香港大規模デモについて
現下の香港の大規模デモについては、日本のメディアでもけっこう報道されていることと、このブログでは香港の民主化についてこれまでも扱ってきたので、ごく簡単に言及しておきたい。
まず、なぜデモなのか?という原点を確認したい。これがもっとも重要な点だとも言える。理由は、議会が普通選挙による民主的な議会ではないためだ。日本のように普通選挙が実施されている民主主義国なら、市民はデモを行っても当然よいが、政治参加としては投票に次ぐものになる。ところが、香港には、市民の普通選挙がない。市民の意思表示は、デモ以外にはないのである。
この原点が意味するところは、2つに分けて考えてもいい。①議会が市民の代表ではないということ、②普通選挙が実施されていないこと。前回の雨傘運動は、この普通選挙を求めるものだった。そして、その意味での、普通選挙を求める香港市民の意思は変わりない。そこが目標でもある。
次に、現下のデモは何か?だが、香港の犯罪容疑者を中国本土に引き渡す「逃亡犯条例」改正に反対する抗議デモである。
これに対して、中国当局擁護派からは、凶悪犯罪者を処罰するだけであり、政治的な弾圧ではないといった意見も見られる。とんでもないことだ。なぜか? まず、思いつくのは、凶悪犯と政治犯の区別は、運用において中共の独裁政権側が考えるから、恣意的になりがちというものだろう。これに対して擁護的な反論もすでにあるのだが、実は、そんな修辞の段階は終わっている。事態はすで進んでいる。
日本のマスメディアではその報道を見かけなかったように思う(そういうときはこのブログで補ったものだが)。背景は、2016年。香港の旺角、ネイザンロードで民主派団体「本土民主前線」が地元の警察と衝突した事件「魚蛋革命」があった。きっかけは露店の取締に反対した同派の若者が警察と衝突し、投石やゴミ箱への放火を行い、警察も威嚇発砲した。暴力的な事件ではあるが、大規模な暴動とも言い難い。が、暴力事件であり、指導者の梁天琦(27)は禁錮6年の実刑判決となった。イギリス統治時代に起きた暴動での処罰に比べると厳罰である。この事件で、指導者の黃台仰(25)と李東昇(25)は裁判を逃れ国外逃亡していたが、2017年にドイツで難民申請し、2018年5月に承認された。彼らは、今回のデモに関連して、ドイツから反対運動の声明を出した。
どういうことか? 「逃亡犯条例」が改正されると、中国は、黃と李を凶悪犯としてドイツに引き渡しを要求するようになると想定されている。すでにドイツはその想定の上で、引き渡しの拒否の意向を示しているようだ。
つまり、すでに国際問題なのである。国際問題ということは、すでに日本も巻き込まれているのである。
その上で、この事態の意味はなにかというと、梁の厳罰でも示唆されているが、中国が香港統治を変更したということであり、香港返還時の国際公約を中国が破っているということだ。つまり、この点も国際問題なのである。
そしてそれが国際問題であるということは、どういう影響があるか? 他の、例えばスーダンのデモ弾圧などといった国際問題とどう異なるか? というと、香港という土地の特異性が問われる。簡単に言えば、国際市場だったのが非国際市場と見なされるようになるということだ。香港は今後国際ビジネスの場ではなくなるかもしれない。香港経済の根幹が毀損されていくことになる。香港市民の死活問題がかくして関わってくる。学生だけの問題ではないのである。
さて、見通しだが、国際世界がこれは大問題だと認識して、中国の対応を抑え込めばそれなりの達成と言えるし、そのためにこそ香港市民は大問題化しなくてはならなかった。で、どうなるかだが、わからない。そもそも中国という国は、天安門事件が示すように、市民を虐殺しちゃう国家なのである。なんだってやりかねないからだ。
さて、私は今回の事件でどう思ったかだが、こうするしかないだろうし、見通しはあまり明るいものではないな、と思った。
が、かつてこのブログでも注目した周庭さんには圧倒された。雨傘運動のときのJK(女子高生)、今は大学生。もともアニオタだと自称していたが、来日してプレスできるまで日本語が使いこなせている。中国語(多分広東語と北京語)と英語は当然できて、その上、アグネス・チャンより上手かもしれない日本語を使いこなせるという時点で、圧倒される。そして、日本に来て、香港の民主化を訴えた。日本が民主義国であり自由主義だから、日本の市民に日本語で訴えに来たわけである。こういう若者がいる限り、香港の自由が消えてしまう未来なんか想像できるだろうか。(いやできない、と補っておかないと、ブログでは反語は読まれないからね)。
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