« [アニメ] ヴァイオレット・エヴァーガーデン その0 | トップページ | [書評] 漫画 君たちはどう生きるか(吉野源三郎・著、羽賀翔一・漫画) »

2018.02.09

[書評] モンプチ 嫁はフランス人③ (じゃんぽーる西)

 奥付を見ると2018年2月15日とあるので、ちょっと未来を先取りしたような気がするが、ツイッターでカレンさんの、『モンプチ 嫁はフランス人③』(参照)が発売された、という話のツイートを見て、そのままポチったら今日届いた。早速、読んだ。面白かった。というか、書籍としてのオチというか、エンディングというか、知らないでいたので、すごいびっくりした。「完」と書かれたページを見ると、ぐぉぉんと感動するものがある。ネタバレはしない。

 「嫁はフランス人」の既刊も読んでいるので思うのだけど、なんというのか、こうして時系列で読んでいくと、そこにはたくまざるドラマがあるものだと思う。事実は小説より奇なり、というのか。もちろん本書の話も大半は、作者・じゃんぽーる西さんの普通の日常であり、日常の断片でしかないとも言える。主に育児と主夫の、普通の日常である。だが、それが面白い。作者の漫画の才能のなせるところでもあるのだろうけど。
 今回の作品ついては以前によりも、その「普通さ」が強く出ているように思えた。これまでの、日仏の文化差やそのなかでの育児の珍しい話題、というよりも、普通に国際結婚して普通に生活し、普通に子供を持つという、普通さがきちんと描かれている。
 日本人男性とフランス人女性の結婚というのは、それほどは多くもないだろうし、今後増えるとも思わないが、多様な文化背景の結婚それ自体は増えていくだろうなか、みんなそれぞれの普通になっていく。そうして日本の新しい普通ができていく。漫画を笑いながら読み、それが日本の社会の新しい「希望」というものだなと、静かに感動できる。
 取り上げられている小さなネタもそれぞれ面白い。鋭い面白さというより、深みが増してきたように思えた。話題の焦点は、今回タイトルに「モンプチ」が強調されている(「2」の表紙にも付いているが)ように、彼らの子供ではあるだろう。母親とはフランス語で会話し、父親や友達の多くの日本人とは日本語で話す、幼い子供。その保育園児の成長。バイリンガルのドキュメンタリーという印象もある。私は言語学を学び、その習得過程の理論なども少し学んだが、なるほどと頷く。笑える。一例としては、幼い子供のほうが、父親である西さんより、きちんとフランス語の「R」の発音ができるというネタ。それもさもありなん。
 話が少しずれるが、当初、いや今でもこの漫画のコンセプトとしては、フラン人の嫁さんは日本人から見ると変わっているなあ、ということはあったのだろう、が、今回の作品を読んでみて思うのは、カレンさんのような日本人女性もそう少なくもないということだ。もちろん日本語ネイティブであれば、子供に日本語以外の言葉を使う母親はほとんどいないだろうけど、趣味や仕事のこだわり、パートナーへの愛情表現など、現代の日本人もカレンさんと、それほど変わらないのではないか。フランス人として描かれている人々の行動も、言語の壁というものがなければ、日本人とほとんど同じなっていくだろう。
 そのことを別の接近で言うなら、主夫・育児のじゃんぽーるさんは、いわゆる旧来の日本人男性のイメージではなく、あるグローバルな現代的な男性である。漫画では、自身をド・日本人、というふうに誇張しているし、実際本人としてはそう思っているのだろうが、結果的には、これも普通に現代的なグローバルな家庭の男性の像である。そして、そういう男性は新しい日本人男性のスタンダードでもある。漫画のなかでは、未婚の多い日本人男性について、じゃんぽーるさんの自虐も含めてだが「結婚したくても単にモテないんだよ!」としていて、それはそうかもしれないが、そうした日本人男性への女性の接し方も静かに、しかし気がつけば大きな変化になっていくだろう。
 つまり、ここに描かれているのは、異文化の国際結婚という話題ではなく、新しいタイプの愛と家庭のありかたの、普通のモデルだと思える。
 とはいえ、この作品でも、日本文化は男性同士の付き合いと女性同士の付き合いが多くあり、フランスのような男女同伴の文化ではない、という状態はしばしは続くかもしれない。
 次巻からはタイトルが変わるらしい。「完」の続きは気になる。バイリンガルの子供がどういう成長をするかも気になる。ドラマそのものの続きが待ち遠しい。

 

 

 

|

« [アニメ] ヴァイオレット・エヴァーガーデン その0 | トップページ | [書評] 漫画 君たちはどう生きるか(吉野源三郎・著、羽賀翔一・漫画) »

「書評」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/657/66375962

この記事へのトラックバック一覧です: [書評] モンプチ 嫁はフランス人③ (じゃんぽーる西):

« [アニメ] ヴァイオレット・エヴァーガーデン その0 | トップページ | [書評] 漫画 君たちはどう生きるか(吉野源三郎・著、羽賀翔一・漫画) »