾に面したリゾート地で行う密室会議である。これが8月初旬に実施された。
おそらくここで、レッドラインとその近接の段階が暗黙に合意されただろう。
できれば、権力者らも市民虐殺を避けたいと考えるだろう。理由は人道的な意味ではなく、権力者としての瑕疵となるからだ。
なお、北戴河会議の中心の課題は、米中経済戦争だっただろう。この対処に誤り、国内経済を失速させると、党自体の正当性が危ぶまれる。
香港民主化デモの本質はなにか?
ここで、あらためて中国共産党政府側から見た、香港民主化デモの本質を考えてみたい。それは、中国の分断の阻止であり、台湾統合が重視されるはずだ。
極論すれば、香港の重要性は台湾にかなり劣る。
つまり、今、中国政府に問われているのは、台湾統合(実質攻略)という大きな絵である。
中国はこの10月1日には建国70周年を迎える。これをつつがなく遂行するのが習近平の課題でもあり、そこまでには国内問題のすべてが抑え込まれるだろう。
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