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2017.05.04

[映画] ラ・ラ・ランド

 『ラ・ラ・ランド』については昨年秋の米国での話題を知っていたわりに見そびれて今さら感があり、こうなるとDVDが出てから見ようかなと思っていた。が、まだ上映館があるので見に行った。さすがにもう観客は枯れていたがその枯れ具合がこの映画にとって、とてもいい感じだった。楽しく、そして少し泣けた。
 評価については、もうとやかく言う必要もないだろう。アカデミー賞での椿事も楽しめる逸話になっている。とにかく、つかみの映像が圧倒的だ。あの意気込みで一気に観客を飲ませた。その音楽とダンスとシーンの美しさも圧倒的である。スクリーンセーバーがあれば是非欲しいところ。
 ストリーについては、ミュージカルということもあって基本単純である。特段に紹介するまでもないだろうが、売れない若い女優と、ジャズに憧れつつ理解されない若い男性の、偶然がやたらと重なる出会いと恋愛の四季、そして別れの予感……といったところ。ただ、最終シーンについては後で触れる。
 つまり、恋愛ものだ。Netflixとかにありがちなこってりしたセックスシーンとか("Sense8"とか)、完璧にない。ないよ。どっかで出てくるかなとちょっと期待しちまった私は自分を恥じました。とかぼんやり思いつつ、物語の設定はむしろ現代でなくてもいいだろうし、そのほうが、『シェルブールの雨傘』におけるアルジェリア戦争的な背景の重みもあってよいかもしれない……いやいや、そういう重さがないのがこの作品の現代的なところなのだろう。
 そもそも"La La Land"というのが、"out of touch with reality(現実感ないよ)"である。VOAにもある(参照)。


And many actors dream of having their name added to Hollywood’s Walk of Fame.

This brings us to a nickname for Los Angeles, one that is also commonly-used as an expression: la-la land.

La-la land can be any place that is fun, far from serious, and out of touch with reality. You can use the expression when talking about the mental state of someone who does not understand what is really happening. You might say that person is “in la-la land.”


 というわけで、二人は“in la-la land.”なので、いつかそこを去ることにはなる。
 そこで映画もほろ苦いエンディングになる、とも言えるのだが、そもそもこの映画は、基調の音楽に支配されるしかない仕掛けになっている。ということで、特に"Mia & Sebastian's Theme"と"La La Land"の曲調に沿う形のストリー展開になる。簡単に言うと、この追憶的な曲調から映像とストーリーが作り出された映画と言ってもいいだろう。
 そうした点からすると、この映画作品は極めて無意識的な訴求力のある作品であり、やや偽悪的に言えば無意識を操作する映画でもある。希望に見せかけながら、実際には追憶的な感動のなかに人を安らげさせるだろう。
 文学的な観点から作品を見直すと、キーになるのは、"La La Land"という青春の夢の非リアリティ感というより、むしろ、この映画のなかの奇妙な、リアリティショーのようなほつれにも見える、ずれた感覚にある。たとえば、昼間の公園や微妙な気まずさなどである。これらは、彼らの恋愛がそれぞれの独自の夢を追いながらも、実際は誰もが持ちうる凡庸な夢であることを暗示する。これが"Hollywood Walk of Fame"(参照)のStarsを再定義(redefine)になる。

City of stars
Just one thing everybody wants
There in the bars
And through the smokescreen of the crowded restaurants
It's love
Yes, all we're looking for is love from someone else

 「City of stars」は字幕では「スターの街」と訳されていた。"Hollywood Walk of Fame"からすれば当然だろうが、もっと凡庸な普通の無数の人々(all we)になる。そしてそのCityは、誰もが望みうるもので、ピアノ演奏のあるバーの中にも、レストランの混雑に見える。誰もが他者のなかにそれを求めるとして無数の星が再定義される。
 とはいえ、私たちの現実の理想や愛は実際にはかなうことはなく、その中で時は過ぎ、人生はムーヴオンしていき、回想に変わる。変えるしかない。それを美しくもの悲しく受けとめるのは、生きて老いる感覚と同じであり、それ以外に人ができることはあまりない。

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