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2018.02.28

[書評] 生粋パリジェンヌ流モテる女になる法則(ドラ・トーザン)

 もう10年以上前の本で、『生粋パリジェンヌ流モテる女になる法則』(参照)という書名もちょっとどん引くものがあるが、なんとなく読んで、なんとなく心に残ったことがある。本の内容全体についていえば、この書名から連想されるとおりで、率直に言えば、日本人がフランス人について抱いている幻想となんとなく合っているように思う。

 まず些細なこと2つ。1つは香水のこと。この本、手にしたとき、香水のこと書いてあるんだろうなと思ったら、書いてあった。予想外のことはなかったけど、香水というのがやはり生活の一部なんだというのに納得。
 もう1つはコーヒーのこと。『嫁はフランス人』にもあったけど、朝起きて一番にコーヒーを飲むようだ。これってフランス人に普通のことなんだろうか。あるいはフランス人と限らないのだろうか。ちょっとググってみると、起きてまずコーヒー一杯、というのはよくないという情報が出て来る。読むと、さほど理由らしきものもない。こういうネタがあるということは、きっと朝起きたらコーヒー一杯という人も、フランス人と限らず少なくないということなのだろう。
 私は目覚めてコーヒー一杯ということはしない人だったのだが、この数日、起きたらブラックコーヒーを飲んでみた。で、なるほどねと思う。起きがけの一杯のコーヒーの味はなんとなく違う気がする。不思議なものだな。
 さて、と。
 この本で、なんというのだろう、考えさせられるというほどではないけど、心に引っかかったのは、「ラマン(愛人)を持つことのススメ」という話だ。L'amantという言葉の語感がよくわからないというか、「恋人」というのとどう違うのかも気になった。こう書いてある。
《恋人、そしてラマン。なかにはラマンとだけつきあっているパリジェンヌも。
 どう違うかというと、オフィシャル(公的)な恋人は、あらゆる場所に一緒に行く。カップル社会フランスでは、パーティやレストランなどに伴うのはもちろん、オフィシャルな恋人。実家に招待して一緒にクリスマスを過ごしたりする。》
《ラマンは公にはしないものだ。その関係性は、あくまでライト。今、そのとき、楽しいという気持ちを共有するパートナーだ。将来のことを考えたりもしないし、日常生活に踏み込まない。嫉妬をしたり、会えないからと機嫌を損ねたりすることもない。会いたいときに会い、楽しく過ごす。……》
 ラマンというと、マルグリッド・デュラスの小説を連想するが、あれってそういうことだっただったろうか。というのと、ここで言われているラマンというのは、フランス人にとっては普通の感覚なのだろうか。もちろん、フランス人にもいろいろあるのは当然理解するけど、こういう恋愛感覚というのがあるのだろうか。
 よくわからない。アメリカにはないような気がする。イギリスにもないような気がする。日本にはたぶん、ないだろう。これって、フランスのある種の文化なのだろうか。なんとなくだが、そういう文化とも違うような気がする。なんかよくわかんなくなってきたが。
 心にひっかかるのは、これって、恋愛とか愛とかいう、なんとなく自明に思っているある感覚と微妙にずれているような気がするからだ。
 それに関連してか、この本ではこの話の前に「不倫だって考え方では純粋な恋愛」という話もある。内容はだいたいこの見出し通りなので、引用はしない。ついでにいうと、「常に誘惑し続け、愛の炎を絶やさない」という見出しの話もある。
 そのあたりが奇妙に心にひっかるけど、なにかまとまった自分の考えがあるわけではない。
 ところで、この本、書名からすっかり女性向けの本だと思ったら、終章に「日本の男性へのメッセージ」というのもあった。概ね、普通のこと、というか、フランス人ならそうだろうなという想像の範囲内のことしか書いてないないようだけど、いや、これ、そうでもないなあとも思った。さて、このメッセージを日本人男性の私は受け取るんだろうか。
 気が向いたら、ドラ・トーザンさんの他の本も読んでみようとも思った。

 

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