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2019.08.13

インターリングワ(Interlingua)への興味

 インターリングワ(Interlingua)という人工言語に次第に興味がわき、いろいろ調べていた。普及協会などもあり、それなりにまとまった情報もあるのだが、一人の人の観点からのまとめが知りたく、Stanley A Muaik著”Interlingua Grammar and Method Second Edition: For the Use of the International Vocabulary As an International Auxiliary Language and to Increase Your Word Power”という本を買って少し読み始めている。想像以上に面白い。

 


 インターリングワについては、日本語のWikipediaにもそれなりの情報がある。インターリングワについて一般的に知りたいというなら、それで十分かなとも思わるが、前述書を読んでみると、細かいところ、例えば、発音や、正書法、形容詞の扱い方で詳しい説明がある。
 私は若い頃、エスペラントに興味をもったことがある。大学書林の『エスペラント四週間』で学んだ。

 

 与えられたレッスンを終えてみると、さすがにこれは人工言語だなという印象と、意外に音の美しさに心惹かれた。創始者ザメンホフというのはある独自な天才だったのだろうと思う。他に、英文法学を学んだおり、イェスペルセンに傾倒したが、彼も人工言語を作っている。数学者ペアノも簡易ラテン語を作っている。ある種の言語マニアは言語を作りたくなるもので、トールキンやGOTいい例だが、ファンタジー系だとつい作ってしまう人がいる。これなども参考になるだろう。

 

 インターリングワをあらためて見直してみると、そうした人工言語とは極めて異なることがわかった。むしろそこが面白い。
 Wikipediaをそうした観点から見ると、創始者について明瞭に書かれていない。いちおう言語学者・翻訳家のアレクサンダー・ゴーデ(Alexander Gode)が出てくるが、創始者というトーンでは書かれていない。
 実際のところ、ゴーデはインターリングワを創始した意識はないようだ。彼が行ったのは、ロマンス語系の主要な言語の語彙を調査し、そこから共通性を整理したようだ。具体的には、イタリア語・スペイン語・ポルトガル語、フランス語、英語の語彙を整理し、ラテン語由来とするのに向いた祖形(プロトタイプ)を再構成し、これに簡易な文法特性からさらに再構成した。
 例えば、ラテン語の聖体賛美歌、Ave verum corpus(めでたし、真の御体)にも出てくるcorpusは、英語ではbody、イタリア語ではcorpo、スペイン語ではcuerpo、ポルトガル語ではcorpo、フランス語ではcorps。ここからインターリングワでは、まず、現状の同語源の分布を見て、ラテン語の斜格から祖形をcorporeとする。ここで私は仮に「祖系」としたが、当然ながら、歴史言語学での祖形ではない。むしろ、俗ラテン語を再度整理し直して、リンガフランカを再構成しようというわけである。
 そんなことに意味があるのか? というと、ゴーデはそうすることで、ロマンス語国民が理解しやすくなるとしている。
 だが、すぐに異論が浮かぶだろう。corporeは英語のbodyとは違い過ぎている。だが、ここで先の著者は、corporal、corporeal、corporalityといった英語語彙を示す。英語話者にとっても、corporeの知識が有益だというのだ。そこで、同書には、”to Increase Your Word Power”と副題にしているわけだ。
 これには説得力があるだろう。英語学習者も、だいたい、語彙が8000から10000になると、ラテン語由来の語源のある程度体系的な知識が要求される。
 話を戻すと、インターリングワの本質は、この有用的な祖形再構成にあり、ゴーデの言語学的な知見がここに生かされている。
 と、同時にこうした性格をこの言語が持つのであれば、時代に合わせ現代的な変化も必要となるだろう。このあたりの言語変化の取り入れも興味深いところだ。
 文法に関しては、表面的にはかなり素朴であり、人工言語らしく動詞の活用形は機械的に整理されているが、 エスペラントのような統一はしていない。-ar、-er、-irが残っている。つまり、インターリングワはほとんどイタリア語そっくりなのである。というか、イタリア語を整理すればインターリングワになりそうにも思える。前置詞と冠詞の縮約などもイタリア語に似ている。そもそも、私がインターリングワに関心をもったものも、これは、一種のイタリア語ではないかと思えたからだ。

 

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