« 韓国とは友好的でありたいが日本とは体制の異なる国家になった | トップページ | [書評] 「バカ」を一撃で倒すニッポンの大正解 単行本(高橋洋一) »

2019.07.19

京都アニメーション放火事件

 個人的な視点で平成史を書いていてその後中断しているが、平成初年の陰惨な事件を振り返ったとき、それが平成という時代の幕開けを象徴していたかのような錯覚を覚えたものだった。そして、令和という時代が始まったときも、そこは人の世である、なにか時代を象徴するような陰惨な事件が起こるのかもしれない、という、不安のような取り越し苦労のような直感があった。そんな思いが、ずっと鈍く重く続いていた。そして、昨日の京都アニメーション放火事件を知り、ああ、これか、とうなだれる思いがあった。亡くなられた方に哀悼したい。
 真相はわかっていない。だが、知りうる範囲だけでも不気味な事件に思えた。まず、これはテロ事件であると捉えてよいように思うが、何がテロかという問題は難しく、今回の事件は政治的な意図をもつ旧来型のテロとはいえないだろう。むしろこの事件のテロ的な意味合いが「令和」を象徴するものになりそうだ。
 33人が亡くなったことで、ネットなどでは、戦後最悪の殺人事件というような表現も見かけた。が、2001年の歌舞伎町ビル火災では44人が亡くなっており、しかも放火事件と見られる。犯人も真相もわからないままである。
 それに比べると、今回の放火で、犯行者の点では不明なところは少ない。41歳男性の容疑者はすでに捉えられている。強盗歴があることや、関東の更生保護施設にいたことも報道されている。名前は報道されていない。精神疾患の疑いがあるのだろうか。現時点では容疑者も火傷を負って入院しており、本人からの詳しい発言はないものの、取り押さえられた時点では、「小説を盗んだから放火した」という趣旨の話をしていたらしい。当人としては怨恨が動機ではあるのだろうが、妄想に近いようにも感じられる。(追記 と、書いているうちに容疑者の名前が公表された。)
 精神疾患があるとしても、殺意は計画的に実施されたことは確かだ。犯行に使ったガソリンは、現場近くのガソリンスタンドで購入したもので、40リットル分、携行缶に収められた。これを現場近くまで台車で運んだらしい。明確な大量殺人の意思があったことは明らかで、死刑は免れないだろう。疑問に思えることは、なぜこのような派手な放火の手法をとったのか。どこからの情報でこんな悪質な放火を思いついたのか。なぜ放火先が、京都アニメーションの現場だったのか。悪質な計画性と狂気が統合的には理解しにくい。
 容疑者は、かなりの量のガソリンを撒き、発火は一瞬のことだったようだ。私は、2003年の名古屋立てこもり放火事件を思い出し、爆発したのではないかと当初、思った。つまり、死傷者の多くは瞬時に発生したのではないかと想像していた。だが、死者は、家屋の三階屋上への階段での死者が19人と多い。一階の死者は2人、二階とその階段で11人。それなりに逃げようとして逃げ場を失ったようだ。死因は一酸化炭素中毒が多いらしい。こうした点では、通常の火災だと言えるが、あまりに火のまわりが早い。避難路が確保できなかったからだとは言えない。その他も含めて、防火体制の点で、京都アニメーションの落ち度らしいものはなさそうだ。
 では、防ぎようがなかったのか?
 容疑者が入り口なり、受付なりで留まっていたら、ここまでの被害にならなかったのではないかという疑問から報道を見直すと、この日に限って、セキュリティが解除されていらしいことを知る。それはなぜかという疑問が続く。その答えだが、打ち合わせがあった、NHKがすでに現場にいた、という2つのことが明らかになっている。この事実から想定すると、NHKの報道取材が予定されていたのだろう。
 ここで、この事件について怪しい、陰謀論のような疑問が湧き上がるのは避けがたい。たまたま偶然にセキュリティが甘い時刻に事件が発生したのか、容疑者はこの状態を想定したいのか。後者であれば、おそらくNHKの取材予定を知っていたことになる。現状、この陰謀論的な推論には決め手がない。ただ、こんな用意周到な放火に偶然セキュリティが甘かったという偶然が重なったというのも想定しにくい。
 事件に不明な点は多い。それでも、この放火事件は、犯行の意思も計画性も明確であっても、犯人の理路は社会に理解できないものではないだろうか。仮に、容疑者の言うように、小説が盗作されたとしても、そしてそれにどれほど怒っていたとしても、こんな悪質で大規模な放火を行うとは想定しづらいし、まして、アニメ制作の現場を襲うことには、ほとんど怨恨の関連がない。現場が勝手に盗作することはない。こうして見ると、犯行の理路そのものが、社会の理解を絶した狂気を帯びているようだ。
 この先を言うのは勇み足だが、そのこと、つまり、社会的には了解しがたい悪意だけの露出の殺人、というのが、令和を象徴する事件なのではないか。

追記

 京都アニメーションの代理人を務めている桶田大介弁護士によると、日中の就業時間中は無施錠だったとのこと。これが事実として確認されれば、この日に限ってセキュリティが解除されていたわけではないことになる。


資料(NHK報道より)

アニメ会社で放火 容疑者とみられる男 確保の様子
2019年7月18日 16時22分

火事が起きた『京都アニメーション』に番組の撮影のため向かっていたNHKの男性ディレクターが容疑者とみられる男が確保された現場を見ていました。

このディレクターは、「京都アニメーションの近くに着くと、3、4人の警察官が集まっていて、そこに男が倒れていました。男は右足の膝から下の服が焼けていて、はだしでした。警察官と何か話していたようでしたが何を言っているかは聞き取れませんでした」と、そのときの様子を話しています。


「暴力は耐えられない」京都アニメーション社長
2019年7月19日 19時03分

また、事件当日の朝の現場のスタジオのセキュリティについて、「いつもとだいたい同じだが、出勤する午前9時ごろから1時間ほどの時間帯は人の出入りが多く、当日は来客の予定があったこともあり施錠していなかった」などと説明しました。


“京アニ” 代理人弁護士 第1スタジオの防犯対策を説明

2019年7月23日 20時29分

 「京都アニメーション」の代理人を務めている桶田大介弁護士が23日、報道各社の取材に応じ、放火された第1スタジオの防犯対策などについて説明しました。
 それによりますと、第1スタジオには正面玄関やスタッフ用の出入り口など合わせて4か所に防犯カメラが設置され、社員や来客の出入りを確認できるようになっていたということです。
 これらの出入り口は夜間は施錠してシャッターを閉めていますが、日中の就業時間中は社員などが出入りするため、日頃から開けた状態だったということです。

 

|

« 韓国とは友好的でありたいが日本とは体制の異なる国家になった | トップページ | [書評] 「バカ」を一撃で倒すニッポンの大正解 単行本(高橋洋一) »

コメント

この事件について、ずっと考えがまとまらず、答えのないまま一人悩み続けてる者です。
凄惨な事件です。被害者の方々のお気持ちは想像できるものではありません。私たちには到底理解し得ない範囲です。ただ、本当に辛かっただろう。それしか言えないんです。 犯人の行動、動機 常軌を逸しています。噛み砕いて理解もできないです。吐き気がします。施設の防火装置、セキュリティ、悪かった不備があったというのは結果論でしょうか。そもそもこんな事件を起こした犯人が全て悪いはずなのに。

何より今恐れていることは、結局この事件も"過去にあったこと"になり、世の中になにも変化は起きず、何らかの対策も取られず、大衆はまた日常生活に戻ることです。
自分達には関係の無さそうなことにはひどく関心がないのが日本人ではないでしょうか。最近だって川崎で子供たちが殺傷され、犯人が自殺した事件だってあったのに、もう忘れているんじゃないだろうか。世の中の全ての事柄に対し、ずっと関心を持ち続けることが正しいと言いたい訳ではないけれど、誰が死のうが誰がひどい目に遭おうが 何も変化を起こそうとしない社会なら、それが一番狂気に感じて仕方ないんです。
汚い文章で申し訳ないです。吐き出して申し訳ないです。嫌だったら削除してください。

投稿: 通りすがり | 2019.07.19 20:19

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 韓国とは友好的でありたいが日本とは体制の異なる国家になった | トップページ | [書評] 「バカ」を一撃で倒すニッポンの大正解 単行本(高橋洋一) »