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2018.03.29

[書評] フランス人 この奇妙な人たち(ポリー・プラット)

 フランス語を学ぶということは、日本語ネイティブの私とっては、外国語を学ぶということ、多種外国語があるなかの一つを学ぶということで、特殊なことではない。言語と文化、その言語を使う人たちの民族的な要素なども、その言語とは分離して考えられるはずのものだ。が、実際にはそうもいかない。むしろ、フランス語を学ぶということは、フランス文化やその歴史、さらには民族性を学ぶということにつながる。この点、英語だと、英語を使う人は多様なので(米国人内ですら多様)、もう少しゆるく考えられる。というか、フランス語を学んでみたら、こうした付随的に見える要素がけっこう多く感じられて驚いた。つまり、フランス人って、どうしてああなの? ああ、という部分は、日本人からすると、とても興味深いのである(たぶん、逆もまた真なりだろうけど)。

 フランス語を学びながら、折に触れてフランス文化やその歴史を学ぶ。フランス語を学ぶうえでのインセンティブにもなるが、フランス語を学ぶことでこうした文化や歴史の理解も深まって楽しい。関連する各種の本を読んでいるが、基本、軽いエッセイのようなものがよい。本書『フランス人 この奇妙な人たち』(参照)もそうした一貫として気軽に読んでいたのが、これ、最初の2つパートは、笑いながら、そして、米国人である著者からすると、フランス人はこう感じられるのだろうなという面白さもあって読めるのだけど、パート3はかなり、がしっとした内容になっている。なにより、フランス史のお勉強である。フランスを理解するには、フランス史が欠かせないということが、よくわかる。しかも、これがけっこう深い。なかでも、アラベールとエレオノール・ダキテーヌに焦点が当てられている。まあ、そうなんだろうな。とくに、エレオノールについてはアンジュー帝国成立にも関わる。余談だけど、出口治明さんの世界史の本にはアンジューが出てくるけど、現在の世界史の教科書とかでもたしか出てこない。
 このあたりの説明読んでいるとがちで世界史のお勉強なんだが、なるほど、こういう知識がないとフランスというのはわからないものなのだと、しみじみ思う。この部分だけの本書を読む価値がある。
 その他、フランスの官僚主義や技術至上主義などもよく描かれていて、いわゆるフランスについて書かれたものに比べるとかなり深く掘り下げている。
 ただし、である。情報が古い。キンドルで読んでいたので、書誌がわからないのだけど、内容がけっこう古い。当初の翻訳ににあたって、訳者の配慮だと思うけど、日本人の視点が追加されたようだ。その日付の情報もない。新装版なのだから、少し注を増やしてもよいようには思えた。
 それでも著者紹介を見ると、2008年に死去とあるので、それ以前の本であることはわかる。また彼女のフランス体験は、1967年に始まるあたりも、けっこう以前からフランスを観察していることがわかる。
 原書は英書なのでそっちの情報をあたってみると、原書の出版年は1994年のようだ。四半世紀は前になる。英語圏では、フランスを知るバイブル本というくらいに評価もされていたようだ。
 というわけで、本書に描かれているフランスはひと時代前のフランスということになる。が、歴史は変わらないし、読めばわかるけど、現代でもフランス人ってこういう人たちだよなという気質の面ではあまり変わっていないように思う。
 読み終えていろいろ思うが、日本人も、けっこう奇妙な人たちであるよなと思う。それと、フランスという国やフランス人の生き方から学ぶものも、たくさんあるように思えた。


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