金融庁の報告書は生活福祉資金貸付制度と整合すべきだった
リバース・モーゲージについて書いたおり、リバース・モーゲージなんかできるわけないだろ的なコメントを見かけたが、話は逆であって、そういう現実をどうするんのか?という話であった。
というか、金融庁もその現状の問題認識を持っていたのに、ひっこめちゃったというのがまさに問題なのであった。
で、この問題をもう一段踏み込むと、高齢者が保有している、実際には金にもならない住宅資産をどうするのか、ということだ。
もっと端的な例で言えば、老朽化マンションをどうするの?ということである。一部例外を除けば、老朽化マンションはリバース・モーゲージの対象にならない。これに対して、宅地があれば載せものの価格がゼロになっても土地に価値が残る。が、ここに踏み込むと、それもわずかで、載せのものの解体費に満たないことがある。
さらに踏み込んでいえば、国や公共機関が、老朽化マンション対策として、リバース・モーゲージの名目で買い上げればいいじゃないかということだ。
別の言い方をすれば、高齢者は公共がケアできる圏内にある程度まとめておくしかないだろうから、その転居の手段であってもよいはずだ。あるいは、逆に考えてもいい。老朽化マンション問題について、建て替えのために容積率を行政的に操作するのももう行き詰まりではないか。であれば、この問題を、公共はどう考えるのか?
儲けにもならないリバース・モーゲージなら公共が引き受けるしかない。
で、それはすでに、厚生労働省の生活福祉資金貸付制度があり、社会福祉協議会が窓口になっている。
で、これの制度が現状どうなのか? 今後はどうなのか?
金融庁としては、高齢者の金融資産の扱いまでは目が届くとして、取り崩しのフェーズを厚労省のスキームとどう整合させるのか? 本来の問題はそこにあったはずだ。
現状、厚労省の高齢者保護のリバース・モーゲージは、不動産担保型生活資金と生活福祉資金(要保護世帯向け不動産担保型生活資金)に分かれていて、マンションは後者に当たる。利用できるのは、65歳以上で、生活保護受給中高齢者世帯に限定される。融資限度額は市場評価の半額としている。が、この半額が尽きたら終わりとして済む話でもない。
少し話を戻して、生活保護受給中の高齢者ではないと利用できない制度というのが、そもそも、高齢者の年金生活と整合しない。
つまり、今回の炎上金融庁報告書は、厚生労働省の生活福祉資金貸付制度と整合し、現状や制度的な抜けを総合的に整備する提言であるべきだった。
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