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2019.06.15

安倍晋三首相のイラン訪問は失敗だったか?

 安倍晋三首相は14日午前、首相としては41年ぶりという歴史的なイラン訪問から、政府専用機で羽田空港に帰国した。この会談は失敗だったか?
 成功か失敗かと評価するには、どのような評価基準を持つかによる。
 端的に、どうであったら、大成功であったか? 
 日本のメディアでは、米国と仲介に失敗したという見解も見かけた。その視点の背景は、イラン核合意を再構築するということだろう。だが、これは原理的に難しい。というのは、合意を破棄したのは米国なのだから、それを求めるなら対象は米国になる。また、米国側の破棄をなだめるために、イランにミサイル開発を含め、全面的に米国の意向に従わせることができたら、というのであれば、それはすでに日本の外交ではないだろう。
 こうして具体的に考えていくなら、失点がないことが、成功というしかないだろう。その意味で、今回の安倍晋三首相のイラン訪問には致命的な失点もなく、そうであれば、成功というほかもないように思う。
 では、そんな可もなく不可もなしの訪問をわざとするのか、安倍首相の人気取りかというと、それも、違うだろう。なにも安倍首相を弁護するわけではない。今回の訪問は、イラン側の招待に応えたものだ。ロウハニ師自身が、「私の招待に安倍首相がお応えいただいたことを光栄に思います。両国は伝統的な関係を有していますが、今年は両国の外交関係樹立から90周年です。今まで私たちは何回も会談を行い、今回で8回目となります。日本政府をはじめ、安倍首相が2国間の関係強化に関心を持っていることを歓迎します」と述べている。そしてこのことは、最高指導者ハメネイ師に謁見できたことでイラン側の誠意が示されている。国際的には、日本が国際政治の主要プレーヤーであることを示してくれたことになる。ただ、これはイラン側としてもメリットは大きい。
 今回の会談の成否については、米国側からの評価も日本にとっては重要になる。これについては、トランプ米大統領の、やや否定的なツイートが注目される。

While I very much appreciate P.M. Abe going to Iran to meet with Ayatollah Ali Khamenei, I personally feel that it is too soon to even think about making a deal. They are not ready, and neither are we!


 そう難しい英文でもない。映画評論家の町山智浩氏は次のように訳していた。

トランプ「安倍総理がイランの最高指導者に会ってくれるのはありがたいが、自分としては交渉は時期尚早に思う。イランも私もまだ準備できてない!」

 私は、こう訳してみたい。

 私は安倍首相がイランに赴き、アヤトラ・アル・ハメネイ氏と会談することに大変に感謝しているが、個人的には、何か合意を得ようとするのは時期尚早だとも思う。彼らは準備できていなし、私たちもまだだ。

 "making a deal"は、町山氏の訳のようにシンプルに「交渉」としてもよいだろうが、私は、トランプのこのツイートの意図は、日本が何かイランと合意、とくに密約をしないように釘をさしたものだろうと考える。
 なぜか、日本には過去に、米国を困惑させた事例があり、また現在も背景があるからである。
 日本も世代代わりとなり、昭和の時代が忘れられようとしているが、1953年に日章丸事件があった。ウィキペディアを見るとそれなりに詳しい解説があるので見ておくとよいが、日本は西側諸国を出し抜いてイランと直接合意をむすんだことがある。さらに日本とイランの友好史は戦前以前に遡る。
 昭和の時代が忘れられようとしても、日本にはイランと独自の信頼ルートがあり、しかもこれが、比較的近年までアザデガン油田に関連していた。また、2003年のバム地震でも日本はイランの支援を行っている。あと、表向きには語られていないが、悪魔の詩訳者殺人事件でも日本はイランに配慮していたようだ。
 こうした背景から、米国側としては、日本が米国を裏切ってイランと密約する懸念をもっていると考えてよいだろう。
 その面で言えば、今回の安倍首相のイラン訪問は、日本とイランに具体的な合意がないという点で、日米関係の外交上の成果があったとも言える。

 

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