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2018.02.13

三浦瑠麗氏の「スリーパーセル」発言をめぐって

 昨日ツイッターで三浦瑠麗氏が民放のトーク番組でした発言がなにやら話題になっていた。というか、問題発言だとして三浦氏への批判と取れるツイートが多かった。さて、どんな問題発言かと少し気になったのだが、話題にしているツイートがどれも二次情報であり、二次情報で盛り上がる趣味はないので、以降まだ話題が続いて一次情報が出るころ少し考えてみるかなと思っていた。で、今日それを見かけた。ハフィントンポストにあった。「三浦瑠麗氏、ワイドナショーでの発言に批判殺到 三浦氏は「うがった見方」と反論(アップデート)」(参照)である。

三浦 もし、アメリカが北朝鮮に核を使ったら、アメリカは大丈夫でもわれわれは反撃されそうじゃないですか。実際に戦争が始まったら、テロリストが仮に金正恩さんが殺されても、スリーパーセルと言われて、もう指導者が死んだっていうのがわかったら、もう一切外部との連絡を断って都市で動き始める、スリーパーセルっていうのが活動すると言われているんですよ。

東野 普段眠っている、暗殺部隊みたいな?

三浦 テロリスト分子がいるわけですよ。それがソウルでも、東京でも、もちろん大阪でも。今ちょっと大阪やばいって言われていて。

松本 潜んでるってことですか?

三浦 潜んでます。というのは、いざと言うときに最後のバックアップなんですよ。

三浦 そうしたら、首都攻撃するよりかは、他の大都市が狙われる可能性もあるので、東京じゃないからっていうふうに安心はできない、というのがあるので、正直われわれとしては核だろうがなんだろうが、戦争してほしくないんですよ。アメリカに。

 うーむ。私は基本的に民放番組見ないので、こういう対談をどう受け止めていいのか、その枠組みもわからないのだけど(枠組みというのは、お笑いとかネタとかかなと)、最初の三浦氏の発言については、ちょっとどこをどう突っ込んでいいのか、よくわからないなと思った。
 少し分解的に考えてみる。まず米朝間で核戦争があるかというと、現状ではまだないと思う。北朝鮮にはまだ核弾頭を使いこなせる能力はない。ちなみに、北朝鮮問題というのは、北朝鮮が米国や日本の直接的な安全保障上の問題になるという以前に、現代世界における核管理が問題になっているということ。国連が機能しないということが問題だと言い換えてもいい。
 では米国が北朝鮮に核攻撃を仕掛けるかなのだが、そのオプションが最優先されることはないだろう。最大の抑止は中国だろう。あまり物騒なことは言いたくないが、それでも米朝戦争が起きるとすると、北朝鮮は陸軍を使って韓国を実質人質にするので、それを避けるために米国としては、陸軍が動けないように、かつ北朝鮮は権力が集中していると思われるので、即効的で圧倒的な空爆を行うか、斬首作戦は難しいとしても斬首作戦的な空爆をするかだろう。
 次に、戦争が始まった場合、日本の主要都市がテロリストによって攻撃を受けるか。米朝戦争だとしても、米国の同盟国である日本に大きな損傷を与えることは、米軍の活動を撹乱することで北朝鮮のメリットになりうる。さらにこういうとなんだが、平和ボケしている日本は戦争自体を極度に嫌うので、攻撃されて北朝鮮を敵視するより、米朝戦争に巻き込まれた被害者を演じることで反米機運が高まる可能性が高く、それもまた北朝鮮を利する。つまり、これはありうるだろう。また金正恩が殺害されたとしてもテロ攻撃は続くというのもありうるだろう。金正恩が殺され北朝鮮が国家として崩壊したら、攻撃理由はなくなるかのようにも思えるが、指揮は事前にプログラムされたままで更新されないだろうからだ。また、北朝鮮の国家(金王朝)滅亡後のシナリオはそもそも存在していないだろう。
 三点目にその攻撃先の都市が大阪になるかだが、主要都市の順から数えるなら攻撃対象にはなるだろう。その場合でも、三浦氏のいう、東京だと全面戦争になるが大阪ならそうならないので狙われる、というロジックは妥当ではないと思われる。日本に対して北朝鮮がそうした手加減をするだけメリットがあるとは思えない。むしろ、全面戦争を避け、日本の反戦気分を高揚させるなら、つまりそうしたメッセージ性を強めるなら、日本国家への大きなダメージより地方都市への攻撃のほうが効果的だろう。
 四点目に、「スリーパーセル」自体存在するか? これは存在しないと仮定するほうが無理だ。実際、日本人拉致事件ではそうしたネットワークが機能していた。また、『北朝鮮 核の資金源(古川勝久)』(参照)でもその存在はほぼ確認できる。ただし、二点保留しなければならない。1つは、スリーパーセルが機能するのは、まさに隠れるからであって、ベタに朝鮮籍やそうした連想の圏内の人であるわけがない。スリーパーセルについて言及したニューヨーク・タイムズ記事(参照)でも、"the North Koreans have spread these agents across the border into China and other Asian countries to help cloak their identities. "としている。また、こうしたスリーパーセルが戦争に関連した活動を行うかだが、これも同記事で、"The strategy also amounts to war-contingency planning in case the homeland is attacked."とあるように普通の想定である。ただし同記事で想定されているのは、三浦氏のようなシナリオではなく、サイバー戦争の文脈である。おそらくスリーパーセルが攻撃を仕掛けてくるとすれば、サイバー攻撃で都市情報機能の麻痺をまず狙ってくるだろう。
 もう1点の保留はスリーパーセルの活動の主眼は、テロよりも国連制裁を逃れて核ミサイル開発を推進するための資金獲得や部品調達だろう。つまり、日本に潜む北朝鮮のスリーパーセルは三浦氏が「テロリスト分子」として想定するほど直接的に危険な存在でもないだろう。北朝鮮としても、日本は金の卵を産む雌鶏なので、よほど戦時が迫るのではなければ、直接的な被害を与えることはメリットにならない。
 もう一点、突っ込むとすると、そもそも三浦氏のこのお話は、米国が北朝鮮に対して戦争を開始するのを避けてもらうために、日本がスリーパーセルから攻撃を受ける恐怖を掻き立てる、という構造になっている。このあたりの認識は、国際政治の認識としては正反対になるだろう。つまり、米国としては威嚇の最終線を明確にしなければならないし、軍事同盟国の日本もそこで協調しなけれならない。そこに亀裂があることは北朝鮮の軍事活動を誘発しかねない。もちろん憲法で国連憲章の平和主義を強調してる日本の国是として戦争を避け平和を希求するのは当然のことだが、戦争を回避するには、祈ることや恐怖を掻き立てることはあまり有効ではない。もしろ現実的な平和維持のための思索が必要だろう。
 その意味で、識者としての基本認識として、日米同盟というアコードの意義を踏まえていないかにも受け取れる、こういう発言はどうなのだろうかとも思ったが、私はそもそもこうした番組の「お約束」を知らないので、野暮なことかもしれない。


 


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