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2019.05.16

[ショートショート] とあるユートピア

 夕暮れ。東京郊外の鳥貴族で人生再設計第一世代の男ふたりが久しぶりに飲んでいる。
A「それにしても意外にすんなりと実現したものだね、日銀のAI化なんてものがさ。たしかにマクロ経済学的には、日銀の政策ほどAIによる自動化に向いたものはないんだから、当然とも言えるんだけど」
B「あれだよ、ベーシック・インカムとの抱き合わせというのが受けたんだろうな。庶民的には日銀のAI化なんかよりも、そっちに関心が集まったわけだし」
A「だよね。なんだかんだ言っても、俺たちに月額10万円からの補助というのはありがたいよ。おまえ、その他合わせると、いくらもらってるの?」
B「合算すると20万ちょい。僕んとこは親の介護しているんだし、アレも使った」
A「この政策って、財務省が提案したって噂があるけど、そこはどうなの?」
B「財務省がなにか裏で動いてはいたらしいんだよ。元は政府主導のプロジェクトだったかもしれないけど。いずれにせよ、当初は国家財政についてAIでいくつかシミュレートしたらしい。けっこうひどい結果も出たようだ。」
A「ほんとかね」
B「まあ、噂なんだけどね。それで、お先真っ暗というのもなんだから、いろいろ奇抜な政策シナリオも与えてみて、いろいろ試したそうだ。そうしたらAIがこのご託宣」
A「あれだけ財源がないとか、増税とか言ってた財務省も変わるもんだね」
B「財政赤字といっても、国もけっこう資産持っているし、赤字国債も国民の財産とも言えるようなものだし。それを富裕層だけに固めておくより、最終的に国民に配分しちゃったほうがいいしな。僕んとこも、だから、アレも使ったよ。親の財産は相続するより、国に委託ってやつ。その分で10万上乗せということさ。親が死んだら墓のほうも国がなんとかしてくれるらしい」
A「まあ、これで日本もだいぶ変わるなあ。AIが怖いという人もいるだろうが、政策にAIを応用するというのがもっとも合理的だよな。あれ? おまえ、スマホ鳴ってない」
B「あ、鳴ってる、っていうか、君のもの鳴ってるよ。地震でも来るんか」
A「あ、まじ、地震だ。え! 南海トラフ地震!」
B「おいなんか揺れだしたぞ。どうなるんだ」
A「これがショートショートのオチだったら、ふざけんなと言いたくなるよな」
 おわり。

 

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