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2019.07.22

2019年参院選結果

 参院選の結果が出た。いろいろな観点からの分析が可能だろう。私としては、まず、できるだけ私見を交えない形で考えてみたい。特徴は3点あった。

① 歴史的な低投票率と過去最高の期日前投票
② 歴史的な女性候補比率
③ 意外性のなさ

① 歴史的な低投票率と過去最高の期日前投票
  投票率が48.8%で、1995年の参院選の44.52%に次ぐ低投票率となった。
 意味は、政治に対する無関心、または政治不信。これは相反するとも言えない。卑近に言うなら、「投票なんかしても政治は変わらない。投票なんて無意味」ということだ。
 が、他方、期日前投票者が1706万2771人と過去最高となった。当日の選挙にいかなくても投票先は決めているということだ。素直に考えれば、投票に関心を持つ人が増えたともいえるが、選挙期間で十分に政治言論を高め、候補者や政党を毎回選ぶということではなくなりつつある。思考実験的に期日前投票を拡張すれば、それが世論調査、とくに政党を決めている層に収斂する。投票という概念とは異なるものになるだろう。適切な期日前投票の期間は再考されていいだろう。なお、フランスにはこうした制度はない。
 あるいは、日本では、近代の普通選挙そのものの意味が変わってきたと言えるかもしれない。

② 歴史的な女性候補比率
 今回の参院選では、女性候補比率は過去最高の28.1%だった。女性の当選者が選挙区で18人、比例代表で10人、計28人となり、過去最多の前回2016年に並んだ。この一番の理由は、2018年に成立した「政治分野における男女共同参画推進法」の影響だろう。同法では、男女の候補者数をできるだけ均等にするよう政党や政治団体に求めている。
 他方、全当選者に占める女性の比率は22.6%なので、有権者の側のほうが、「政治分野における男女共同参画推進法」の意識に乏しい。これらは今後順次改善していくだろう。
 (なお、私としては、フランスのように憲法を改定して、パリテを明記したらよいと思う。)

③ 意外性のなさ
 人によっては今回の参院選に意外性を見る人もいるだろう。例えば、れいわ新選組からの身障者議員の登場や、ぎりぎりで政党要件を維持した社民党、また、NHKから国民を守る党からの当選など。ただ、どれも論者の立脚点によるもので、重要性の根拠が薄い。
 なにより、意外性のなさを際立てて凡庸な結果に見せるのが、政治ダイナミズムとなるような議員構成の変化がなかったことだ。自民党がしぶとく生き残ったことだと言い換えてもよい。
 自民党については、改憲勢力が削がれたとも言える。与党と維新党を含め、改憲を目指す勢力が参院全体で改憲発議ための3分の2の維持に必要な85議席を割り込んだ。これをもって、自民党の敗北と見る向きもあるだろう。が、改憲勢力は81議席あり、さらら他党を切り崩せば、85議席達成は不可能ではないだろう。
 むしろ、意外性のなさの根幹にあるものは、自民党自体がこの選挙結果を想定していたことだ。この点については過去の記事でも扱った。

自民党はどう日本を見ているのか?
 ここから私見を交えたい。
 自民党としては、比例での自民党支持と一人区での難しさを想定していた、ということはどういうことか。
 単純にいうと、自民党政治の、事実上の地方の切り離しではないだろうか?
 一人区での自民党の敗北(特に東北部の現職落選)は、その地域の反自民党意識と見てよいだろう。というのも、野党協調というのは、反自民票でもあると概ね言えるだろうから。そしてこれらの地域は、かつては自民党の票田だった。概ね、自民党への期待が裏切られたことの現れだろう。
 この地域分断に、世代間の分断が加わる。
 出口調査によると、年齢別の比例代表の投票先では20代と30代の4割超が自民党を選択している。さらに、共同の調査によると、18歳、19歳では、自民党支持が38.2%であるのに対して、立民党は10.8%とだいぶ差が開く。
 戯画としていえば、リベラルと言われる勢力は、地方の反自民の受け皿、および高齢者の政治不満の受け皿となっている。そして、この部分に対して、自民党は切り離しが次第に進んでくるかもしれない。

今後の政局について
 消費税がオンスケジュールになった時点で、日本の近未来は暗いし、さらに安倍政権も不安定となり、自民党もまた揺らぐ時代になっていくだろう。オリンピックを終えたら、がらりと暗い時代になるのではないか、また。

 

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