最近ニュースになっていた「あおり運転男」はニュースの価値があったのだろうか?
世間を自分の目で見て回ることには関心があるが、メディアを通して語られる世間のニュースにはあまり関心がない。さすがにそれでは生きにくいので、NHKの7時のニュースは見るようにしているが、それでも見るに耐えないニュースがけっこうある。事件被害者のプライバシーを延々とドキュメンタリー風に語るのとか。
執拗に出てくるニュースは意識にのぼる。最近でいうと、「あおり運転男」である。具体的には、18日に逮捕された、宮崎文夫容疑者(43)である。逮捕されて一連話題が終わっているのかもしれないが、このニュースに私はほとんど関心を向けてこなかった。今に至るも、これがなんでニュースだったのかよくわからないでいた。
振り返ってみる。現時点で探れる一番古いニュースは、これだ。
常磐道 あおり運転受けて殴られる 傷害などの疑いで捜査
2019年8月16日 16時22分
今月10日、茨城県守谷市の常磐自動車道で、24歳の男性が「あおり運転」を受けて本線上に停車させられたうえ、降りてきた男に暴行され、けがをしました。警察は傷害などの疑いで捜査しています。
警察によりますと、今月10日の午前6時すぎ、守谷市大柏の常磐自動車道の上り線で、24歳の男性会社員が運転する車が、白い乗用車から「あおり運転」を受けて走行を阻まれ、本線上に停車させられました。
乗用車から30代から40代の男が降りて近づいてきて、男性は「殺すぞ」などと脅された上、窓越しに顔などを数発殴られ、けがをしたということです。
これまでの調べで、男が乗っていた乗用車は、海外の高級メーカーのSUVと呼ばれるタイプで、横浜市内のディーラーから代車として貸し出されていた車だとみられています。
一方、ディーラーの関係者によりますと、この乗用車は先月下旬に貸し出されましたが、3日間の期限をすぎても返却されなかったため、催促した結果、事件翌日の今月11日に男とは別の人物が返しに来たということです。
警察はドライブレコーダーの映像を分析するなどして詳しい状況を調べるとともに、傷害や道路交通法違反の疑いで男の行方を捜査しています。
このニュースが初出かどうかわからないが。こうして振り返ってみると、なるほどねと今ならわかる気もしてきた。
このニュースだが、どこにニュース的な価値があるのか、まとめにあたる最初の段落だけ読むと、ただの茨城県のローカルニュースにすぎない。そもそも、このニュースの刑事的な側面は、「傷害などの疑いで捜査」というだけで、実は、あおり運転のほうは刑法上は重視されていない。傷害罪のほうは、15年以下の懲役または50万円以下の罰金ということで、懲役は長いこともあるが、罰金で見るとそれほど重い罪とも言い難い。というか、ニュースから伺い知るに、重篤なけがを負わせたようには見えない。傷害罪の量刑はけがの度合いによるので、この事例では処罰としては軽いのではないだろうか? いずれにせよ、刑法上はさほど重要なニュースとも思えない。
だが、この初出らしいニュースを見直すと、誘導している文脈が浮かんでくる。事件に直接ない情報が入ってることに気がつく。これだ。「男が乗っていた乗用車は、海外の高級メーカーのSUVと呼ばれるタイプで、横浜市内のディーラーから代車として貸し出されていた車だ」と。
そこがこのニュースの隠された主眼なのだろう。簡単に言えば、高級車に乗ると頭のネジが飛んでしまう危険なドライバーがいるでしょ、経験あるでしょ?ということなのだろう。
このニュースの関連で知ったのだが、この機にドライブレコーダーの売上が増したようだ。世間的には、つまり、そういう話題だったのだろう。高級車とかであおり運転するやつをよく見かけるようになったという世間の空気だ。そのなかで、この事例が象徴的だったということだろう。
加えて、続報を見るに、この容疑者のキャラが立っていたというのもあるだろう。文春の話では、関西の有名私大を卒業し、東証1部上場の超優良企業に就職していたという。なんだかそれっぽい小説に出てきそうだ。が、それって、すでにニュースの社会的な意義ではなく、一種のエンタテインメントだろう。このノリの上に、同棲相手やネットでの誤認騒動などもぶら下がっているのだろう。
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