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2016.11.14

[ドラマ] マーチェラ(Marcella)

 変なテイストの作品だった。それだけでなんとも独自の中毒性のある作品だった。
 Netflixオリジナル・コンテンツなんで、当面、そこでしか見れられない。こういうのは今後もネトフリで囲っていくものだろうか。そこも気になった。
 邦題は『女刑事マーチェラ』として、主人公がまさに女性の刑事であることを示している。つまり刑事物語であり、予告や冒頭のシーンからもわかるようにサスペンス・ドラマでもある。そこまでは、では、マーチェラとはどういう刑事なのかという点に当然関心が向く。なぜ「マーチェラ」かという暗喩も多少気になる。英語圏なら「マーセラ」だろうし、ドラマのなかでも他者からは「マーセラ」と初対面では呼ばれやすい。
 こうしたドラマは基本、捜査手法や刑事のキャラクターに依存する。米国作品だと『アンフォゲッタブル』のような異能刑事物語だったりする。こちらは女刑事キャリー・ウェルズで、ポピー・モンゴメリーのキャラクターはよく生かされているし、ニューヨークという街もよく描かれている。街はこうしたドラマにおけるある決定的な要素だ。
 マーチェラはどうか。異能のようなものはあるかというと、少なくともキャリーのような異能はない。ガンファイトは出て来ない。街はロンドンだが、なんというのか、私などが思い描く風景的なロンドンというより、地上と上空の視線が絡み合うアングルの映像が多い。地上は先進国にありがちな矛盾した光景で、それは微妙に東京に似ている。上空からは開発の情景が強調されている。作り変えられていくロンドンということだ。まさにそのことが物語の中核にも関わっていく。
 物語としては、連続殺人事件物(シリアル・キラー物)であり、それに間違いもないのだが、微妙にずれている。シリアル・キラーの心性とマーチェラの心性は奇妙に融合していく。その融合の微妙な頂点に恐怖と空白が生じる。そこが作品も中心性であることは明らかだ。
 刑事でもあるがマーチェラは、刑事であることにまつわる悲劇を負っているが、どちらかというと表面的には2人の子どもを持つ40代の普通の主婦であり、その普通の人間が狂気に崩壊する様子とシリアル・キラーの物語は並行する。そして頂点となる空白の空間のなかで善悪の倫理は消える。『デアデヴィル』のような、何が善で何が悪かという葛藤や矛盾、融合、鏡像ではない。そのせいか結果としてマーチェラの心性はある一線をぼんやりと越えていく。そのことが、マーチェラ自身と彼女を取り巻く、性の欲動とも共鳴するあたりは、恐怖とは異なっていながら、エロティックでぞくぞくとするものがある。
 サスペンス・ドラマにありがちともいえるが、作品はかなり映像にもたれかかっている。これが小説化できるのかよくわからない。推理小説的には、映像に拠ったサブストーリーがいわゆる「燻製ニシンの虚偽」ということになるが、『ボディ・オブ・プルーフ 死体の証言』のような単純なものではない。そららは最終的には狂気のなかにきれいに統合されることになる。
 気になって作者を調べてみると、スウェーデンの作家ハンス・ローセンフェルトだった。なるほど北欧的な暗い感じはそうした感性からだろうかと関連情報を見ていくと、『THE BRIDGE』の脚本家でもあった。メキシコ国境?と思ったが、どうやら米国リメークの前作品があるようだ。
 シーズン1は8話と短い。シーズン2も企画されているらしい。シーズン1で残された問題を引き継ぐのか、別の物語になるのかはわからない。

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