« [映画] 人生、ブラボー! | トップページ | 家の電話を買い替えた話 »

2019.05.12

実質、高校の「普通科」は3割になるだろう

 自分の考えがまだまとまらないのだが、これは困ったことになるんじゃないかと思ったので、とりあえず少し書いてみよう。自民党による、高校の普通科 大学入試重視の見直し提言についてである。問題の焦点は、必ずしも「自民党」にあるわけでもなく、またどこまでが自民党の考えなのかもわからない。というのも、高校の普通科の見直しについては、政府内の教育再生実行会議でも議論されていて、これと自民党案の対応がよくわからない。
 NHKは今日付けでこう伝えている。

 今の高校の普通科について、自民党の教育再生実行本部は、大学入試に向けた教育が重視され生徒の学習意欲が低下しているとして、政府に見直しを求める提言の案をまとめました。
 提言の案では、今の高校の普通科について、「偏差値で輪切りされ、大学入試に困らない指導をするあまり、生徒の能力や個性を伸ばせず、学習意欲が低下している」と指摘しています。
 そのうえで「普通科の在り方を見直し、学校ごとに特色を出した新たな枠組みを作り、指導方針を明確化することが必要だ」としています。
 具体例として、科学技術分野の教育に特化した「サイエンス・テクノロジー科」や、国際社会で活躍できる人材を育てる「グローバル科」、地域の課題を解決する人材を育てる「地域科」などを挙げています。
 また、文系、理系を横断した教育の充実を図り、それに応じて大学入試の見直しも進めるべきだとしています。

 自民党がどこまで現状を認識しているのだろうか。まず疑問に思えたのは、「偏差値で輪切りされ、大学入試に困らない指導をするあまり、生徒の能力や個性を伸ばせず、学習意欲が低下している」という指摘である。「偏差値で輪切り」というのは現実にあるだろうが、「大学入試に困らない指導をするあまり」というのが、私には不可解に思えた。現状、大半の高校で、大学入試に困らないような指導は、なされていないのではないか。
 私の考えが間違っているかもしれないという留保は当然するが、そもそも現状、大半の大学で大学入試は事実上、存在していないと見てよいのではないか。現状、中堅以下の私大の約7割は一般入試以外で生徒を入学させている。大学が乱立しているのに対して少子化で生徒自体が少ない。
 だいたい偏差値55、だいたい人口比で30%、これ以外の大半の私大ではすでに入試がなくなっているというのが現状だろう。自民党の言う「大学入試に困らない指導をするあまり」は、およそ3割程度しか当てはまらない。この割合の境界は、だいたい通称「日東駒専」と言われてるあたりの意識に重なるだろうか。
 ここで逆を思った。自民党提案は、むしろ、偏差値55以下の7割の部分で、事実上すでに「普通科」が成立していない現状への対応なのではないか?
 時事の6日の報道からはその印象がある。「昭和以来の「普通科」見直し=特色重視で細分化-高校抜本改革が始動」より。

 今の高校教育について自民党の教育再生実行本部・高校の充実に関する特命チームの義家弘介主査は「完全に昭和の体制」と、早急な見直しを訴える。特に普通科は教育内容が画一的で、生徒も「学びたいものではなく、成績や内申点で行ける学校を選んでいる」(義家氏)。
 改革の背景には高校生の学習時間や意欲の低下への危機感がある。2001年に生まれた子どもを対象に文部科学省などが行っている調査で、校外での学習時間を聞いたところ、平日「しない」と答えたのが中学1年では9.3%だったのに対し、高校1年になると25.4%に上った。「学校の勉強は将来とても役に立つと思う」と回答したのは中1の37.7%から、高1は27.4%に下がった。
 自民党特命チームと政府の教育再生実行会議は今月、高校改革の提言をまとめる。同党の議論では普通科廃止も浮上したが、社会で一般的に必要な教育を行う学科の枠組みは残す。その上で「サイエンスを重視する」「地域人材育成を目指す」など特色に応じて類型化し、普通科を細分する。

 
 時事報道からは、自民党内で「普通科廃止」案があったことが伺える。が、この案自体が消えていても、「社会で一般的に必要な教育を行う学科の枠組みは残す」ということは、実質、従来の農業や工業など専門教育を行う専門学科を他産業に拡張し、普通科的なものを付け足して1994年以降の「総合学科」を専門教育側に拡張するだけではないか。名目的な部分を除けば、実質、いわゆる高校の普通科は3割程度しか残らないだろう。
 時事の報道の文脈ではまた、4分の1の高1生が学校外で勉強しない現状を伝えているが、この大半の部分では実質的に高校の教育がすでに崩壊しているだろう。
 以上の文脈で、3割の、実質的に大学入試が残る普通科でも類似の問題は、構造的に横たわっていると思う。端的に言えば、私大文系希望では高校の数学は実質崩壊しているだろう。とりあえず、定期テストがこなされたのちは、数学の学力としては消えているのではないか。理社の知識型の学科も入試科目以外では定期テストの域で消えているだろう。
 こうしてみると、そもそもが私大の存在とその入試の構造に根がありそうだが、これも裏面からすれば国立・公立大学の影響とも言える。公立・国立は、概ね、都市部で偏差値60、地方で50から55。地方では「日東駒専」の線を公立が補うかたちになっているようにも見える。
 さて、考えがまとまらない。まず、言えることは、実質、高校の普通科は3割になってしまうだろう。7割は職能志向の教育になるだろう。それと、普通科でも私大文系志向から、数学と知識型の学科は実質現状の衰退を是認していくことになるだろう。
 高校の学科として実質残るのは、文系では英語と現代国語くらいのものになるのだろうか。そして、おそらく英語は偏差値60程度の大学入試でも、CEFRのB1程度ではないだろうか。高校で学ぶ必要性はたぶんないだろう。そして、理系を学ぶ生徒はおそらく高校入試以前で狭められてしまうのではないか。

|

« [映画] 人生、ブラボー! | トップページ | 家の電話を買い替えた話 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« [映画] 人生、ブラボー! | トップページ | 家の電話を買い替えた話 »