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2018.02.17

女性専用車両について考えてみた

 ツイッターのタイムラインで今朝、千代田線で停車中の女性専用車両に男性数人が乗車してトラブルとなり電車が遅れたというニュースを知った。世の中、変な人はいるからなあと思ったのだが、どうやら、男性たちは意図的に乗車する行動によって、女性専用車両が性差別だからなくせ、という主張をしたいらしい。タイムラインを追っていると、そうした男性たちの行動に非難する意見が多いように見受けられた。
 そのニュースを知ったとき私はあまり関心がなかった。世の中どこでも小競り合いは起こるものだし、おかしな示威行動をする人はいる。しかし、公共交通に迷惑をかけるような示威行動は好ましくないだろう……とぼんやり考えながら、しかし、示威行動というのは、フランスのストライキなどがそうだが、基本的に社会に一定の迷惑をかけることでメッセージを伝えようとするものなので、迷惑をかけるから一概によくないともいえない。
 しかし、市民社会の規則を破るようなこと、特に違法行為はよくないだろう……と考えて、ああ、そうかと思い至った。今回の示威行動を規制する法も社会ルールもない。女性専用車両の根拠というものはない。であれば、これは、この男性らが主張するように、性差別なのではないのか?
 女性専用車両というのは、イスラム圏など宗教的に男女を公的空間で分離する文化圏で見かけるもので、私の知り限り、先進国にはない。これは性差別なのかというと、原則的には性差別なのだろう。先進国の同種の問題としては、女性専用のプールといった問題があり、それがとりわけ問題となるのは、英紙ガーディアンなどでも論じられていたが、トランスジェンダーで女性を自認する人がそうしたプールに入れるかという問題である。議論にはなっているが明確な答えも指針も現状はない。
 それまで考えたこともなかったのだが、女性専用車両にトランスジェンダーの女性と自認する人は乗車できるだろうか?という疑問を考えてみた。考えるまでもなく、そもそも女性専用車両というのに規制はないのだから、堂々と乗車してもかまわない。だが、そうすると、これは今朝の男性たちが堂々と乗車してもかまわない、という同じ論理になる。
 また、公的交通機関に迷惑をかけた、といっても、この男性たちの乗車をおそらく阻止しようとして結果的に交通機関への迷惑となったわけで、阻止のような行動がなければ、交通機関への迷惑にもならなかっただろう。
 意外とやっかいな問題だなと考えてみて気がついた。
 そもそもが、なぜ女性専用車両というのがあるのかというと、これは言うまでもなく、ということになるだろうが、痴漢の防止である。男性がいなければ痴漢はないだろう、あるいはかなり少ないだろうという前提である。
 だが、ここですぐに2つ疑問は起きる。ある集団が犯罪を侵す可能性が高い、あるいはある集団を心理的に忌避する多数がいる、として規制のようなことを社会に導入できるか?というと、できないだろう。このロジックは、痴漢以外にも、「移民を恐れる市民が多いから」といった移民差別にも当てはまりかねない懸念がある。では、男性は潜在的に痴漢であると想定するのは、差別ではないのか? おそらく差別だろう。
 もう一つの疑問は、そもそも女性専用車両は痴漢防止になっているのだろうか。この場合、考慮しなくてはいけないのは、女性の乗客は専用車両以外にも乗車するので、そこでの痴漢発生率なども合算しなくてならないことだ。そうした全体性を考慮して、確かに女性専用車両は痴漢防止に効果があるとするエビデンスがあるのだろうか。ざっと見たところ、科学的なエビデンスと言えるものは現状ではなさそうだ。では、現状ではその調査期間なのかというと、そうでもなさそうだ。
 考えるほどにやっかいな問題だなと思う。ただ、こうしてくだくだ書きながら、もう一つ自分の心にひかかっていることがある。自分の生活感覚に引き寄せると、そもそも私は女性専用車両に関心がない。私の実感とすれば、女性専用車両があろうがなかろうが、どうでもいいと感じている。以前は、乗車した車両に女性専用と書かれているのを見ると、ぎょっとしてあたりが女性だけかと確認したものだが、時間帯が限定されているのを知ってからそういうことはなくなった。そのくらいの関心しかない。
 自分は痴漢を多分することがない。間違われる可能性はゼロではないので、そのときはしかたないとも覚悟している。女性専用車両については、世の中、痴漢に苦しむ女性、痴漢に合ったことで苦しんでいる女性もいるので、そういう便宜はよいことなのではないかとなんとなく思っていた。
 だが、あらためて考えてみると、痴漢を防止することと、女性専用車両があることは、直接的な関係はないし、また公的な権力の行使のありかたとしても納得はできないなと思う。私自身は、ではだからといっても、今朝のその男性たちのような示威行動はしないが、意見を問われるなら、女性専用車両には反対となるだろう。
 あるいは、これはサービスの問題だろうか。指定席サービスのように、公共交通機関とはいえ、私企業なのだから、女性専用車両という上乗せ料金サービスがあってもよいかと言えば、あってもよいだろう。なぜ、そうしないのかというと、そうしたサービスに対価を払うという社会的な感覚が浸透してないからだろう。また、そのサービスによって、現在ですら満員電車の問題があるのに、自由席の車両はさらに満員になるかもしれない。それでも、飲み屋にレディースデーがあるように、本来は有償だけど特別割引の女性専用のサービスがあってもよいだろう。
 というか、そもそも女性専用車両というより、朝の通勤電車に指定席車両を設ければいいとも言える。とんでもないことを言うようだが、都心に向かう私鉄は現在、通勤用の指定席車両を増やしている。と、考えてみて言えば、女性車両という問題は、指定席サービスの対価が浸透していない中間的な状態を示しているのかもしれない。
 話を現行の女性専用車両に戻すと、率直に言えば、私としてはどうでもいいや、としてきたのだが、考えてみると、やはり女性専用車両というのは原理的には性差別の制度であると思うし、痴漢問題は別の対処法を考えるべきだと思うようになった。とはいえ、現実問題としては、飲み屋のレディースデーのサービスというような位置付けで現行維持されていてもいいのかもしれないとも思う。

 


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