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2018.03.10

公売の「特殊性」についてのメモ

 森友学園に関連する話題が再燃している。
 現在の話題の起点は、朝日新聞報道によるものだ。同紙によれば、すでに国会に提出された、森友学園との国有地取引に関する財務省の決裁文書は書き換えられたもの(当時の決裁文書ではない)とする疑いがある、とのことだ。
 朝日新聞は、当の、書き換え前とされる文書を公開していてないので、真偽については他報道機関はもとより、一般人も知るよしもない。
 朝日新聞の報道を信じるなら、書き換え前の文書には「本件の特殊性に鑑み」とか「特例処理について本省承認決裁完了」という記載がある、とのことだ。
 朝日新聞の報道が正しいとすれば二点問題になるだろう。①国会提出文書は正しいものではない(文書の扱いに不正があった)、②なぜこの部分が削除されたのか(やましい理由があるのだろう)、である。
 特に二点目の削除は「特殊性」「特殊」という文言に関わっているため、その「特殊」とは何か、という疑問も話題になっている。
 野党は、財務省が同学園に便宜供与を図ったことを書き換え文書で隠そうとしたのではないか、と疑念を持ち、政府を追及している。
 これに対して、一例ではあるが、日本維新の党・足立康史参議院議員はブログで《契約書にあった「本件の特殊性に鑑み」等の表現が問題になっていますが、「スーパー・スペシャル」契約なんですから「特殊」に決まっています。》として、「特殊」を「スーパー・スペシャル」と言い換えている。
 私はこうした問題に疎いし、この問題については特段に疑問はなかったのだが、この「特殊性」については、一点思うことがあり、ブログメモを残しておきたい。
 まず、決裁文書の背景だが、2016年6月、近畿財務局による国土交通省大阪航空局への通知で、大阪府豊中市の国有地を鑑定評価額からごみ撤去費約8億円を減額し1億3400万円で売却する、としたものだ。8億円減額の理由が「特殊性」である。売買契約は、学校法人や社会福祉法人などが公益目的で購入を希望する際に取られる「公共随意契約」であり、価格は国有地の公売は透明性確保のため原則公表となるが、この事例では公益を重視してか非公開となった。
 今回の事例は、通常の公売とは異なるが、基本は公売の枠組みで行われたものではないかと私は思う。そうであれば、これは「公売財産評価事務提要」に準じることになるのだろうと思った。そこで同提要を見ると、「特殊性」については、実質、定義が存在している(参照)。

第2章 公売財産の評価

第4節 見積価額の決定

1 見積価額の決定時期
見積価額の決定は、原則として、公売の実施決議(換価事務提要29参照)前に行うものとする。ただし、価格変動の特に激しい財産である場合、鑑定人による鑑定評価書が未受領の場合等やむを得ない事情がある場合は、公売の実施決議後にその決定を行っても差し支えない。

2 公売の特殊性による減価
(1) 公売特殊性減価の必要性

公売には、通常の売買と異なることによる特有の不利な要因として、次に掲げるような特殊性があることから、見積価額の決定に当たっては、基準価額のおおむね30%程度の範囲内で的確かつ確実に減価を行う(徴基通第98条関係3(2)参照)。

イ 公売財産は、滞納処分のために強制的に売却されるため、いわば因縁付財産であり、買受希望者にとって心理的な抵抗感があること。
ロ 公売財産の買受人は、税務署長に対して瑕疵担保責任(民法第570条)を追及することができないこと。
ハ 原則として買受け後の解約、返品、取替えをすることができず、また、その財産の品質、機能等について買受け後の保証がないこと。
二 税務署長は公売した不動産について引渡義務を負わないこと。
ホ 公売手続に違法があった場合は一方的に売却決定が取り消されること。
へ 公売の日時及び場所等の条件が一方的に決定されること。
ト 所有者の協力が得にくいことなどにより、公売財産に関する情報が限定されていること。
チ 公売の開始から買受代金の納付に至るまでの買受手続が通常の売買に比べて煩雑であり、また、買受代金は、その全額を短期間に納付する必要があること。

(2) 公売特殊性減価適用上の留意事項

公売財産の見積価額は、基準価額から、上記の公売の特殊性を的確に減価して決定するが、公売財産の種類、数量、性状等は財産によって異なるものであるから、公売特殊性減価は、過去に実施した公売事例等を参考として、具体的事情に適合した妥当な範囲で減価することに留意する。

(3) 一括換価する場合の留意事項

一括換価する場合において、全ての財産を一体とした基準価額と各財産に対応する基準価額を求めたとき(本章第3節1(2)参照)は、各財産に対応する基準価額から公売の特殊性を減価して各財産の見積価額を求めた上で、その見積価額を合計することにより、全ての財産を一体とした見積価額を決定するものとする。

 つまり、「公売特殊性減価」は、差し押さえ財産を公売する際、最低落札価格設定が通常評価額より低くても違法性はないという理由である。
 森友学園の事例では、この「特殊性」とする理由は、ゴミが埋められているなど「いわば因縁付財産であり、買受希望者にとって心理的な抵抗感」があり、またそのため、売却後に瑕疵担保責任が問われないように、「公売財産の買受人は、税務署長に対して瑕疵担保責任(民法第570条)を追及することができない」とするためのものではないだろうか。
 私もこうした分野に詳しいわけではないので、簡単にまとめておく。

 ① 「特殊性」はこうした契約の用語だろう
 ② 「特殊」の内容は、瑕疵担保責任を問えない代わりに相分減額することだろう

ということではないか。
 この問題は、すでに政局問題となっているため、もう一点、強調したいことがある。

 ③ このブログ記事は安倍政権を擁護したいがためものではない

 佐川国税庁長官の辞任に至る経緯では、財務省を監督する安倍政権に不十分な点はあるだろうと思う。


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