「ポプリ」って何?
何かを知って驚くというのは、知ることの楽しさの一つで、最近そういう経験をしたのは、非常に些細な話題なのだが、「ポプリ」って何?ということだった。自明だと思っていたのだ。ポプリってポプリでしょ。あの、ドライフラワーをガラスの器に入れてその芳香を楽しむというあれで、IKEAとかにも売っているから、世界中にあるんじゃないのと思っていた。もちろん、フランスにもあると思っていた。NHKの『旅するフランス語』でセーヌ川沿いのポプリ調合専門店があった。なにより、「ポプリ」って「ポトフ」じゃないけど、もとはフランス語でしょ?
「ポトフ」は、pot-au-feuで、つまり「火にかけた鍋」、火鍋というベタな意味で、「ポプリ」の「ポ」もpot、つまり鍋。え?鍋?
というあたりで、あれれ、「プリ」って、もしかして、pourriじゃないの。原形は、pourrir、だから、finirと同じ第2群規則動詞。pourriは過去分詞。ええっ? つまり、例えば、L'argent l'a pourri.のように使う。「金があいつをダメにした」、というわけで、「ダメになった 」とか、「腐った」という意味で、すると、pot-pourriって、「ダメ鍋」「腐れ鍋」むしろ「闇鍋」。は?
この関心の発端は、フランス語の授業。フランスでチョコを買うというとき、箱入りもあるし、包に入ったのもあるし。という話で、パケ(paquet)の他に、「包」があって、それsac(カバン)より小さくて、sachet(サシェ)ですね、とフランス人先生の説明。
それ聞いて、ああ、「サシェ」だよなと私は思ったのだけど、日本人が「サシェ」という言葉を聞くと、あの、ポプリのサシェだよね、匂袋というか。そこで、フランスでも、サシェってポプリのことかなと質問すると、あれま、ワンダーランド。
フランス人の先生がそういう限定的な意味は知らないという。サシェは小さい袋だけど、特定のものではないらしい。そっから、ポプリの話になったら、どうも話が通じない。私のフランス語がつたないせいかなと、綴り書く。なんだか理解して貰えるのだが、その言葉の意味は、どうやら、バラエティ音楽というか、日本語でいうところの「メドレー」のことらしい。サーカスとかでもあるし、文学でもいろいろな文章を集めた雑文集とか、それから、いろんなもの入れる料理もあるらしい。
うーむ、なんじゃ? それは、「闇鍋」じゃないのか。
いずれにしても、どうやら、日本人が「ポプリ」って想像しているものと、フランス語のそれは、一般的には、かなり違うようだ。もちろん、NHKの番組でポプリ店があったけど、あるにはあるんだろう。
授業のあとで少し調べてみた。
Wikipediaにもフランス語の項目でいちおうPot-pourri (botanique)はあるので、フランス人でも知っている人は知っているのだろう。が、辞書でも二番目の意味だったし、あまり一般的ではなさそうだ。
フランス語の該当項目を読んでみると、もとはスペイン料理のごった煮である"olla podrida" (olla=pot, podrida=pourri)によるらしい。そしてこの言葉は英語圏で意味が再利用されたふうに書いてある。英語圏でも寄せ集めの意味らしい。はて?
英語の項目を読むと、別の話になっている。それによると,17世紀フランスで、花を壺につめて香りが出るように発酵させたとある。それって、つまり、まじで、「腐れ鍋」だからpot-pourriってことか?
どうもポプリの歴史がわからない。「匂袋」というなら、古代からあったのだろうが、なんで、ポプリがpot-pourriなのかがよくわからない。ただ、なんとなくだが、日本語の「ポプリ」は英国から入ったっぽい感じがする。
まあ、話はそれだけ。結論、フランスにもポプリはあるけど、一般的な意味は、音楽のメドレーらしい、ということか。
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