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2019.06.21

BBC One 『検察側の証人』

 アガサ・クリスティー原作で2016年にBBC Oneで放映されたドラマ『検察側の証人』がNHKでやっているので見た。以前NHKで見た『そして誰もいなくなった』が、なかなか見ごたえがあったので、これも期待していた。見た。期待以上だった。
 原作はアガサ・クリスティーの代表作とは言えないだろうが、短編の傑作とされている。マレーネ・ディートリッヒ主演で『情婦』として映画化されたこともある。原作自体に脚本版もあり、劇にもなったりするようだ。なお、同名の日本映画の原作は別。

 

 ネタバレなしで話を進めると、原作ストーリーは、大金持ちの独身女性エミリーが、街で知り合った青年レナードの情人となる。が、ある夜、彼女は撲殺された。状況証拠も不利なうえ、彼を見かけたとする証言もある。しかもアリバイを立証するはずのレナードの妻ロメインも夫の犯行を裏付ける証言をしてしまった。弁護士ジョン・メイヒューはどうやって、レナードの無実を立証するか。という法廷物で、アガサ・クリスティーらしい、あっと言わせるどんでん返しがあるという作品。
 で、このBBC One版も、基本は原作をなぞっているかに見えるのだが、冒頭からしてまったくトーンが異なる。すでによく知られているアガサ・クリスティーの原作をさらにどんでん返しさせる情景的な伏線がしかけられている。これは、ちょっと一筋縄ではいかない現代的な作品だなと感じさせる。
 以下、少しネタバレを含む。

 BBC Oneのこの作品は原作をすっぽり包含しつつ、また、原作をまったく毀損せず、それでいて、ほとんど別の物語にしているように思えた。主人公は弁護士ジョン・メイヒューであり、正義感に駆られるようでいながら、自己欺瞞の罪が暴露されていく。しかも、それは戦争と国家と若者という枠組みのなかで、おそらく、言うまでもなくと言っていいと思うが、英国のイラク戦争参戦の苦さを反映したものだ。とても現代的な、かつ批評的な作品だった。そのどんでん返しのどんでん返しに圧倒された。
 放映は二回に分けられていたが、通しでも2時間ほどであり、映像も演出もまったく映画と遜色ない。というか、これが映画上映されないということはどういうことなのだろうかと、映画と現代のあり方についても再考させられるものだった。

 

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