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2018.03.09

[書評] 歴史をつくった洋菓子たち (長尾健二)

 昨年のクリスマスの前だが、フランス語の授業の合間の雑談で、フランスだとクリスマス・ケーキより年明けのガレット・デ・ロワが話題になるとして、授業でもその話題で盛り上がっていた。フランス人のこのお菓子への思い入れが強く感じられた。1月6日公現祭に食べるものだが、現代ではそれほど宗教的な思いれというより、新年の年中行事的なものようだ。日本でも、年中行事で食べるお菓子というのがある。個人的には、年明けには、花びら餅を食べることにしている。

 まあ、どの文化でもそうゆうものだよねと思っていた。沖縄で暮らしていたころは、旧暦の1月8日には「ムーチー」を食べた。アニスにも似た香りのサンニンの葉で包んだ餅である。「ムーチー」は内地の言葉で「餅」だから、ようするに餅でしょと、沖縄の老人に聞くと、ムーチーは餅ではない(あらん)という答えが返ってきた。よくわからないが、別のものとして認識されている。
 本書『歴史をつくった洋菓子たち』(参照)を手にしたのもそういう思いがあったからだが、読んでみると、お菓子の逸話ではあるのだが、意外にというのもなんだが、とても面白い。この手の話題をネットで調べると、何が出典がわからないような話があちこちにコピペされているだけなのだけど、本書は、できるだけ洋書(主にフランス語の)から引かれた話を基にしている。
 第一章の「文化としての洋菓子の歴史」から面白い。基本的に現代に続く洋菓子は、西洋ではキリスト教起源をもったものが多いのだが(例としてブランマンジェがまず挙げられているが)、そもそもこうしたレシピは、キリスト教の断食期間(四旬節)に関連したらしい。断食といっても、まったく食べないのではなく、基本肉を避ける。そのためのレシピがいろいろ考案された。謝肉祭なんかもこれである。そういえば、ビンケンのヒルデガルドについての本にもそうしたレシピがあったし、そもそもロシア料理などもそうしたレシピがいっぱいある。
 当然、ガレット・デ・ロワもあるが、項目としては「ガトー・デ・ロワ」になる。フェーブといって、いわば当たりの小人形の話は当然ある、というか、これでフランス人は盛り上がる。本書で扱うのは、フランス菓子が多いが、ドイツ菓子やアメリカ菓子もある。それらの文化差なども考察されている。取り上げられているお菓子の数はそれほどは多くはない。カヌレとかは載ってない。
 それでも読んでいると、ああ、そのお菓子、食べたいなと思う。これ書いている現在でいうなら、クレープ・シュゼットが食べたい。
 幸いにして、挿絵はあるものの、写真は少ない。しかもあっても白黒写真だけ。カラー写真で絵本のようにできた書籍だったら、相当に危険な本になっていただろう。


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