「〜するとき」と訳さない when について
英語の接続詞 when は、中学一年生で学ぶごく基本的な事項で、訳すときは、通常、「〜するとき」とするものだが、そう訳すとちょっとどうかなという例がある。例えば。
I was about to leave when they started to argue again.
どう訳すだろうか? 「〜するとき」で訳すとこうなる。
彼らが再び議論を始めたとき、私は立ち去ろうとしていた。
この訳文は、微妙に変な感じがしないだろうか? こう訳すと自然になる。
私が立ち去ろうとしていたとき、彼らは再び議論を始めた。
これはどういうことなんだろうか。実は、この例文は、「〜したらそのとき〜」と訳していい。
私が立ち去ろうとしていたらそのとき、彼らは再び議論を始めた。
次の例文はどうだろう?
I had not gone far when the moon disappeared behind the clouds.
「〜するとき」で訳すとこう。
月が雲の陰に隠れたとき、私はまだ遠くに行ってなかった。
これも、「〜したらそのとき〜」で訳すと、自然になる。
私が遠くまで行かないでいたらそのとき、月が雲の陰に隠れた。
次の例はどうだろう?
He claims to be 18, when I know he is only 15.
「〜するとき」で訳すと。
私が彼は15歳でしかないと知っているとき、彼は18歳だと言い張っている。
「〜したらそのとき〜」で訳すと。
彼は18歳だと言い張っているならそのとき、私は彼は15歳でしかないと知っている。
どちらも自然ではない。これは、「なのに」と訳していい。
私は彼が15歳でしかないと知っているのに、彼は18歳だと言い張っている。
ところで、そんな訳をしていい根拠は何? これは、『表現のための実践ロイヤル英文法』に載っている。
さて、次の例文はどうだろう? トランプ米大統領が7月27日につぶやいたものだ。
The WTO is BROKEN when the world’s RICHEST countries claim to be developing countries to avoid WTO rules and get special treatment.
いくつか訳例を見ていこう。
AFP『トランプ氏、中国などの「途上国扱い」不服 WTOに見直し求める』では、こう訳されている。
WTOは壊れている。世界で最も裕福な国々が自らを発展途上国と申告し、WTOのルールを回避して特別扱いを受けている。
WSJ『トランプ氏、WTOに中国「途上国扱い」の是正要求 協議再開控え』ではこう。
世界で最も裕福な国が途上国だと申告しWTOの規定を逃れ、特別な扱いを受けているなど、WTOは崩壊している。
Yahooブログの山田順氏は、こう訳していた。
WTOは壊れている。それは、世界でもリッチな国々が、WTOルールを逃れ、発展途上国(developing countries)として優遇措置を受けているからだ。
どうだろうか? これらの訳出の背景にある英文法はどうなっているのだろう?
まず、いずれも、「〜するとき」と訳してはいない。また、『表現のための実践ロイヤル英文法』が示す、「〜したらそのとき〜」でも「なのに」でも訳せない。
Wisdom辞書を見ると、接続詞のwhenについて、「〜と考えると」「〜だから」というように、「主節の陳述・疑問の根拠を表す」という事例が載っている。
We can't call him a pacifist when he sometimes justifies violence.
彼は暴力を正当化することもあり真の平和主義者とは言えない。
英語の語順を意識して訳しなおすと、こうなる。
私たちが彼を平和主義者と呼べないのは、彼がときどき暴力を正当化するからだ。
Merriam-Webster辞書では、「considering that」という解釈も掲載している。
こうしてみると、先のトランプ米大統領のツイートは、こう訳すといいだろう。
The WTO is BROKEN when the world’s RICHEST countries claim to be developing countries to avoid WTO rules and get special treatment.
WTOが壊れているのは、世界の最富裕諸国が、WTOの規則から逃れ、優遇を得るために、途上国だと言い立てているからだ。
whenのような中1英語の基礎でも、難しいものだと思う。