オマーン湾でのタンカー攻撃について
13日、ホルムズ海峡も近いオマーン湾で2隻のタンカーが攻撃された。1隻は日本の海運会社が運航するタンカーであり、また時期が安倍首相のイラン訪問に重なっていたことから、この2つの要因が背景化されて、日本でも大きく報道された。当然とも言えるが、誰が攻撃したのかということが話題になるなか、米国はイラン革命防衛隊によるものと名指しで非難し、英国もそれに追従する形となってきた。イラク戦争時を想起させるような空気も感じられる。
実際は誰が攻撃したのか? 現状、国際世界の表向きとしては、判然としていない。私はイラン革命防衛隊によるものではないかと思う(イラン革命防衛隊はイランという国家が国家に収納できていない暴力である)。が、それは私の考えにすぎず、根拠となる事実はない。
しかし国際外交的には、「何をもって事実とするか」ということがより問題である。つまり、①米国はイランによる攻撃である事実をどこまで知っているのか、②知っていてどこまで公開するのか、というのが、外交上の注意点になっている。現状では米国は、今回の攻撃に利用されたと見られる不発リムペットマイン回収の映像を公開している。
今回の事件は、陰謀論を誘発しやすい構図にある。特に、今回の事件は、日本が背景化されたため、日本国内での推測が盛んになりがちだ。イラン革命防衛隊を疑う私も、単純にそこに主体があるというより、彼らがなんらかの情報操作を受けているのではないか、という印象論に近い推測を持っている。だが、それ以上、この推測を進める気もなければ、ブログに書く気もない。
私としては、おそらくそれがブログの最大の価値であろう、同時代的なメモを残しておきたい。
まず、日本を背景化することの重要性はどのくらいあるか?
このことがまず気になり、事件後に海外情報に当たってみた。今回はそれが海外の人々への情報が気になったので、高級紙などよりもテレビニュースなどに注視した。その印象だが、日本での報道とは異なっていた。
攻撃を受けた2隻のタンカーだが、①ノルウェーの会社が所有する「フロント・アルテア(Front Altair)」号、②パナマ国旗を掲げた「コクカ・カレイジャス(Kokuka Courageous)」号である。欧米のニュースでは、当然とも言えるが、地理的に近いノルウェーのタンカーに着目していた。また、もう1隻については外的にはパナマ国旗であり、日本の所有という指摘を焦点化しているものは見かけなかった。
これが意味することは何か? 彼ら(主に欧州)にとっての今回の事件だが、「前回」の事件の後続が背景化されていたということだ。この前回の事件については、日本で報道がなかったわけではないが、あまり関心もたれてはいなかったようだ。
その事件だが、5月12日、アラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ(Fujairah)沖でサウジ、UAEなどのタンカー4隻が攻撃を受け、船体に被害を受けたことだ。事後、米国は今回同様、イラン関与のアナウンスをしている。この事件は、その後の6月6日、UAEからも暫定調査報告が出され、事件の背景に「国家」の関与があるとしていた。が、イランとの名指しはしていなかった。
今回の攻撃はかくして前回の攻撃とで文脈化されるほうが国際的には自然であり、その文脈のなかで、今後、フジャイラ沖がリムペットマイン設置との関連で焦点化されそうな印象がある。
より強い印象で言えば、5月12日の攻撃は別の文脈に置かれる。
5月9日の時点ですでに、米連邦海事局は、紅海やペルシャ湾海域でタンカーや米軍艦船がイランあるいは革命防衛隊のような代理勢力によって攻撃を受ける可能性がある旨、注意を喚起していた。米国側はこの時点で動向を掴んでいたわけである。そしてさらに、その全体的な対処として、5月10日、米国防総省は、地対空ミサイル「パトリオット」とドック型輸送揚陸艦1隻をこの地域に配備する発表をした。その後日を置かず、12日に攻撃が実現化し、以降は、さらにこの地域への米軍投入を強化していった。
この文脈で見るなら、米国による威嚇で押さえ込んだいたはずの、タンカー攻撃が再開されたのが、今回の事態である。米国側としては押さえ込みの調子を監視しているような状況下であった。
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