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2017.01.05

OPLAN 5029?

 韓国政治が麻痺していくなかで同国の安全保障がどのようになっていくか、さらに言えば朝鮮有事の懸念は、隣国の日本にとっても意味があるし、また軍事同盟国である米国を介しての関連もある。ごく簡単に言えば、韓国内政が混乱していけば朝鮮有事の懸念が高まる。
 その場合、韓国側の憂慮としては国境を接していることもあり、北朝鮮からの地上軍や近・中距離ミサイルの攻撃、生物・化学兵器攻撃を受ける可能性がある。米国の懸念について言えば核弾頭であろうが、北朝鮮が米国を核弾頭の範囲に収めるにはまだ時間がかかる。また、日本については核兵器による威嚇はあるだろうが、そもそも日本を攻撃するメリットがあるとも思えない。すると北朝鮮の核兵器については、それが実質的な脅威となるというよりも実行されること自体の国際秩序の問題であるとも言える。そこでその秩序と北朝鮮レジームの価値を計ると、そのレジームは米国主導の国際秩序としては廃棄されるべきものとなるだろう。
 さて、どうなるものかと見て行くと年が明けて、今日動きがあった。二年前倒しの韓国軍特殊任務旅団の設立についての韓国国防省の発表である。読売新聞「韓国「正恩氏攻撃旅団」創設へ…有事に平壌侵入」(参照)より。


同省が大統領代行の黄教安ファンギョアン首相に行った今年の業務計画で明らかにした。特殊任務旅団は、北朝鮮が核ミサイルを発射する兆候がみられた時などに平壌に侵入し、作戦指揮を執る正恩氏らを攻撃し、指揮系統をマヒさせる。朝鮮半島有事の対応をめぐっては、北朝鮮の核兵器やミサイル基地を探知して先制攻撃する「キル・チェーン」と韓国型ミサイル防衛システム(KAMD)も20年代初期に完成させる予定で、同省は「能力を拡充する」とした。

 明確に書かれていないが、先制攻撃であり、いわゆる「斬首作戦」である。東亜日報「金正恩掃討特殊部隊、2年操り上げて今年創設」(参照)が詳しい。

韓国軍当局が今年創設する特殊任務旅団(特任旅団)は、有事の際、北朝鮮の戦争指揮部を掃討する作戦を担うことになる。核兵器発射命令権者である金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長など核心指揮部を掃討して戦争遂行能力を麻痺させることが主な内容だ。

軍関係者は4日、「昨年9月、北朝鮮の5回目の核実験直後に発表した大量反撃報復(KMPR)の一環」と明らかにした。KMPRは、北朝鮮の韓国侵略や核攻撃の兆候がある時、精密誘導兵器や最精鋭特殊部隊で金委員長など核心指揮部を先制攻撃する概念だ。

軍は、陸軍特殊戦司令部や海軍の特殊戦旅団(UDT/SEAL)、空軍の戦闘管制チーム(CCT)など各軍特殊部隊を改編し、特任旅団を編成するという。当初、軍は特任旅団を2019年に創設する計画だった。しかし、北朝鮮の核・ミサイルの脅威が日増しに高度化し、創設時期を操り上げることを決めた。


 当然懸念されることだが、「北朝鮮の韓国侵略や核攻撃の兆候がある時」の判断がどのようになされるかは報道からは判然としたない。
 また米軍との関わりはこれらの報道からはわからない。聯合ニュース「軍が特殊任務旅団新設へ 有事に金正恩氏を攻撃=韓国」(参照)は少し言及がある。ただしこれは、斬首作戦との直接的な関連ではない。

 このほか、米新政権発足初期の対北朝鮮政策と韓米同盟に関わる懸案をめぐり韓米間の調整が必要だとの見方も示した。米国とは高官レベルの交流、国防・安保機関との人的ネットワークを強化しながら在韓米軍駐留経費負担(思いやり予算)、韓米連合軍司令官(在韓米軍司令官兼務)から韓国軍への有事作戦統制権の移管など懸案を安定的に管理する計画を示した。

 また、日本とは互恵的な軍事協力を進めながら情報協力を拡大し、中国とは米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の在韓米軍配備に対する韓国側の立場について説明しながら意思疎通を図るとした。


 全体的に見るなら、特殊任務旅団の繰り上げは対北朝鮮と韓国国内への、安全保障上のメッセージというだけにとどまっていて、具体的な段階とは見えない。
 今日のこのニュースで気になったのは「OPLAN 5029」(参照)との関連である。
 朝鮮有事について米軍は、北朝鮮からの先制攻撃に備えるOPLAN 5027と、偶発用のOPLAN 5029がある。OPLAN 5029についての比較的最新の動向については、参照リンク先にあるので関心がある人は読むといいだろう。
 それでどうなのか。米軍のOPLAN 5029は韓国軍の特殊任務旅団と関連があるだろうが、その関連がよくわからない。基本的に、朝鮮有事では米軍による韓国軍への有事作戦統制権が重要になるが、これが現状ぐだぐだになっているせいだ。当初は、2015年に移管が予定されていたが延期され、2020年代半ばまで延長されることなっている。
 論理的に考えるなら、特殊任務旅団の活動は大枠で米軍の有事作戦統制権の下に置かれるはずだが、報道を追う限りは判然としない。
 そうしたなか、今日のCNN「Preparing for the worst / How to escape from Kim Jong Un」(参照)も興味深かった。表題は、「最悪の事態に備える。金正恩からの逃げ方」である。朝鮮有事の際、米軍家族が韓国を脱出して沖縄に非難する訓練をレポートしている。
 まさに掲載されている動画や写真を見るとまさに朝鮮有事を連想させるとともに、アイロニカルにではあるが演習に楽しむ子供の姿も微笑ましい。個人的な印象でいえば、朝鮮有事のとき、米軍家族はこうして沖縄にペットと一緒に救出されるのだろうが、軍家族以外の被害は悲惨なものになる。軍家族のペットが一般市民より軍としては優先的に救出されるのかもしれない。
 なお、同記事は抄訳が「在韓米軍、沖縄へ家族脱出の避難訓練 北朝鮮の侵攻に備え」(参照)にあるが、かなり削られているし、原文には写真・図もあるので一見しておくとよいだろう。

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