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2019.08.02

日韓の軋轢で、韓国はどうすればよいのか?

 日韓の軋轢で、韓国はどうすればよいのか? 残念ながら、私には、なんのアイデアもない。
 理由は簡単で、日本のリベラルな知的空気では、日韓の軋轢については、過去の経緯を見てもそうだが、日本が無限に譲歩すべきであって、韓国側がどうすべきかということは問えない、と感じているからだ。
 そして、私はその知的空気に抗う意見があるわけでもない。メリットも気力もない。しかたないなあと思うくらいだが、さて、この問題を国際的な視点から見ると、どうなるのだろうか。そんな関心で、つらつら、英米圏のメディアを見ていて、ふと、こういう考えは、日本の知的空気のなかでは、なかなか出せないかなと思う意見があった。Diplomat誌に掲載された”What's Driving Japan's Trade Restrictions on South Korea?”というコラムである。執筆者は、MITで政治学でPh.D課程にあるMina Pollmannという若い女性である。論調は、概ね、MIT政治学の気風から離れたものではないだろうとは思う。
 Diplomat誌側の編集の基調は、表題からもわかるように、日本政府側の苛立ちであり、輸出管理が事実上の規制であるという、おなじみの視点だ。またこれか、という印象だが、韓国がどうすれば日本は落ち着くのか?という問題設定があった。別の言い方をすれば、日韓の軋轢で、韓国はどうすればよいのか?とも言える。で、これは、記事の執筆者の意見ではなく、多摩大学ルール形成戦略研究所(CRS)のブラッド・グロッサーマン副所長の考えを参照したようだ。彼の記事は、東洋経済などに掲載されることがあるので、なにか関連した日本語記事があるかとざっと探したが、わからなかった。
 で、グロッサーマン氏は、日韓の軋轢で、韓国はどうすればよいのか、4つの手順を示していた。

1 現在の政治課題に歴史問題を持ち出さないこと

First, at the most basic level, Moon and the progressive left have to stop using historical issues as a contemporary political issue. Moon needs to demonstrate the kind of leadership Kim Dae-jung did in 1998, publicly committing to a “forward-looking relationship.”

第一に、もっとも基本的なレベルのことだが、文政権と急進左派は、現在の政治課題に歴史問題を使うのをやめなくてはならない。文在寅は、金大中が1998年に行ったような、「未来志向の関係」に公式にコミットすることで、ある種のリーダーシップを発揮する必要がある。

 まあ、無理なんじゃないだろうか。朴槿恵はその方向に舵を切って惨事になった。文在寅にそのようなリーダーシップを期待することは不可能だろう。ということで、もっとも基本的なレベルで、まあ、だめだろうなという思いが先に立つ。
 ただ、ここで、金大中を例示するのはよい示唆のようだが、逆に言えば、もはや金大中的な政治は不可能なのだろう。

2 日韓基本条約と日韓請求権協定を受け入れること

Second, Moon’s administration would have to accept the binding nature of the 1965 normalization.

第二に、文政権は1965年の正常化(日韓基本条約と日韓請求権協定)が拘束力をもっているという性質を受け入れなければならない。

 これが、そもそも無理なんだろうというが現下の問題の発端でもある。ただ、韓国側での言い分があれば、日韓請求権協定に基づき日本政府が韓国側に求めた仲裁委員会設置に関する手続きを行うべきで、韓国側のこの不履行が、日本側から国際法違反とされている点だ。
 なぜ、仲裁委員会を韓国が拒むのかについては、率直なところ、よくわからない。この案を持ち出す時点で、グロッサーマンも理解できていないのだろう。

3 韓国内の日本企業の資産が没収されないよう政治判断せよ

Third, regarding the court decision on individual victims of forced labor, the Moon administration can accept the legal process as having been completed, but make the political decision to not enforce the decision, to protect Japanese company assets in South Korea from expropriation. Moon can make this decision on the basis of South Korea’s “national interest” in maintaining positive relations with Japan.

第三に、元徴用工の被害者個々人についての大法院の判決に関して、文政権は、法的手続の完了を受け入れつつも、韓国内の日本企業の資産が没収されないよう、判決を執行しないという政治的決断を下すことができる。文政権は、韓国の「国益」に基づいて、日本との前向きな関係を維持しつつ、この決定を下すことができる。

 この指摘は、私には少し意外だった。三権分立だからこそ、行政府は、司法を尊重しつつも、行政的な執行の可否の権限を持つ。だから、この問題でも、文政権が政治判断ができるということはわからないでもない。韓国は日本とは異なり、米国のような大統領制を取っているのだから、法の執行について行政府の拒否が可能になのだなと感慨深く思った。この点、原理的には日本も三権分立だが、行政府は議会に載っているで、そこまで強い権限は持ちにくいだろう。

4 戦略物資の輸出管理厳格化を公言する

Fourth, South Korea can withdraw the WTO case and make a commitment to addressing Japanese concerns about sensitive materials reaching North Korea via South Korea.

第四に、韓国はWTOでの訴訟を取り下げ、韓国を経由して北朝鮮に到着する戦略物資についての日本の懸念に対処するとした声明が出せる。

 この点については、私も同じことを思っていた。今回のホワイト国除外についても、韓国側から、戦略物資の輸出管理厳格化の計画線表でも日本政府に提出されれば、現下の緊張は一気に溶けるのにと。
 韓国としては、戦略物資の輸出管理には問題がない、か、あるいは、問題があっても、日本に関係ないということなのだろうが、さすがにそれはむちゃだろう。

 



 さて、こうした4点の提案だが、当初、これは無理だよなと思ったものだが、見直してみると、1から4に向ける手順ではなく、4から1に向ける手順としては、けっこう優れているのではないかと思えてきた。
 その順でまとめるとこうなる。4点目は以下の手順に含まれるだろうから、3点になる。

  1. 戦略物資の輸出管理を行う計画書を日本政府に送る
  2. 韓国内の日本企業の資産没収は執行を停止すると公言する
  3. 日韓請求権協定に基づき仲裁委員会を設置する

 これで、日韓はまとまりそうな気がする。
 それでも、文政権では動かなさそうなので、次回の大統領選挙である2022年まで待つしかないだろう。次政権で、上述のような動きが出ればいいが、結局、そこがわからない。しいていえば、無理だろうな。

 

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