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2019.04.28

キャラメルとチャルメラの関係について

 イタリア語を学び初めて、caramella(キャラメッラ)という単語を知る。意味は、キャンディである。あれ?と思った。これ、見るからに「キャラメル」と関係しているはずだ。が、どういう関係なのか。イタリア語はフランス語に影響し、フランス語は英語に影響していることがあるので、そういう関連性があるかというと、一見、そうでもない。caramellaは、フランス語だとbonbon、英語だとcandy。
 関連していそうな、英語のcaramelを調べると何かわかるかもしれないと思い、辞書に当たると、意味は、3つ。①カラメル(プリンのあれだ)、②キャラメル、③キャメル色。日本語の「キャラメル」と微妙に意味が違う。そのあたりは、日本の「キャラメル」の歴史を探るとわかるはず。見ていくと、案の定、森永のサイトに説明がある。「現在の日本のキャラメルの製法は、アメリカから1899年に帰国した森永製菓創業者・森永太一郎氏によって伝えられたものが始まりです」。本当だろうか? ちなみに、彼は安倍昭恵さんのひいおじいさんになる(はず)。彼は最初にマシュマロを作っていたらしいが(これがエンゼルマークに関連)、その後キャラメルに切り替えた。では、その元となる米国でのキャラメルはどうだったのか。関連した話によると、若い日の太一郎が公園のベンチで目ざめたときキャラメルの包み紙を目にしたとのことだ。が、詳しくはわからない。米国ではありふれたお菓子だったのだろう。とんなものかと調べると、どうやらタフィー(toffee)のようだ。森永としてはオリジナリティを強調したいだろうが、その原形のお菓子は存在しているし、そのお菓子とcaramelという言葉の関係はよくわからない。
 関連して「カルメ焼き」がある。これは、カステラなどと同様、安土桃山時代ごろのポルトガル人に由来した菓子のようだ。江戸時代には「カルメイラ」とも呼ばれていたらしい。ではその元のポルトガルはどうだったかというと、このあたりに、英語のcaramelが関連する。つまり、英語のcaramelは、1715年から1725年頃、フランス語から外来語だったようだ。そしてフランス語の元は、スペイン語かポルトガル語のcarameloのようだ。そして、この語は、後期ラテン語のcalamellusに由来する。ラテン語としては、calamus(葦) +‎ -ellus(小柄にする)で、「小葦」なのだが、なぜ、葦?
 ここがこの言葉の由来の奇妙なところで、どうやら、calamellusは、別の言葉であるcanna mellis とダジャレ的に混同したようだ。こちらは、cane(葦) + mel(蜜)ということで、甘い葦としてサトウキビあるいは、サトウキビから作った棒状の甘い飴を指したようだ。これがおそらく、現在のイタリア語のcannamellaになるのだろう。ポルトガル語またはスペイン語も同系ではないだろうか。
 そしていずれにせよ、元にあるのは、サトウキビ菓子であり、年代的にもアラビア起源だろうし、十字軍が残したものだろう。ただし、これが現在のキャラメルのように乳製品の菓子に変化したのはどこかはわからない。イタリア語のcannamellaが乳製品ではないので、変化はフランスだっただろうか。
 さて、チャルメラだ。あのラーメン屋台のチャルメラだが、見てわかるように、言葉はキャラメルによく似ている。これは、中国楽器の笛・嗩吶を安土桃山時代のポルトガル人がチャルメラと呼んだかららしい。では、なぜ当時のポルトガル人がそう呼んだかというと、類似の笛がcharamelaだったからだ。そこで、このcharamelaだが、おそらく葦の笛ということで、calamus(葦)に関連していたからだ。
 かくして、キャラメルとチャルメラは、同一のラテン語語源であるcalamus(葦)をもとに、16世紀のポルトガルを介してできた、いわば兄弟的な関係にある言葉と見てよさそうだ。
 さて、以上の考察は、まったくのネタというわけでもないが、いろいろ抜けがある。大筋ではこういうことなんじゃないかということなんで、何かのおりに詳しいことがわかったらまた考察しなおしたい。

 

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