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2018.02.23

[書評] 天使の創造(坂東としえ)

 立花隆『臨死体験』に幽体離脱体験者としてロバート・モンローの話が出て来るが、モンロー自身は神秘家というよりエンジニアであり、その体験を科学的に追求するために自宅に研究所を設置したものだった。そこでの彼の研究におそらくもっとも貢献したもう一人の幽体離脱体験者がロザリンド・マクナイトだが、彼女は後年、自身の神秘体験を深め、自伝的な『魂の旅』という作品を残した。

 本書『天使の創造』を勧められて手にしたとき、その表題や装丁の類似感から同書を連想した。が、読み進めてみると、霊性探求の自伝的な側面では似ているし、また神秘的な真理を開示するという面でも似ているが、日米の文化差という以上に、随分と異なった印象を得た。なにより本書のほうは小説という意味でフィクションになっていたし、直接的に神秘的な世界が扱われているわけでもなかった。その分、違和感なく自然に読めるように書かれている。
 本書が書かれた経緯や背景についても知らずに予断なく読み、読後、書籍の解説を知って得心した。いわく、「生涯をかけて理想の保育を追求した著者が贈る、子供の世界と大人の世界が交差する稀代の小説」ということで、著者は35年間の保育士経験と母親学級講師としての活動実績があり、そこでの強い評判に押されて書かれたものではないだろうか。
 小説としての枠組みは、夏希という若い女性の自伝的な話から始まり、彼女が子供を産み、子供と交流しつつ、病気との遭遇を経て人生の意味を問いかけていくなか、ヨガの講師から精神世界的な真理を学ぶ、ことである。叙述の特徴としては、詩を随所に含みつつ、日常的な生活のなかに、深い意味を暗示するアネクドーツ(逸話)が語られていることだ。平易に書かれていて読みやすいともいえるが、他面、エックハルト・トールの講話書籍のようなハウツー的なスピリチュアル本に親しんでいると、小説という枠組みに読みにくく感じる人もいるだろう。現代的な読者にしてみると、各章冒頭にハウツー的な問いかけがまとまっているなど、編集的な工夫があったほうが読みやすいだろう。
 後半、ヨガ講師に仮託して語られる精神世界の真理には、クリシュナムルティや奇跡講座を連想させる深遠さをもちながらも、誰でも平易に理解できる言葉で解かれていいることに驚きも感じさせる。著者自身の瞑想修練で感受された真理であるかもしれないし、なんらかの宗教的な背景もあるのかもしれないが、直接的な示唆はない。
 本書の要諦を引用したくもなるが、そう思ってみて、部分的には抜き出せないことがわかる。著者が小説として語りたかったのもそうした思いがあったからだろう。

 

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