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2018.02.27

[コミック] 宝石の国 8巻まで

 なんとなくアニメのほうで見始めた「宝石の国」だが、その後、その先の話が知りたくなったのと、コミック版の印象を確かめたいような気持ちもあり、コミックのほうを、現在出ている8巻まで買って読んだ。

 面白いです。美しいです。この作品、ほとんどアートじゃねというか、その面ではフランスとかでも受けるじゃないだろうか。
 コミック版を前にして、アニメのシーズン1との差異にまず関心が向いたのだけど、結論からいえば、美的なあり方はアニメはアニメ、コミックはコミックとして別でいい。ただ、別とはいっても、主人公のフォスについては、アニメの声優の声が圧倒的で、8巻読んでいても、その声優のイメージが抜けない。
 アニメのシーズン1の終わりは、コミック側から見ると、少し無理しているな感はある。シーズン2になったとき、そのあたりの補正になるのだろうが、難しいんじゃないか。
 コミックで通して読むと、この物語、とにかくイマジネーションが異質すぎて、わけわかないし、主人公のキャラのアイデンティもグニョグニョ変化していくへんてこな物語なんで、そういう異質感は新鮮だし、それが一枚一枚の絵画的なアート的センスとも合っていて美しいのだけど、なんどか読みながら、そして、物語の進展につれて開示される謎とも合わせていくと、ああ、これってまさに日本だと思った。すごい、日本的。
 以下、ネタバレ含む。

 何が日本なるものかというのは、基本多様なんで各人が勝手なこと言えばいいと思うのだけど、それでも宗教的に見て、日本独自かなと思うのは、まず骨信仰だろう。広義に骨信仰というなら、アジア全域にも見られるし、欧州にないわけでもないが、インド型の場合は、火葬が前提なんで、仏舎利というのも、火葬の残りになる。どうでもいいことだが、寿司などでごはんのことをシャリというのは、この仏舎利に由来する。厳密には、中国唐代にこの比喩はあるらしいが、日本で定着している。どうでもいいついでで言うと、五重塔とかはストゥーパは仏舎利を収めるもので、本質は仏舎利のほうにある。
 宝石の国というのは、まずもって、このシャリから骨の世界を扱っているのだけど、そこに存在と死の感覚を焦点的に持つというのは日本的としか言えないのではないか。さすがに戦後から年月が流れているが、未だに遺骨収集とか国家プロジェクトで行っているのは日本くらいではないだろうか。
 骨に注視したとき、必然的に、肉なるものも現れる。ヘレニズム世界的には、日本では聖書的世界観と言うべきかもしれないが、肉はσαρκὸςであり土であり、これに霊はπνευμαであり息になる。が、日本の場合は、まず、死の骨と生の肉に分かれる。そして、骨の側に死霊が付くのだけど、これに成仏が関連してくる。現代でも未だに日本人は、ご冥福をお祈りしますとして、霊界にさまよう成仏しない霊が気になる。
 この構造だが、人間というのは、骨と肉と成仏しない霊からできていることになる。この成仏しない霊に、祈りや供養が対応して、霊の無化が問われる。おそらく、そうしないことで、霊はこの世に祟るからだろう。
 宝石の国はまさに、こうした日本人の原形的な宗教感覚からできていて、しかも月人は竹取物語の月人のイメージに合わさっている。ここが難しいところだが、この月人のイメージは天皇のイメージと重なる。竹取物語というのは、天皇の地上の権力に抗う力の物語である。
 8巻までの物語のなぞは、なぜ、金剛先生は、成仏しない霊である月人に祈らないのか、ということと、それが宝石を愛している理由はなぜなのか、という2点になる。そこはどうなるのだろうかというと、想像もつかない。日本宗教的な考えなら、月人を成仏させることは善であるべきだろう。
 ただし、この物語から超えるのだが、そうした成仏の予定調和的な機能がまさに、天皇なのだろう。金剛先生の本来の機能が天皇なのだとも言えるだろうし、むしろ、そこから逸脱して狂ってしまった金剛先生と宝石たちは、日本人の、天皇をまきこんだ宗教意識の根幹に対して、どういう違和を発しているのだろうか。そこがこの作品の現代的な意味だろう。
 宝石の国という物語を、その内在的な問いかけから見るなら、辰砂の存在理由にある。おそらく主人公のフォスは、辰砂の存在理由の問いかけを物語的に引き出す装置であると見てよいだろう。この世界からはじき出され、害毒だけしかないと自己認識し、死ぬことを願う存在とは何か?
 このあたりの宗教意識は、「とく死なばや」という日本中世の宗教意識とも通底する。
 この無意識的な謎の2構造で見るなるなら、成仏を祈らない金剛先生と、「とく死なばや」として死にきれない苦しみの存在である辰砂は通底しているはずだ。
 それは宗教的というより形而上学的な問いかけだろうし、その次元で初めてこの物語がユニヴァーサルな意味を持つようになるのだろう。

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