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2019.08.05

映画 『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』

 映画『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』を今更見たのである。驚いた。傑作だった。見ながら感動もしたが、見終えたあと、身体の芯がしびれるような感動が襲った。
 世間的には、どっちかというと、不評でもあり、まあ、見る人を選ぶのかもしれないなとも思った。
 2017年3月18日公開のアニメーション映画である。同じくアニメーションとしてはその前年話題になった『君の名は。』と比較されてしまいがちではあるだろう。私もなんとなく比較したい思いがある。私としては、アニメーション表現としては、『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』がはるかに優れていた。
 物語は、女子高生の森川ココネの、奇妙におとぎ話めいた夢から始まる。目覚めた現実は、東京でオリンピックが開催される2020年。場所は、岡山県倉敷市・児島。田舎といっていいだろう。個人経営で自動車修理業の父親と2人で暮らしている。ココネは最近、よく居眠りをする。そして、不思議な夢を見るようになった。そうしたある日、父親が警察に逮捕され、東京へ連行された。なぜ? 彼女は、父を救い出すために、幼なじみの大学生モリオと東京へ向かう。冒険である。その過程で、彼女の夢が現実と重なり侵食を始める。
 夢と現実が切り替わる物語はそれほど不思議ではないが、夢が現実を侵食を始めていく表現は、アニメーションの特徴を活かしていて、なかなかに面白かった。また、現実もただのリアリズムではなく、なぜか自動運転が実現されているSF的な設定になっているのも楽しい。
 とはいえ、こうした仕立ては、少し見る人を選ぶだろう。また、アニメの絵のタッチだが、風景はリアリズムだが、登場人物は、ジブリ映画的に線の強調されたアニメであることが際立つ。構図と躍動は美しいが。
 この先はネタバレになりかえないが、ネタバレはしない。
 物語は、ココネの母の謎に迫っていく。ココネが幼いころに死んだ母である。彼女のこの世に残した願いが、物語を大きく捻じ曲げ、脚本が破綻しているのでないかと思わせるほどの展開をひきおこす。
 この物語は、奇跡の物語である。こうした奇跡は現実にはありえない。そもそも夢と現実は侵食も交錯もしない。が、私たちが生の経験のなかで受け止めている無意識の感触には、どことなく、奇跡の期待や信頼の芯をもっているものだ。おそらく、私たちは、そこで死者の思いとつながっている。

 

 

 

 

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