竹島付近の空域での韓国軍によるロシア軍機警告射撃について
昨日午前、島根県の竹島付近の空域で中国とロシアの共同巡回飛行中、ロシア軍機が韓国の領空を侵犯したとして、韓国軍がロシア軍機に警告射撃を行った。日本政府としては、日本の領空侵犯による事件なので、両国に抗議した。
この事件は、日露中韓、四か国の視点が異なり、また事実認識についても異なっているので、真相解明および外交的な問題解決は難しい。
いくつか項目にわけて考えてみたい。まず、客観的な事実を踏まえ、考察に進みたい。
韓国による竹島の実効支配は中露から拒絶された
竹島は日本国の領土であったが、日本が連合国支配下で独立を目前とする1951年1月18日、すでに1948年8月15日に独立していた韓国の李承晩大統領が独断で公海上に排他的経済水域の境界線、通称李承晩ラインを引き、竹島を日本から奪った。これに並んで、韓国は日本漁船の拿捕を行い、多数の日本市民の殺害も行った。
以降、竹島の海域は韓国が実効支配している。
国際法は、基本国際間の問題を解決するためのもので、国内法のように正義を規定するものではない。このため、現実を踏まえた認識になる。竹島海域については、韓国が長期に実効支配しているので、国際的には概ね、韓国領土と見なされる。
日本政府は竹島問題を非軍事的に解決する立場から、ここを特別に航空自衛隊が警戒監視を行う日本の防空識別圏(ADIZ)から外している。なお、ロシアは、ADIZという概念そものが国際法にはないという認識でいる。
だが、今回の事件で、中国側からこの地域が公海であるとの認識が示された。ロシアも同じである。つまり、中露はこの海域の領土を日韓双方に認めていないことが、今回の事件で明らかになった。
中露は共同軍事演習だった
航空自衛隊は竹島周辺を警戒監視を行う日本の防空識別圏から外していることになっているが、実際には監視している。今回の事件については、防衛省によると、領空侵犯したのはロシア空軍のA-50空中警戒管制機1機だった。また、同省によると、ロシア軍機による竹島への領空侵犯が確認されたのは初めてだった。
中露合同演習では、露空軍がTU95爆撃機2機、中国空軍がH6爆撃機2機も防衛省で確認されている。5機は竹島北方の日本海上空で合流し、A-50が竹島を領空侵犯し、残り4機は対馬海峡上空を経て東シナ海に抜けた。
ロシア側からは、CNNによれば、《"(They) conduced unprofessional maneuvers by crossing the course of Russian strategic missile carriers, threatening their security," the Russian Defense Ministry said in a statement Tuesday.》とのこと。つまり、韓国空軍はロシアの戦略的ミサイル運搬機の進路を横切って安全を脅かすという非専門的な作戦を行ったということ。韓露ではA-50の軌跡の認識も異なるが、なによりロシアはこの海域を韓国に認めていない。
中露は共同軍事演習の目的は何か?
日経新聞記事『ロシア軍、中国と初の巡回飛行 竹島上空侵犯は否定 』によると、《中ロの共同巡回飛行に先立ち、ロシア政府は22日、中国と軍事協力協定を結ぶ交渉をすると明らかにしていた。詳細は不明だが、ロシアの有力紙ベドモスチは23日付で、1993年に結んだ軍事協力協定に代わるもので、より複雑な共同の軍事演習や巡回飛行の実施を含む可能性があると伝えた》とのことで、今回の演習はその一貫だろう。
中露演習の基本的な目的は、露空軍がTU95爆撃機2機、中国空軍がH6爆撃機2機という構成からもわかるように、この地域に核弾頭を落とす能力を誇示することだ。当然ながら、米韓日への牽制である。
以上が現段階でわかる事実であり、以下これに基づいて考察したい。
中露軍の韓国軍への挑発だったか?
A-50の飛行経路の認識は、日韓では等しいが、ロシアは異なっている。ロシアは、この海域での韓国の領空そのものを認めていないが、仮にあるとしても、その領域に入っていない、あるいは計器のトラブルだとしている。おそらく防衛省の認識が正確で、ロシアは嘘をついているのだろう。
ロシアの嘘から推測されることは、ロシアによる韓国空軍への挑発だろう。当然ともいえるが、今回はA-50のみが問題であり、TU95やH6は加わっていない。
中国は今回の事態に一歩踏み込むことを控えている。
韓国空軍の過剰反応か?
過剰反応と言えるだろう。そもそも領空侵犯機に対する警告射撃、しかも今回のような規模の大きな射撃は行わない。韓国も過去行っていない。
なぜ、韓国空軍は過剰反応したか? これは単純に、竹島の実効支配を日本に誇示するためだろう。ここで強行に出ないと、竹島の実効支配が疑われることになる。
そして、この過剰反応と先日のレーダー照射事件から推測されることだが、韓国軍はロシア軍の挑発に乗って、ロシアが言うように、ロシア軍機の進路を横切って安全を脅かしたのだろう。
中露軍はなぜ挑発を行ったか?
軍事演習の枠組みからわかることは、基本的に、米韓軍事同盟に対する挑戦だろう。
むしろ、今回の訓練の草案は中国だっただのではないか。中国のADIZを米軍は無視していることの報復的な意味合いが考えられる。
日露関係はどうなるか?
変化はないだろう。
日本とロシアは、極東地域の救難共同訓練などを行っていて、自衛隊とロシア軍の交流は円滑に進められている。
韓国はどうなるか?
日本の輸出規制へ報復として韓国大統領府は18日、韓日の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の見直しを放言し、米国側から叱責を受け、引っ込めるという失態を行っているが、これだけ反日機運が高まると、GSOMIAは円滑にいかなくなるのではないか。当然だが、そのことは、中国や北朝鮮のメリットになる。
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コメント
GSOMIA の誤記かと。
投稿: ナナシ | 2019.07.26 15:06
ご指摘ありがとうございます。訂正しました。
投稿: finalvent | 2019.07.26 16:12